「確定申告の収入と所得は何が違うの?」と疑問に思っていませんか?
収入は経費などを引く前に入ってきたお金の総額で、所得は収入から必要経費などを差し引いた金額です。副業の20万円ルールも、配偶者控除や扶養控除の判定も、収入ではなく所得で判定します。
この記事では、収入と所得の違い、10種類の所得の計算方法、確定申告書の書き方、令和8年分の給与所得控除の変更点を解説します。
この記事のポイント
- 収入は経費などを引く前に入ってきたお金の総額
- 所得は収入から必要経費(会社員は給与所得控除)を引いた金額
- 所得は10種類に分かれ、種類ごとに計算方法が違う
- 確定申告書の第一表は収入金額等と所得金額等を分けて記入
- 副業の20万円ルールも配偶者控除・扶養控除の判定も基準は所得
- 令和8・9年分は給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げ
収入と所得の違いは?
収入は経費などを差し引く前に入ってきたお金の総額で、所得は収入から必要経費などを差し引いた金額です。お店にたとえると収入は売上、所得は利益にあたり、税金の計算や確定申告が必要かどうかの判定には所得を使います。
収入は経費などを引く前の金額
会社員なら給与や賞与の額面の合計、個人事業主なら1年間の売上の合計が収入です。どちらも、税金や社会保険料、経費が差し引かれる前の金額で考えます。
個人事業主の収入には、売上のほかに、売り物の商品を自分で使った分や、空箱・作業くずの売却代金なども含まれます(国税庁 No.1350)。確定申告ではこれらをまとめて総収入金額と呼び、この金額から所得の計算が始まります。
所得は収入から経費などを引いた金額
売上が300万円で、仕入れや家賃などの経費が100万円かかった個人事業主なら、所得は200万円です。所得は、収入からその収入を得るためにかかった必要経費などを差し引いて求めます。
同じ売上300万円でも、経費が50万円なら所得は250万円になります。所得税や住民税は所得をもとに計算されるので、経費の記録が漏れると所得が実際より大きくなり、税金を払いすぎてしまいます。
所得税がかかるのは所得控除を引いた後の金額
所得税がかかるのは、所得から基礎控除などの所得控除を差し引いた課税される所得金額です。確定申告では、収入、所得、課税される所得金額の順に計算していきます。
たとえば所得が200万円の個人事業主なら、令和8年分の基礎控除104万円を差し引いた課税される所得金額は96万円になります(国税庁 No.1199)。

会社員と個人事業主で所得の計算はどう違う?
会社員の所得は給与収入から給与所得控除を、個人事業主の所得は売上から必要経費を差し引いて計算します。会社員は実際にかかった経費の代わりに、収入に応じて法律で決まった額を差し引く点が大きな違いです。
会社員は給与所得控除を差し引く
会社員の給与所得は、源泉徴収される前の給与収入から給与所得控除額を差し引いて計算します(国税庁 No.1400)。給与所得控除は、会社員が必要経費を差し引けない代わりに認められている控除で、収入が多いほど大きくなります。
名前は似ていますが、給与所得控除は所得を出すために収入から差し引くものです。所得から差し引く基礎控除などの所得控除とは別のものなので、混同しないようにしましょう。
令和8・9年分の給与所得控除額は、次の表のとおりです(国税庁 No.1410)。
| 給与収入(源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 220万円以下 | 74万円 |
| 220万円超360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万円超850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
たとえば給与収入が400万円の場合、給与所得控除額は124万円(400万円×20%+44万円)で、給与所得は276万円です。
なお、給与収入が660万円未満の人の給与所得は、正確には所得税法の早見表で求めます。会社員なら、源泉徴収票の給与所得控除後の金額を見れば計算し直す必要はありません。
個人事業主は売上から必要経費を差し引く
個人事業主の事業所得は、売上などの総収入金額から必要経費を差し引いて計算します(国税庁 No.1350)。必要経費になるのは、仕入れにかかった売上原価や家賃、従業員の給与、減価償却費など、収入を得るために直接かかった費用です。
自宅の家賃や電気代のように仕事とプライベートの両方に使う費用は、仕事に使った部分を明らかに区分できれば、その部分を経費にできます。
さらに、青色申告をしている人は、所得金額から青色申告特別控除(最大65万円)を差し引けます(国税庁 No.2072)。たとえば売上300万円・経費100万円の人が65万円の控除を受けると、事業所得は135万円です。
最大65万円の控除を受けたいなら、複式簿記で帳簿をつけ、e-Taxで期限内に提出するなどの要件を満たしましょう。なお、令和9年分からは紙で提出した場合の控除が10万円に下がるので(財務省 令和8年度税制改正の大綱)、今のうちからe-Taxでの提出に切り替えておくと安心です。

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所得の10種類と計算方法は?
所得税法では、所得をその性質によって10種類に分けていて、種類ごとに収入から差し引けるものが違います(国税庁 No.1300)。それぞれの主な例と所得の計算方法は、次の表のとおりです。
| 所得の種類 | 主な例 | 所得の計算方法 |
|---|---|---|
| 利子所得 | 預貯金や公社債の利子 | 収入金額がそのまま所得 |
| 配当所得 | 株式の配当、投資信託の分配金 | 収入金額−株式などを取得するための借入金の利子 |
| 不動産所得 | 土地や建物の家賃・地代 | 総収入金額−必要経費 |
| 事業所得 | 自営業やフリーランスの売上 | 総収入金額−必要経費 |
| 給与所得 | 給料・賞与 | 収入金額−給与所得控除額 |
| 退職所得 | 退職金 | (収入金額−退職所得控除額)×2分の1 |
| 山林所得 | 山林の伐採・譲渡 | 総収入金額−必要経費−特別控除額(最高50万円) |
| 譲渡所得 | 土地・建物・株式・ゴルフ会員権などの売却 | 収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額 |
| 一時所得 | 懸賞の賞金、生命保険の一時金 | 総収入金額−収入を得るために支出した金額−特別控除額(最高50万円) |
| 雑所得 | 公的年金、副業の原稿料 | 公的年金等は収入金額−公的年金等控除額、それ以外は総収入金額−必要経費 |
出典:国税庁 No.1310・1330・1370・1350・1400・1420・1480・1460・1490・1500
表の収入金額と総収入金額は、どちらも何も差し引く前の金額を指します。
会社員と個人事業主に関係が深い3つの所得
会社員の給料は給与所得、個人事業主の売上は事業所得、会社員の副業による所得は多くの場合雑所得になります。国税庁も、フリマアプリでの個人取引やベビーシッターなどの副収入は、一般的には雑所得にあたると説明しています(国税庁 No.1906)。
ただし、古着や家財など、ふだんの生活で使っていたものを売った所得は非課税で、確定申告は不要です。不用品を売っただけなら、身構える必要はありません。
副業でも、事業として営んでいると認められれば事業所得になります。副業の所得が事業所得と雑所得のどちらになるかは、こちらの記事でくわしく解説しています。

また、会社員のように働いていても、業務委託で受け取る報酬は給与所得にならないことがあります。一人親方を例に、給与所得との違いをこちらの記事で解説しています。

一時所得と退職所得は2分の1が所得になる
一時所得は、特別控除の50万円を差し引いた後の金額の2分の1を、ほかの所得と合計します(国税庁 No.1490)。特別控除が50万円あるので、懸賞の賞金や生命保険の一時金を受け取っても、収入から支出した金額を引いて50万円以下なら一時所得はゼロです。
退職所得も、原則として退職金から退職所得控除額を差し引いた残りの2分の1が所得になります(国税庁 No.1420)。どちらも、受け取った金額がそのまま所得になるわけではない点を押さえておきましょう。
合計所得金額と総所得金額等の違い
合計所得金額は前の年から繰り越した赤字を差し引く前の金額で、総所得金額等は差し引いた後の金額です(国税庁 専門用語集)。合計所得金額は扶養や基礎控除の判定に、総所得金額等は医療費控除の計算などに使います。
どちらも、給与所得や事業所得、雑所得などの合計に、一時所得の2分の1や退職所得、山林所得などを加えて計算します。前の年から繰り越した赤字などがなければ、2つは基本的に同じ金額です。
確定申告で出てくる5つの金額の関係をまとめると、次の表のとおりです。
| 用語 | 何を差し引いた金額か | 主な使い道 |
|---|---|---|
| 収入(収入金額等) | 何も差し引かない | 確定申告書の収入金額等の欄 |
| 所得(所得金額等) | 収入から必要経費や給与所得控除を差し引く | 確定申告書の所得金額等の欄、副業の20万円ルール |
| 合計所得金額 | 各所得の合計(繰り越した赤字を差し引く前) | 配偶者控除・扶養控除・基礎控除の判定 |
| 総所得金額等 | 合計から繰り越した赤字などを差し引いた後 | 医療費控除の計算など |
| 課税される所得金額 | 所得の合計から基礎控除などの所得控除を差し引いた後 | 所得税額の計算 |
確定申告書の収入金額等と所得金額等は何を書く?
確定申告書第一表の収入金額等には差し引く前の金額を、所得金額等には差し引いた後の金額を、所得の種類ごとに書きます。国税庁の令和7年分の確定申告の手引きでも、収入金額等と所得金額等を所得の種類ごとに計算して記入する流れになっています(国税庁 確定申告の手引き)。
収入金額等には差し引く前の金額を書く
収入金額等の欄には、事業なら売上、給与なら源泉徴収票の支払金額のように、何も差し引く前の金額を書きます。給与は手取り額ではなく、税金や社会保険料が引かれる前の額面で書く点に注意しましょう。
個人事業主の事業の収入金額は、青色申告決算書か収支内訳書で計算した金額を転記します(国税庁 確定申告の手引き 事業所得)。先に決算書を作っておけば、申告書の数字は書き写すだけで済みます。
所得金額等には差し引いた後の金額を書く
所得金額等の欄には、収入から必要経費や給与所得控除を差し引いた後の金額を書きます。事業なら青色申告決算書や収支内訳書で計算した所得金額、給与なら給与所得控除を引いた後の金額が入ります。
所得金額等の合計の欄には、各所得を合計した金額を書きます。事業所得や不動産所得に赤字があるときは、ほかの所得の黒字から差し引いて(損益通算)合計します(国税庁 確定申告の手引き 所得金額の合計)。
会社員は源泉徴収票で収入と所得がわかる
会社員の場合、源泉徴収票の支払金額が収入、給与所得控除後の金額が所得です(伊万里市)。副業や医療費控除で確定申告をするときは、この2つの金額を収入金額等と所得金額等の給与の欄に書き写します。
年末調整を受けていれば、給与所得控除後の金額はすでに計算されています。自分で給与所得控除を計算し直す必要はないので、源泉徴収票の数字をそのまま使いましょう。
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判定に使うのは収入と所得のどっち?
副業の20万円ルール、配偶者控除や扶養控除の要件、基礎控除の金額は、どれも収入ではなく所得で判定します。収入の金額だけで判断すると、必要な申告を見落としたり、扶養から外れると思い込んだりしやすいので注意しましょう。
副業の20万円ルールは所得で判定する
会社員の副業は、給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁 No.1900)。対象は、給与を1か所から受けていて年末調整を受けている人です。20万円は収入ではなく、経費を引いた後の所得で判定します。
たとえば副業の収入が50万円でも、経費が35万円かかっていれば所得は15万円なので、所得税の確定申告は不要です。一方で、収入が30万円でも経費が5万円なら所得は25万円になり、確定申告をしなければなりません。
ただし、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に済ませておきましょう(神戸市)。20万円以下でも申告が必要になるケースは、こちらの記事で解説しています。

税金の扶養も所得で判定する
令和8年分の配偶者控除や扶養控除では、家族の合計所得金額が62万円以下であることが要件です(国税庁 No.1190・No.1180)。給与だけの人なら、給与収入136万円以下が目安です(136万円−給与所得控除74万円=62万円。国税庁 専門用語集)。
家族が個人事業をしている場合も、売上ではなく経費を引いた所得で判定します。たとえば売上が150万円でも、経費が90万円なら所得は60万円なので、62万円以下の要件を満たします。
一方で、健康保険の扶養は税金とは別の基準で、年間収入で判定します。協会けんぽの場合は年間収入130万円未満(配偶者を除く19歳以上23歳未満は150万円未満など)が基準なので、税金の扶養と混同しないようにしましょう(協会けんぽ)。
税金と社会保険の扶養の違いは、こちらの記事でまとめています。

基礎控除の金額も合計所得金額で決まる
令和8年分の基礎控除は、合計所得金額が489万円以下なら104万円です(国税庁 No.1199)。合計所得金額が489万円を超えると67万円、655万円を超えると62万円に下がります。
基礎控除だけで考えると、事業所得だけの個人事業主は所得104万円以下、給与だけの人は給与収入178万円以下なら所得税はかかりません(178万円−74万円=104万円)。社会保険料控除などほかの所得控除があれば、その分だけ範囲は広がります。
基礎控除のしくみやほかの所得控除については、こちらの記事でくわしく解説しています。


令和8年分で引き上げられた給与所得控除と特例
令和8・9年分は、給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられています(国税庁 令和8年度税制改正のあらまし)。基礎控除の引き上げとあわせて令和8年12月1日に施行され、令和8年分の所得から適用されます。内職や外交員などの家内労働者等の特例も、令和8年分から引き上げられました。
給与収入220万円以下は74万円を差し引く
令和8・9年分は、給与収入が220万円以下の人の給与所得控除額が74万円です(国税庁 No.1410)。令和7年分は190万円以下で65万円だったので、同じ給与収入でも給与所得は最大9万円少なくなります。
給与収入が220万円を超える人の給与所得控除額は変わっていません。そのため、改正の影響が大きいのは、パートやアルバイトなど給与収入が220万円以下の人です。
家内労働者等は必要経費を最低69万円差し引ける
内職をする家内労働者や外交員などは、実際の経費が69万円未満でも、必要経費として69万円を差し引けます(国税庁 No.1810)。
令和7年分の65万円から引き上げられた特例で、事業所得や雑所得の計算に使えます。この特例の対象になる所得だけの人は、総収入金額が173万円以下なら所得税はかかりません。ただし、給与の収入が69万円以上ある人は、この特例を受けられない点に注意しましょう。
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まとめ
収入と所得の違いについて、押さえておきたい点は次のとおりです。
- 収入は経費などを引く前の総額、所得は収入から必要経費などを引いた金額
- 会社員は給与所得控除(令和8・9年分は最低74万円)、個人事業主は必要経費を差し引く
- 所得は10種類に分かれ、種類ごとに計算方法が違う
- 確定申告書の第一表は、収入金額等と所得金額等を所得の種類ごとに分けて書く
- 副業の20万円ルール、配偶者控除・扶養控除の62万円、基礎控除の104万円は、どれも所得で判定
- 健康保険の扶養は年間収入で判定するので、税金の扶養と混同しない
まずは1年分の売上と経費を集計して、自分の所得がいくらになるかを確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 年収は収入と所得のどっち?
会社員が年収というときは、税金などが引かれる前の給与収入(額面)を指すのが一般的です。源泉徴収票の支払金額で確認できます。ただし、確定申告や配偶者控除・扶養控除の判定に使うのは所得なので、年収の金額のまま判断しないようにしましょう。
Q. 所得と手取りは同じ?
所得と手取りは別の金額で、手取りは収入から税金や社会保険料を差し引いた後に実際に受け取る金額です。所得は、税金や社会保険料を差し引く前の段階で、税金を計算するもとになる金額です。
Q. 源泉徴収票のどこを見れば収入と所得がわかる?
確定申告では、源泉徴収票の支払金額を収入金額等の給与の欄に、給与所得控除後の金額を所得金額等の給与の欄に書き写します。支払金額が収入、給与所得控除後の金額が所得にあたります。
Q. 副業が赤字なら給与所得から差し引ける?
事業所得の赤字は給与所得から差し引けますが、雑所得の赤字は差し引けません(国税庁 No.2250)。ほかの所得と損益通算できるのは、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の赤字に限られます。
Q. 所得がいくらまでなら所得税はかからない?
令和8年分は、基礎控除だけで考えると、事業所得だけの人は所得104万円以下、給与だけの人は給与収入178万円以下なら所得税はかかりません。社会保険料控除などほかの所得控除があれば、その分だけ範囲は広がります。
Q. 配偶者のパート収入はいくらまでなら配偶者控除を受けられる?
令和8年分は、配偶者の給与収入が136万円以下なら配偶者控除を受けられます。配偶者控除には配偶者の合計所得金額が62万円以下という要件があり、給与収入136万円から給与所得控除74万円を引くとちょうど62万円になります。
136万円を超えても、配偶者の合計所得金額が133万円以下なら配偶者特別控除を受けられます。どちらも、控除を受ける本人の合計所得金額が1,000万円以下であることが条件です(国税庁 No.1191)。
Q. 健康保険の扶養も所得で判定する?
健康保険の扶養は、所得ではなく年間収入で判定します。協会けんぽの場合は年間収入130万円未満(60歳以上は180万円未満、配偶者を除く19歳以上23歳未満は150万円未満など)が基準なので、税金の扶養とは分けて確認しましょう。



