工房で自分のブランドの鞄を縫い、オーダーの注文も受ける。メーカーや問屋から革の支給を受けてOEMの縫製を請け負い、持ち込まれた鞄の修理もする。鞄職人のお金は、店頭やネットで売れた鞄の代金、オーダーの前金と残金、メーカーから届く加工賃、修理代と、入り方がばらばらです。革や金具の仕入れ、工業用ミシンのような設備にも、まとまったお金がかかります。
確定申告アプリ(会計ソフト)選びは、自分のブランドの鞄の売上とOEMの加工賃、修理代、革や金具の仕入れを、裁断や縫製の合間に記録して申告まで終えられるかで決まります。この記事では、製造・支給材の加工・修理で分かれる消費税の区分、オーダーの前金を売上にする日、年末に残った革と作りかけの鞄の棚卸、工業用ミシンを経費にする年といった鞄職人ならではの論点から、おすすめの4本を比較します。
この記事のポイント
- 鞄メーカーや工房に雇われて給与で働き、年末調整を受けているなら、確定申告もアプリも原則不要
- 簡易課税なら、自分で革を仕入れて作る鞄は第三種、革の支給を受けて縫うOEMは第四種、鞄の修理は第五種
- オーダー鞄の前金は受け取った日ではなく引き渡した日の売上、委託販売は委託先が売った日の売上
- 年末に残った革や金具、縫いかけの鞄、売れ残りの鞄は棚卸をして翌年に回す
- 工業用ミシンや革漉き機は、青色申告の事業所得なら2026年4月以後に買った40万円未満のものを一度に経費にできる
- 迷ったら、鞄の売上もOEMの加工賃も修理代も入金のたびに数えたいならタックスナップ、工房を構えて人を雇うならfreee、複数の口座をまとめて管理するならマネーフォワード、パソコンでじっくりならやよいの青色申告
鞄職人に確定申告アプリは必要?
鞄メーカーや工房に雇われて給与で働き、年末調整を受けているなら、確定申告もアプリも原則として必要ありません。一方、独立して工房で鞄を作って売っている、メーカーや問屋からOEMや下請けの加工を請け負っている、鞄の修理を受けている、という場合は確定申告が必要になることがあります。
| 働き方 | 確定申告の目安 |
|---|---|
| 鞄メーカーや工房に雇われて給与で働き、年末調整あり | 原則不要(年末調整で完結) |
| 勤めながら、休日に自分で作った鞄や革小物を売っている | 給与以外の所得が20万円を超えたら必要 |
| 独立して工房を構え、自分のブランドの鞄の販売やオーダーを受けている | 所得が基礎控除などの合計(令和8年分の基礎控除は合計所得489万円以下で104万円)を超えたら必要 |
| メーカーや問屋から、OEMや下請けの縫製・加工を請け負っている | 所得が基礎控除などの合計を超えたら必要。加工賃は通常、源泉徴収されない |
| 持ち込まれた鞄の修理やリペアを受けている | 修理代も事業の売上。製造や販売の売上と合わせて申告する |
ここでいう所得は、受け取った売上の総額ではなく革や金具、糸、工房の家賃などの経費を引いた金額です。所得税の申告がいらない場合も、住民税の申告は別に必要になることがあります。会社勤めのかたわら、レザークラフトの革小物をハンドメイドの販売サイトで売っている人は、こちらの記事が参考になります。

革のかばんを売るときは品質表示のルールがある
牛革や馬革、豚革、羊革、やぎ革を使った旅行かばんや事務用かばん、ランドセルを売るときは、家庭用品品質表示法にもとづいて、革の種類と取扱い上の注意、表示した人の名前と連絡先を表示します(消費者庁 雑貨工業品品質表示規程「かばん」)。外面積の60%以上が表皮のついた銀付革なら、「牛革」のように革の名前で表示します。
一方、ハンドバッグや財布などの袋物は、この表示の対象になっていません。下げ札やラベルで、お客さんの見やすい場所に付けるのが決まりです。中古の鞄を仕入れて直して売る場合は、古物商の許可が要ることがあるので、警察署に確認しておきましょう。仕事ごとの許可と届出は、こちらの記事で一覧にしています。

青色申告65万円控除はアプリで取れる?
取れます。鞄の製造や加工、修理を事業所得として申告する鞄職人は、開業届と青色申告承認申請書を出しておけば、最大65万円の控除が受けられます(副業の雑所得の場合は青色申告特別控除の対象外です)。65万円控除には複式簿記の帳簿が必要ですが、確定申告アプリなら取引を入力するだけで自動で出来上がります。e-Taxで提出すれば控除額は55万円ではなく65万円になります。令和9年分からは、紙で提出すると控除は10万円になり、e-Taxでの提出が65万円の条件になります(財務省 令和8年度税制改正の大綱)。
税理士に頼むのとどちらがいい?
一人で工房を回し、自分のブランドの鞄の販売にOEMや修理を組み合わせている程度なら、費用の面では確定申告アプリで十分です。取引先や販路がいくつあっても、1件ずつの売上と経費を記録していけば申告書は作れます。相場を比べてみます。
| 依頼方法 | 費用の目安(年間) |
|---|---|
| 税理士に記帳から丸ごと依頼 | 10〜20万円 |
| 税理士に申告書作成だけスポット依頼 | 5〜10万円 |
| 確定申告アプリ | 1〜3万円台 |
アプリなら年1〜3万円台で利用料は経費にできる
確定申告アプリの利用料は年間1〜3万円台で、鞄の製造や加工を事業として申告する人は全額をその年の経費にできます。革や金具、ミシン針と同じく、仕事を回すための費用です。
税理士に頼んだほうがいいのはこんな場合
職人やアシスタントを雇って給与を払うようになった、OEMの受注が増えて売上が1,000万円に近づいてきた、法人化を考えているという場合は、税理士に相談する価値があります。年末の在庫の評価や消費税の区分、給与の源泉徴収など、判断することが一気に増えるためです。
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鞄職人が確定申告アプリを選ぶ4つの基準
鞄職人のアプリ選びは、①自分のブランドの販売・OEMの加工賃・修理代を、仕事の種類ごとに分けて記録できるか、②革や金具の仕入れと、ミシンなどの設備の支払いを分けて記録できるか、③裁断や縫製の合間に、スマホだけで申告まで終わるか、④棚卸や消費税の区分、設備の扱いを質問できる窓口があるか、の4つで決まります。どれも「売上の種類が多く、革の在庫と設備にお金が寝る」というこの仕事の構造から来る基準です。

自分のブランドの販売・OEMの加工賃・修理代を、仕事の種類ごとに分けて記録できるか
店頭や催事では鞄の代金をその場で受け取り、ネットショップや委託先の売上は手数料を引いて振り込まれます。OEMの加工賃は月末締めでメーカーからまとめて入金され、修理代はお客さんから直接受け取ります。どの入金が自分の鞄の販売で、どれが加工賃や修理代かを分けて記録できるかが最初の基準です。消費税の簡易課税では、この3つの区分が違うので、ここがすべての土台になります。
革や金具の仕入れと、ミシンなどの設備の支払いを分けて記録できるか
革や金具、糸、接着剤は鞄の材料で、年末に残った分は翌年に持ち越します。一方、工業用ミシンや革漉き機、裁断用の抜き型は、金額によって数年に分けて経費にする設備です。材料の仕入れと設備の購入を分けて記録できるかを確認しましょう。革の仕入れがまとまっていると、年末に残った革を数えるときも原価をすぐに確かめられます。
裁断や縫製の合間に、スマホだけで申告まで終わるか
裁断、漉き、貼り合わせ、縫製、コバの仕上げと、1本の鞄が仕上がるまでには工程が多く、手が離せない時間が続きます。OEMの納期が重なる時期は、帳簿のためにパソコンを開く時間はほとんどありません。記帳から申告書の作成、e-Taxでの提出までスマホだけで終わるかを確認しましょう。接着剤が乾くのを待つ数分で進められることも大切です。
棚卸や消費税の区分、設備の扱いを質問できる窓口があるか
「縫いかけの鞄も棚卸に入れる?」「支給された革で縫う加工賃は第何種?」「家庭用ミシンは何年で経費にする?」。鞄職人の申告には、判断に迷う点が少なくありません。チャットやLINEで質問できる窓口があると、申告の直前で手が止まることを防げます。
アプリ選びでよくある失敗
よくある失敗は次の3つです。どれも「仕事の種類ごとの売上と、材料・設備の支払いを分けて記録できるか」を基準に選べば避けられます。
- OEMの加工賃と自分のブランドの鞄の売上をまとめて記録し、消費税の区分を後から分けられない
- 年末に残った革や縫いかけの鞄を数えず、革の代金を全部その年の経費にしてしまう
- オーダー鞄の前金を受け取った年の売上にして、引き渡した年とずれてしまう
鞄職人におすすめの確定申告アプリ4選
鞄の売上もOEMの加工賃も修理代も入金のたびに数えたいならタックスナップ、工房を構えて人を雇うならfreee、複数の口座やカードをまとめて管理するならマネーフォワード、パソコンでじっくり進めるならやよいの青色申告が有力です。まずは最安プラン同士の比較表で全体像をつかんでください。
| アプリ名 | スマホ完結度 | レシート撮影上限(最安プラン) | カード・口座連携の自動仕訳 | 月額(最安・年払い・税抜) |
|---|---|---|---|---|
| タックスナップ | ◎ 提出まで完結 | 無制限 | ◎ 連携明細をAIが自動仕訳・スワイプで確認するだけ | 980円・無料トライアルあり |
| freee | ○ | 月5枚 | ○ 自動で経理 | 980円・無料お試しあり |
| マネーフォワード | ○ | 月15件(超過は上位プランへ) | ◎ 連携できる金融サービスが豊富 | 900円・無料トライアルあり |
| やよいの青色申告 | △ パソコン前提 | 対応(上限の公表なし) | ○ スマート取引取込 | 初年度無料あり |
鞄の売上もOEMの加工賃も修理代も入金のたびに数えたいならタックスナップ
タックスナップはスマホ完結に特化した確定申告アプリで、工房で自分のブランドの鞄を作って売りながら、OEMの加工や鞄の修理も請け負う鞄職人に向いています。自分の鞄の売上やOEMの加工賃、修理代と、革や金具の支払いを1つにまとめて、裁断や縫製の合間にも申告まで進められます。
おすすめポイント
- 連携した口座の入金から、メーカーや問屋からのOEMの加工賃、ネットショップや委託先からの売上、修理代をスワイプで事業の売上に仕分けでき、勤め先の源泉徴収票とあわせて1つの申告書にまとめられる
- 連携したカードの明細は、特許を取得した「スワイプ仕分け」(右=経費・左=プライベート)で1件ずつ切り分け=革や金具の通販、糸や接着剤の注文も、接着剤が乾くのを待つ間に片づく(出典)
- 革材料店や金具店のレシートはカメラで撮るだけ(読み取り枚数無制限・カンタンプラン以上)。「これは経費になる?」と迷ったら「みんなはどうしてる」機能で同じ職種の判断を確認できる
- スワイプと丸投げ仕分け(1,000件最短3秒・安心プラン以上)で、複式簿記の知識ゼロでも青色申告65万円控除に必要な帳簿と書類を作れる(白色申告の収支内訳書にも対応)
- マイナンバーカードがあれば、申告書の作成からe-Taxでの提出(電子申告)まですべてスマホだけで完結=OEMの納期でミシンの前を離れられない時期でも、手を止めた合間に申告を進められる
- 職種に合わせた職種特化モードで、税理士監修のAIが9割以上の精度で勘定科目を自動判定(出典)
- 消費税の申告にも最安のカンタンプランから対応=OEMの発注元に求められてインボイス登録をし、2割特例を使う場合も同じアプリで完結できる
- 最安のカンタンプランは年払いで月980円(税抜・年額11,760円)。2026年確定申告期間の全29日間、App Storeランキング確定申告アプリ内1位(Sensor Tower)で、無料トライアルから始められる
- 24時間のAIチャットに加え、LINEで専門スタッフに相談できる(カンタンプラン以上)=「端革を売った代金はどう記録する?」という迷いも、作業の後に聞ける
- 登録者40万人超の税理士YouTuber・ヒロ税理士が監修した税務調査リスクチェックと、追徴課税時に利用料を全額返金する保証(安心プラン)
こんな人に向いている
- 自分のブランドの鞄の販売と、OEMの加工や修理を掛け持ちしている
- 店頭・ネット・委託・催事と、販路をいくつも持っている
- 革や金具、糸のレシートが毎週のようにたまる
- 工房の作業で手が離せず、スマホだけで申告を終えたい
工房を構えて人を雇うならfreee
freeeは○×の質問に答える形式で申告書を作れる、初心者向けの設計が特徴の会計ソフトです。職人やアシスタントを雇う、セレクトショップや百貨店への卸が増えて請求書を出す取引が増えたなど、事業として広げたい人、将来は法人化も考えている人に向いています。
おすすめポイント
- ○×の質問に答えるだけで確定申告書を作成できる
- 請求書の発行や給与計算までシリーズでそろう
- 法人化したあとも法人向けfreee会計にデータを引き継げる
こんな人に向いている
- 職人を雇う、工房を広げる予定がある
- 卸先が増え、請求書を出す取引が多い
複数の口座やカードをまとめて管理したいならマネーフォワード
マネーフォワード クラウド確定申告は、連携できる金融機関の多さが強みです。ネットショップの売上の受け取り口座、OEMの加工賃の振込口座、革の仕入れに使うカードと、お金の出入り口が多い人に向いています。
おすすめポイント
- 連携できる銀行・カード・電子マネーなど金融関連サービスが豊富
- 家計簿アプリ「マネーフォワード ME」と組み合わせて家計と事業をまとめて把握できる
- レポート機能で月ごとの収支を見える化できる
こんな人に向いている
- 売上の受け取り口座やカードが複数ある
- 生活費と工房の収支をまとめて管理したい
パソコンでじっくり進めたいならやよいの青色申告
やよいの青色申告 オンラインは、会計ソフトの老舗・弥生のクラウド版です。工房を閉めた後や受注の落ち着いた時期にパソコンの前に座る時間があり、帳簿や決算書を大きな画面で確認しながら進めたい人に向いています。
おすすめポイント
- セルフプランは初年度無料で始められる
- 画面の大きいパソコンで決算書までじっくり作り込める
- 老舗ならではのサポート体制(プランにより電話・チャット)
こんな人に向いている
- 帳簿や決算書はパソコンでまとめて進めたい
- まず無料で1年試したい
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鞄職人の確定申告で注意したいポイント
鞄職人の申告でつまずきやすいのは、製造・加工・修理で分かれる消費税の区分・OEMの加工賃と源泉徴収・オーダーや委託の売上にする日・革と縫いかけの鞄の棚卸・ミシンなどの設備・材料と工房の経費・個人事業税と副業の7つです。順に整理します。
消費税の区分は製造が第三種・支給された革の縫製が第四種・修理が第五種
消費税の簡易課税を選ぶと、自分で革を仕入れて作った鞄を売るのは第三種事業(みなし仕入率70%)、メーカーから革の支給を受けて縫うOEMの加工賃は第四種事業(60%)、鞄の修理は第五種事業(50%)です(国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分)。国税庁の質疑応答事例には、かばん製造業と袋物製造業は第三種事業で、原材料の支給を受けて行う加工の例として「革等の支給を受けて行う縫製」は第四種事業と書かれています(国税庁 日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-E製造業))。
鞄の修理は、総務省の日本標準産業分類で「かばん・袋物修理業」として「他に分類されない修理業」に入り、国税庁の質疑応答事例では、この「その他の修理業」は第五種事業で、修理に伴う部品代を分けて受け取ってもその代金を含めて第五種と書かれています(国税庁 日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-R サービス業ほか))。
工房で作った鞄を店頭やネットで直接売る製造小売も、第三種事業です。自分で革を仕入れて縫製をほかの職人に頼み、完成品として売る場合も第三種になり、作るときに出た端革を売った代金も第三種です(国税庁 消費税法基本通達13-2-5〜13-2-8)。一方、仕入れたパーツや既製品をそのまま売る分は、第一種か第二種になります。
| 仕事の形 | 売上にする日 | 源泉徴収 | 簡易課税の区分 |
|---|---|---|---|
| 自分で革を仕入れて作った鞄の販売(店頭・ネット・催事) | 鞄を引き渡した日 | 引かれない | 第三種(70%) |
| オーダー鞄の製作 | 完成した鞄を引き渡した日(前金を受け取った日ではない) | 引かれない | 第三種(70%) |
| セレクトショップや百貨店の委託販売 | 委託先が売った日 | 引かれない | 第三種(70%) |
| OEM:自分で革を仕入れて完成品で納める | 納品した日(検収した日などで続けて計上してもよい) | 通常は引かれない | 第三種(70%) |
| OEM:革の支給を受けて縫う加工 | 加工して引き渡した日 | 通常は引かれない | 第四種(60%) |
| 持ち込まれた鞄の修理 | 修理して引き渡した日 | 引かれない | 第五種(50%)。修理に使った部品代も含める |

区分は取引ごとに判定するので、製造の売上と加工賃、修理代を分けて記録しておきましょう。なお、一般のお客さんが持ち込んだ革で鞄を仕立てる場合の区分は、国税庁の明示が見当たりません。総務省の日本標準産業分類では、家庭の消費者から直接頼まれる賃加工を製造業としていないため(総務省 日本標準産業分類の解説)、区分が分かれる可能性があります。迷うものは税務署に確認しましょう。
消費税の申告が必要になるのは、原則として2年前の課税売上が1,000万円を超えた年か、インボイス登録をした場合です。インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった場合は、令和8年分までは2割特例、2年前の課税売上が1,000万円以下なら令和9年分・10年分は3割特例が使えます(国税庁 令和8年度税制改正特集)。簡易課税で納める税額は、第三種なら売上の消費税の3割、第四種なら4割、第五種なら5割になる計算なので、3割特例を使える人で加工賃や修理代が多いなら、3割特例のほうが納める額は少なくなります。
OEMの加工賃は通常源泉徴収されないがデザイン料は引かれることがある
鞄の販売代金や、OEMの縫製の加工賃は、所得税法で源泉徴収の対象として挙げられている報酬に入っていません(国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは)。加工賃は税金を引かれずに満額で振り込まれるので、入金のたびに一部を納税用に取り分けておきましょう。
一方、メーカーから鞄のデザインだけを頼まれて受け取るデザイン料は、デザインの報酬として10.21%(1回100万円を超える部分は20.42%)が源泉徴収されることがあります。カルチャースクールでレザークラフトを教えて受け取る講師料も、技芸の教授の報酬として対象になることがあります(国税庁 所得税基本通達204-6・204-7)。給与を払っていない個人のお客さんから受け取る代金は、源泉徴収されません(国税庁 No.2502)。
月末締めで振り込まれる加工賃は、どの月に納めた分かが入金だけではわかりません。入金があったら納品書や支払明細と照らし合わせ、何をいくつ納めた分かを記録しておきましょう。引かれた源泉所得税があれば、その額も控えておくと申告で差し引けます。
オーダーの前金と委託販売は売上にする日が違う
オーダー鞄の前金は、受け取った日ではなく、完成した鞄を引き渡した日の売上です(国税庁 所得税基本通達36-8)。たとえば、11月に前金を受け取り、翌年2月に鞄を引き渡すなら、前金も残金も翌年の売上になります。数か月待ちのオーダーを受けている工房ほど、年末に引き渡し前の前金がたまりやすいので、注文ごとに控えておきましょう。
セレクトショップや百貨店に預けた鞄は、委託先が売った日の売上です。売上計算書が1か月を超えない間隔で届き、続けて届いた日で計上しているなら、届いた日でもかまいません。委託先やネットショップに手数料を引かれて入金された場合も、手数料を引かれる前の販売価格を売上にし、手数料は経費にします。催事やクラフトイベントの売上は、お客さんに渡した日のものとして、その日のうちに個数と金額を記録しておきましょう。
年末に残った革と縫いかけの鞄は棚卸する
年末に残っている革、金具や糸、縫いかけの鞄、完成して売れ残っている鞄、端革は、どれも棚卸資産で、その分の費用は翌年に持ち越します(e-Gov法令検索 所得税法施行令3条)。年末に高価な革をまとめて仕入れた年は、そのまま全部を経費にすると所得が実際より少なくなってしまいます。委託先に預けたまま年を越した鞄も、売れるまでは自分の在庫として数えます。
評価の方法を届け出ていない場合は、年の最後に仕入れた単価で評価する最終仕入原価法になります。縫いかけの鞄や売れ残りの鞄は、販売価格ではなく、使った革や金具などの原価で数えます。一点もののオーダー鞄のように1点ずつ原価を管理しているなら、個別法を選べます(国税庁 所得税基本通達47-1)。評価の方法の届出は、事業を始めた年の確定申告期限までです。
糸や接着剤、コバの仕上げ剤、梱包材のように毎年おおむね同じ量を買って使う消耗品は、続けて同じやり方をしているなら、買った年の経費にしてかまいません(国税庁 所得税基本通達37-30の3)。鞄の主な材料である革は、残った分を棚卸に含めます。
工業用ミシンや革漉き機は金額によって経費にする年が変わる
工業用ミシンや革漉き機、裁断機は、10万円未満なら買った年の経費、10万円以上20万円未満なら3年に分けて経費にできます。青色申告で事業所得の人なら、2026年4月以後に買った40万円未満のものは、合計300万円まで一度に経費にできます(国税庁 No.2100 減価償却のあらまし)。1〜3月に買ったものは30万円未満が基準で、副業の雑所得ではこの特例は使えません。
金額は、通常セットで取引される単位で判定し、搬入や据付けの費用も含めます。ミシンの本体とテーブル、モーターを一式で買った場合は、まとめた金額で判定するのが一般的です。これらに当たらない金額の設備は数年に分けて経費にし、鞄を作る工房の機械は「なめし革、なめし革製品又は毛皮製造業用設備」として9年が目安です(e-Gov法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第二)。
家庭用ミシンを鞄づくりに使う場合に、どの区分の年数になるかを示した国税庁の文書は見当たりません。10万円未満のミシンなら買った年の経費にできるので、年数が問題になるのは高額なものだけです。迷うときは、買う前に税務署に確認しておくと安心です。工房を開く前にミシンや道具をそろえた費用の扱いは、こちらの記事で解説しています。

革や工房の費用は経費、自分で使う鞄は売上に入れる
革や金具、糸、接着剤、型紙の材料、工房の家賃や電気代、ミシンの修理代、催事の出店料、委託先やネットショップの手数料、送料は、鞄を作って売るための経費にできます。新しい型を作るための試作に使った革も、販売のための支出なので経費です。
経費になるかどうかの線引きは、次のとおりです。
- 経費にできる:革や金具、糸、接着剤、ミシンの修理代、催事の出店料、委託先の手数料
- 分けられる分だけ経費:自宅工房の家賃や電気代、私用と兼ねる車やスマホ(仕事で使う分を分けられる場合)
- 経費にならない:自分の食事、普段の服、同じ生計の家族に払う工房の家賃

自宅の一角を工房にしている場合は、仕事で使う部分が半分を超えるか、仕事の分をはっきり分けられる場合に、その分だけ経費になります(国税庁 所得税基本通達45-2)。
販売用に作った鞄を自分で使ったり、家族や知人に贈ったりした分は、売ったものとして売上に入れます(国税庁 所得税基本通達39-1・39-2)。金額は通常の販売価格が原則ですが、原価以上で、かつ販売価格のおおむね70%以上の金額で帳簿に記録していれば認められます。たとえば、5万円で売っているトートバッグを家族に贈ったら、3万5,000円以上で記録します。
個人事業税は製造業として考え副業は20万円と扶養を確認する
鞄の製造や加工、修理は、個人事業税では製造業(物品の加工修理業を含む)に当たるのが一般的で、青色申告特別控除を差し引く前の事業の所得から、年290万円の事業主控除を差し引いた残りに税率5%がかかります(東京都主税局 個人事業税)。課税されるかどうかの判定は、都道府県が仕事の中身で行います。
会社員として働きながら休日に鞄を作って売っているなら、給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は必要です。副業の雑所得では、青色申告の控除や40万円未満の一括経費が使えず、赤字を給与と差し引くこともできません。家族の扶養に入っている人は、税金の扶養は令和8年分は合計所得62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)が基準です(国税庁 No.1191 配偶者控除・財務省 令和8年度税制改正の大綱)。社会保険の扶養は年収130万円未満が目安で、事業の収入をどう数えるかは加入している健康保険によって違います。

裁断と縫製の合間に確定申告を終わらせる方法
コツは、申告期にまとめてやろうとせず、納品や引き渡しのたびに売上を記録し、革や金具のレシートはその日のうちに撮っておくことです。加工賃が振り込まれたら、どの月に納めた分かを納品書と照らし合わせる。オーダーの前金は、引き渡すまで注文ごとに控えておく。革や金具の通販はカード連携で自動で取り込む。12月の最後の作業日に、残った革と縫いかけの鞄、売れ残りを数えておく。これだけで、申告期には確認して提出するだけになります。
無料トライアルで口座とカードを連携してみて、加工賃の入金や革の支払いが自動で取り込まれるかを試してから決めるのが失敗しない選び方です。なお、自動連携やAIの仕訳結果をそのまま提出せず、最後にひととおり見直すのはどのアプリでも共通の基本です。
タックスナップは、自分の鞄の販売とOEMの加工賃、修理代、革や金具の支払いを1つにまとめ、申告までスマホで終えられる設計です。接着剤が乾くのを待つ間や作業の後のスキマ時間だけで、申告の準備が回ります。

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「個人事業主・スマホ完結」に特化した確定申告アプリ
タックスナップは、日々の経費処理から確定申告書の作成・提出まで、個人事業主・フリーランスに必要な会計機能がすべてスマホで完結できるアプリです。
今までの会計ソフトは「パソコン操作」や「機能の多さ」を前提としたサービスが多かった一方で、タックスナップは「個人事業主・スマホ完結」に特化し、会計知識が全くない方でも、スキマ時間だけで確定申告が終わるように設計しています。
「初めての確定申告でも迷わずに提出できた」 「他の会計ソフトから乗り換えて、圧倒的にラクになった」 といった嬉しいレビューもいただいています。

App Store確定申告アプリランキング1位を獲得
ここ数年で、タックスナップの利用者は急拡大中。
2026年の確定申告期間(2026年2月16日〜3月16日)では、大手会計ソフトのアプリも含む確定申告アプリの中で、全期間にわたってApp Storeランキング1位を獲得しました。
(参照:Sensor TowerのApp Storeランキングデータ)

他会計ソフトの約4倍の経費処理スピード
意外に時間を取られてしまうのが、日々の経費処理です。 「気づいたら何十件も経費が溜まっていた」という時でも、タックスナップならあっという間に登録が完了します。
外部機関による比較調査では、タックスナップを使うと10分間で平均518件の経費を処理できることがわかっています。 他会計ソフトと比べて約4倍、手書きの約18倍、Excelの約40倍のスピードです。

出典:株式会社タックスナップ 「【比較調査】確定申告アプリ「タックスナップ」、同時間での経費処理件数が他会計ソフトと比較して約4倍を記録。」 (実査運営機関:株式会社アスマーク)
速さの秘訣は丸投げ仕分け
タックスナップの経費処理の速さの最大の理由は、「丸投げ仕分け」機能です。
銀行やカードの取引データが自動で反映されるだけでなく、それぞれの取引が経費かプライベートか、どの勘定科目が適しているのかをアプリが高精度で自動判定してくれます。
「丸投げ仕分け」機能を使えば1,000件の仕分けも最短3秒で完了するので、経費処理が驚くほど楽になります。

税理士監修の機能で、はじめての確定申告でも安心
「本当にこの内容で提出して大丈夫?」という不安を解消するために、税理士監修の「税務調査リスクチェック機能」があります。
あなたのデータをもとに、同じ職種の人の傾向と比べながら、税務調査が入りやすいかをアプリが診断します。
修正するべき内容も表示されるので、事前に修正し、安心して提出できます。

タックスナップは、確定申告をできるだけ簡単に、かつ安心して提出できるようにサポートするアプリです。 無料トライアルも行っているので、まずはその快適さを体験してみてください。
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まとめ
鞄職人の確定申告は、「消費税の簡易課税では、自分で革を仕入れて作る鞄が第三種、支給された革を縫う加工賃が第四種、修理が第五種」「オーダーの前金は引き渡した日、委託販売は委託先が売った日の売上」「年末には残った革と縫いかけの鞄、売れ残りを棚卸する」の3点を押さえれば怖くありません。革を1枚ずつ裁ち、ひと針ずつ縫い進めるように、売上と経費も1件ずつ記録していけば、申告はきちんと形になります。

よくある質問
Q. 鞄メーカーに勤めている鞄職人も確定申告は必要ですか?
1か所に勤めて年末調整を受けているなら、原則不要です。休日に自分で作った鞄を売るなどして、給与以外の所得が20万円を超えた場合は申告が必要です。
Q. 独立した鞄職人は、いくらから申告が必要ですか?
令和8年分は、所得が基礎控除の104万円などの合計を超えたら必要です。所得は、売上から革や金具、工房の家賃などの経費を引いた金額です。
Q. 副業で革小物を作って売っています。申告は必要ですか?
会社員なら、売上から材料費などの経費を引いた所得が20万円を超えたら必要です。20万円以下でも住民税の申告は必要です。事業といえる規模でなければ雑所得になり、青色申告の控除は使えません。
Q. OEMの加工賃から税金は引かれますか?
縫製などの加工賃は、源泉徴収の対象として挙げられている報酬に入っていないので、通常は引かれません。鞄のデザイン料だけを受け取る場合は、10.21%が源泉徴収されることがあります。
Q. メーカーから革の支給を受けて縫っています。消費税の区分は何ですか?
簡易課税なら、革などの支給を受けて行う縫製の加工賃は第四種事業(みなし仕入率60%)です。国税庁の質疑応答事例に、例として明記されています。
Q. 自分で革を仕入れて、OEM先に完成品を納めています。区分は何ですか?
自分で材料を仕入れて鞄を作り、製品として納めるなら第三種事業(みなし仕入率70%)です。同じOEMでも、革の支給を受けて縫う加工とは区分が違います。
Q. 鞄の修理代は、消費税のどの区分ですか?
簡易課税なら、鞄の修理は第五種事業(みなし仕入率50%)です。修理に使った部品代を分けて受け取っても、その代金を含めて第五種になります。
Q. お客さんが持ち込んだ革で鞄を仕立てる場合の区分は?
国税庁の明示が見当たらず、区分が分かれる可能性があります。家庭の消費者から直接頼まれる賃加工は、日本標準産業分類で製造業としていないためです。迷うときは税務署に確認しましょう。
Q. オーダー鞄の前金はいつの売上ですか?
完成した鞄を引き渡した日の売上です。年末に前金を受け取り、年明けに鞄を渡す場合は、前金も残金も翌年の売上になります。
Q. 委託先に預けた鞄が12月に売れ、入金は翌年1月です。いつの売上ですか?
委託先が売った日の年の売上です。入金日ではないので、売上計算書で売れた日を確かめて、その年の売上に入れましょう。
Q. ネットショップの手数料を引かれた入金は、どの金額を売上にしますか?
手数料を引かれる前の販売価格が売上で、引かれた手数料は経費にします。入金額だけを売上にすると、手数料の記録が残りません。
Q. 年末に残った革は、買った年の経費のままでいいですか?
年末に残っている革は棚卸資産なので、その分は翌年に持ち越します。金具や糸、売れ残りの鞄、端革も同じように数えておきましょう。
Q. 縫いかけの鞄も棚卸に入れますか?
縫いかけの鞄は仕掛品という棚卸資産なので、年末に残っていれば棚卸に入れます。評価の方法を届け出ていなければ、最終仕入原価法で評価します。
Q. 端革を売った代金はどう扱いますか?
端革を売った代金も事業の売上です。消費税の簡易課税では、製造に伴って出た端材の売却として第三種事業になります。
Q. 工業用ミシンは何年で経費にしますか?
10万円未満なら買った年の経費、青色申告の事業所得なら2026年4月以後に買った40万円未満のものも一度に経費にできます。これらに当たらない金額の機械は数年に分けて経費にし、鞄の製造に使う機械なら9年が目安です。
Q. 家庭用ミシンを鞄づくりに使っています。経費にできますか?
仕事に使うミシンは経費にでき、10万円未満なら買った年に全額を経費にできます。家庭用ミシンをどの区分の年数で経費にするかは国税庁の明示がないので、高額なものは税務署に確認しましょう。
Q. 自分で使う鞄や、家族へのプレゼントにした鞄はどうなりますか?
販売用に作った鞄を自分で使ったり贈ったりした分は、売上に入れます。金額は、原価以上で、かつ販売価格のおおむね70%以上で記録していれば認められます。
Q. 自宅でメーカーから材料の支給を受けて、縫う作業だけをしています。
家内労働者等の必要経費の特例(令和8年分は最大69万円)の対象になる場合があるので、該当するかは税務署に確認しましょう(国税庁 No.1810 家内労働者等の必要経費の特例)。
Q. インボイス登録は必要ですか?
登録は任意ですが、OEMの発注元のメーカーから求められることがあります。登録すると消費税の申告が必要になりますが、令和8年分までは2割特例、令和9年分・10年分は3割特例が使えます。
Q. 開業届は出すべきですか?
鞄の製造や加工、修理を継続して事業として行うなら、開業届を出すのが原則です。青色申告承認申請書とセットで出せば、最大65万円の特別控除が使えるようになります。

Q. 今使っている会計ソフトからデータを移行できますか?
できます。たとえばタックスナップはfreee・マネーフォワード・弥生・PayPayからのデータ移行に対応しています。年初から新しいアプリで始めるか、申告前に前年分をまとめて移すのがスムーズです。



