確定申告では、納税者全員が「基礎控除」を利用することができます。この控除は、税金の計算において重要な役割を果たし、多くの人々にとって税負担を軽減する大切な制度です。2020年度の税制改正では基礎控除額が変更され、所得額による適用条件も加わりました。本記事では、基礎控除の仕組み、確定申告での申告方法、必要な書類、関連する控除制度などを詳しく解説し、ミスのない申告のための知識を提供します。
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【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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基礎控除とは
基礎控除は、納税者全員に適用される所得控除の一つです。この控除により、課税対象となる所得が軽減されます。基礎控除は、所得税と住民税の両方に適用されるため、税負担を大幅に軽減する効果があります。
基礎控除の上限額が10万円引き上げ
2020年度の税制改正により、基礎控除の控除額は38万円から48万円に引き上げられました。これにより、多くの納税者が恩恵を受ける形となりました。ただし、この改正には所得制限が設けられています。具体的には、合計所得金額が 2,400万円を超える場合、基礎控除の控除額が段階的に減少します。最終的に 2,500万円以上 の場合は基礎控除が適用されません。
2,400万円以下: 基礎控除48万円
2,400万円超~2,450万円以下: 基礎控除32万円
2,450万円超~2,500万円以下: 基礎控除16万円
2,500万円超: 基礎控除なし
このように、所得が高いほど控除額が減少する仕組みは、高所得者層に対する公平性を確保するための措置です。

給与所得控除および公的年金等控除が10万円引き下げ
基礎控除の引き上げと同時に、給与所得控除や公的年金等控除はそれぞれ10万円引き下げられました。たとえば、給与所得控除は従来の上限額220万円が195万円に、また公的年金等控除も控除額が引き下げられています。これにより、所得控除全体のバランスが調整されています。
所得控除とは?
所得控除は、課税対象となる所得額を計算する際に、収入から差し引かれる金額のことです。所得控除には基礎控除のほかに、社会保険料控除、医療費控除、生命保険料控除などがあります。これらは生活にかかる負担を考慮して設定されており、納税者の経済的な負担を軽減するための仕組みです。
税額控除との違いは?
所得控除が課税対象となる所得金額を減らす役割を持つのに対し、税額控除は所得税額そのものを直接減額します。たとえば、住宅ローン控除は税額控除であり、控除額の分だけ税金が減額される仕組みです。両者は仕組みが異なるため、混同しないよう注意が必要です。
基礎控除の申告の方法
基礎控除を申告する方法は、給与所得者の場合とそれ以外の場合で異なります。
年末調整の場合
給与所得者の場合、年末調整によって基礎控除が自動的に適用されます。この場合、従業員は基礎控除申告書を勤務先に提出するだけで済みます。特に手続きが必要なく、雇用主が所得税を調整するため手間がかかりません。ただし、副業収入や複数の勤務先がある場合は、確定申告を行う必要があります。

確定申告の場合
個人事業主、フリーランス、または給与所得以外の収入がある人は確定申告で基礎控除を申告する必要があります。この場合、確定申告書に基礎控除額を記入し、正確に申告する必要があります。基礎控除額は、所得金額によって異なるため、合計所得を正確に計算することが重要です。
所得税の確定申告で受けられる所得控除
所得税の確定申告では、課税所得を減らすためにさまざまな所得控除を受けることができます。これにより、納税額を軽減できる仕組みとなっています。以下に、主な所得控除について詳しく解説します。
社会保険料控除
社会保険料控除は、健康保険料や年金保険料、雇用保険料などを支払った金額を全額控除できる制度です。これは給与天引きされている場合でも適用されます。確定申告時には、源泉徴収票や支払い証明書を確認して申告する必要があります。
注意点: 支払った保険料の控除額を計算する際、記載漏れに注意が必要です。また、国民年金や国民健康保険を個別に支払っている場合は、支払い証明書を忘れずに添付してください。

生命保険料控除
生命保険料控除は、生命保険や介護医療保険、個人年金保険の支払い額に応じて適用されます。控除限度額は保険の種類によって異なり、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料のそれぞれについて最大4万円(合計12万円)が適用されます。
注意点: 保険会社から送られてくる控除証明書を添付することを忘れないようにしましょう。
扶養控除
扶養控除は、生計を共にする親族(配偶者以外)が扶養親族に該当する場合に適用されます。扶養親族の所得が一定額以下であることが条件で、同居しているか否かで控除額が異なります。
注意点: 扶養親族の収入状況や年齢によって適用条件が変わるため、事前に確認が必要です。
医療費控除
年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合に適用されます。医療費控除には、家族全員分の医療費も含めて計算可能です。対象には診察費や薬代だけでなく、通院の交通費も含まれます。
注意点: 医療費の領収書を整理し、申告時に明細書を作成する必要があります。e-Taxを利用する場合でも領収書は保管しておきましょう。
寄附金控除
ふるさと納税や特定の寄附金が控除の対象となります。寄附金控除には、所得控除型と税額控除型がありますが、確定申告では主に所得控除型が適用されます。
注意点: 領収書や証明書が必要です。ふるさと納税の場合、受領証明書を各自治体から取得しましょう。
障害者控除
納税者本人や扶養親族が障害者に該当する場合に適用されます。一般障害者は27万円、特別障害者は40万円が控除額となります。
注意点: 障害者手帳などの証明書を準備する必要があります。
その他の所得控除
小規模企業共済等掛金控除: 小規模企業共済や確定拠出年金の掛金が控除されます。
雑損控除: 災害や盗難などで資産に損害を受けた場合に適用されます。
基礎控除、所得控除の確定申告の流れ
確定申告に必要な書類の準備
基礎控除や所得控除を受けるためには、次の書類を正確に準備することが重要です。
確定申告書
国税庁のホームページからダウンロード、または税務署で取得できます。e-Taxを利用する場合はオンラインで作成可能です。
源泉徴収票
給与所得者の場合、勤務先から発行されます。複数の勤務先がある場合は、すべての源泉徴収票を用意します。
控除証明書
生命保険料や社会保険料などの証明書を保険会社や機関から取得します。
本人確認書類
マイナンバーカード、または運転免許証などを用意します。
銀行口座がわかるもの
還付金を受け取るための口座情報を記載します。
上記書類の提出
書類の提出方法は次の3つです。
窓口提出: 税務署に直接提出する方法。
郵送提出: 書類を郵送して申告する方法。
e-Taxを利用: インターネットで申告する方法。スマホを使って簡単に提出できます。
提出時には、すべての書類が揃っているか再確認することが大切です。不備がある場合、後日修正が必要となり手間が増えます。
よくある間違いと注意点
確定申告でのよくあるミスや注意点を以下にまとめました。
控除額の計算ミス
基礎控除や扶養控除の控除額を間違えるケースが多いです。所得に応じた正確な控除額を確認しましょう。
必要書類の不足
源泉徴収票や控除証明書の添付漏れが発生しやすいです。特に、生命保険料控除証明書や医療費の領収書は忘れがちです。
申告期限の遅れ
確定申告の期限(通常2月16日~3月15日)を過ぎると、延滞税や無申告加算税が発生します。余裕を持った準備が必要です。
e-Taxの操作ミス
e-Taxで申告する際、データの入力ミスや送信漏れが起こる場合があります。送信後に受信通知を確認することを忘れないようにしましょう。
所得控除の見落とし
自身が利用可能な控除を見逃すケースが多々あります。すべての控除を確認し、適切に申告しましょう。
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まとめ
基礎控除や所得控除は、所得税の計算において非常に重要な役割を果たします。適切に控除を活用することで税負担を軽減し、節税効果を最大限に引き出すことが可能です。確定申告をスムーズに行うために、必要書類を事前に揃え、提出方法や期限を守るよう心がけましょう。特に、e-Taxや確定申告ソフトを活用すると効率的に申告を終えることができます。
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よくある質問
確定申告をしなかったらどうなるの?
無申告加算税や延滞税が発生します。
確定申告の内容を間違えた場合は?
修正申告を行うことで対応できます。
確定申告の時期は?
通常、2月16日から3月15日までが申告期間です。
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