この記事のポイント
- 会社員が医療費控除を申告するときは給与の源泉徴収票が手元に必要
- 2019年(平成31年)4月以降、確定申告書への源泉徴収票の添付は不要だが金額転記に使う
- 見る欄は支払金額・給与所得控除後の金額・所得控除の額の合計額・源泉徴収税額の4カ所
- 医療費控除は支払った医療費−補填額−10万円(または所得の5%)で計算し上限は200万円
- 源泉徴収税額が0円なら還付される所得税がないため申告しても戻らない
田淵 宏明
【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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医療費控除の確定申告に源泉徴収票は必要?
会社員(給与所得者)が医療費控除を確定申告するときは、給与の源泉徴収票が手元に必要です。医療費控除は年末調整では手続きできず、自分で確定申告をする必要があります。その申告書に、源泉徴収票に書かれた給与収入・給与所得・源泉徴収税額などの金額を転記するため、作成時に欠かせません。
一方で、税務署へ提出する書類として添付する必要はなくなりました。国税庁は「給与所得のある方について、平成31年4月1日以後、給与所得の源泉徴収票は、確定申告書への添付または確定申告書を提出する際の提示が不要となりました」と示しています。ただし同時に「確定申告書を作成する際には引き続き給与所得の源泉徴収票が必要」とも明記しており、添付は不要でも作成には必要という関係です(出典:国税庁 No.1120)。
つまり源泉徴収票は「提出するための書類」ではなく「申告書の数字を埋めるための元データ」という位置づけになります。手元に見当たらない場合は捨てずに探すか、勤務先へ再発行を依頼しておくと安心です。
源泉徴収票はどこを見る?確定申告書への転記欄
医療費控除の申告で使う源泉徴収票の欄は、主に4カ所です。この4つの数字を確定申告書の該当欄へ書き写すことで、給与所得者の所得と納めた税額が申告書上で再現されます。
| 源泉徴収票の欄 | 意味 | 確定申告書での使い道 |
|---|---|---|
| 支払金額 | 1年間の給与収入(額面) | 収入金額等の「給与」欄へ転記 |
| 給与所得控除後の金額 | 給与収入から給与所得控除を引いた給与所得 | 所得金額等の「給与」欄へ転記 |
| 所得控除の額の合計額 | 社会保険料控除や基礎控除などの合計 | 所得控除の内訳を確認・転記する基礎 |
| 源泉徴収税額 | すでに給与から天引きされ納めた所得税 | 「源泉徴収税額」欄へ転記し還付額の計算に使う |
特に注目したいのが源泉徴収税額です。医療費控除で戻るお金は、この欄に記載された「すでに納めた所得税」の一部が返ってくる仕組みだからです。ここが0円だと戻る税金そのものが存在しません。
なお、社会保険料や生命保険料などの控除額も源泉徴収票に記載されているため、年末調整で申告済みの控除はそのまま確定申告書へ引き継ぎます。二重に入力したり、逆に抜け落ちたりしないよう、源泉徴収票を見ながら1つずつ確認すると間違いが減ります。
源泉徴収票を使った医療費控除の申告手順
医療費控除の申告は、医療費の集計→源泉徴収票の転記→申告書の作成→提出という流れで進みます。源泉徴収票は2つ目のステップで登場し、給与の金額と納めた税額を埋めるために使います。
まず1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費を集計し、「医療費控除の明細書」を作成します。病院や薬局ごとに支払額をまとめる作業で、健康保険組合から届く医療費通知を使うと記載を簡略化できます。
次に源泉徴収票を見ながら、給与収入・給与所得・源泉徴収税額などを申告書へ転記します。ここで金額を正確に写すことが、還付額を正しく計算する土台になります。転記が面倒に感じる場合は、源泉徴収票をカメラで読み取って自動入力できるタックスナップのような確定申告アプリを使うと、書き写しのミスも防げます。医療費控除の明細書と源泉徴収票の数字がそろえば、納めすぎた所得税が還付される形で申告書が完成します。
医療費控除額の計算方法
医療費控除額は「支払った医療費の合計−保険金などで補填される金額−10万円」で計算します。総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」を差し引きます。控除額の上限は200万円です(出典:国税庁 No.1120)。
たとえば年間の医療費が25万円、保険金による補填が0円の会社員なら、25万円−10万円で15万円が医療費控除額になります。この15万円がそのまま戻るのではなく、控除額に所得税率を掛けた金額が還付の目安です。
実際にいくら戻る?還付の仕組み
戻る所得税の目安は「医療費控除額×自分の所得税率」です。所得税率は課税所得に応じて5%〜45%に分かれるため、同じ控除額でも収入が高い人ほど還付額は大きくなります。
ここで重要なのが源泉徴収票の源泉徴収税額です。医療費控除は「納めた所得税を取り戻す」制度のため、源泉徴収税額が0円の場合は還付されません。育児休業などで1年間ほとんど給与を受け取らず、天引きされた所得税がない年は、医療費控除を申告しても所得税は戻らない点に注意が必要です。この場合でも、住民税の軽減につながることはあります。
源泉徴収票をなくした・もらっていないときの対処
源泉徴収票が手元にないときは、まず勤務先に再発行を依頼します。源泉徴収票は再発行が可能な書類で、給与計算のデータが残っていれば会社が出し直してくれます。
勤務先が再発行に応じない場合や、退職した会社が倒産している場合は、税務署の「源泉徴収票不交付の届出書」という手続きがあります。会社から源泉徴収票を受け取れない事情を届け出ることで、税務署から会社へ交付を促してもらえる仕組みです。
源泉徴収票が届かないときの具体的な対処は、年末調整で源泉徴収票がないケースをまとめた記事で詳しく確認できます。

いずれにしても、確定申告書は源泉徴収票の数字がないと正しく作れません。医療費控除で還付を受けたいなら、早めに再発行を依頼して手元にそろえておくことをおすすめします。
自営業・年金受給者に給与の源泉徴収票は必要?
自営業者(個人事業主)は、給与の源泉徴収票そのものが発行されません。事業所得は自分で帳簿から集計するため、医療費控除も事業の決算書・収支内訳書とあわせて申告書に反映します。給与収入がある場合のみ、その分の源泉徴収票を使います。
年金受給者の場合は、給与の源泉徴収票ではなく「公的年金等の源泉徴収票」を使って医療費控除を申告します。年金から天引きされた所得税を取り戻す考え方は会社員と同じで、公的年金等の源泉徴収票に記載された支払金額や源泉徴収税額を転記します。
年金受給者の確定申告の要否や進め方は、年金受給者向けの確定申告をまとめた記事を参考にしてください。

まとめ
会社員が医療費控除を確定申告するときは、給与の源泉徴収票が手元に必要です。2019年4月以降は申告書への添付が不要になりましたが、支払金額・給与所得控除後の金額・所得控除の額の合計額・源泉徴収税額の4カ所を申告書へ転記するために使います。
医療費控除額は「支払った医療費−補填額−10万円(所得200万円未満は5%)」で計算し、上限は200万円です。戻る所得税は控除額に所得税率を掛けた金額が目安で、源泉徴収税額が0円なら還付はありません。源泉徴収票をなくしたときは勤務先へ再発行を依頼し、応じてもらえない場合は税務署の不交付の届出書を活用します。
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よくある質問
Q. 医療費控除に源泉徴収票は必要ですか?
会社員が医療費控除を確定申告するときは必要です。申告書への添付は2019年4月以降不要になりましたが、給与収入や源泉徴収税額を転記するために手元に用意します。
Q. 医療費控除では源泉徴収票のどこを見ますか?
主に4カ所です。支払金額、給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額、そして源泉徴収税額を確認し、それぞれ確定申告書の該当欄へ転記します。
Q. 医療費控除の確定申告に必要な書類は何ですか?
医療費控除の明細書と、会社員の場合は給与の源泉徴収票が基本です。医療保険者から届く医療費通知があれば、明細書の記載を簡略化できます。
Q. 源泉徴収税額が0円でも医療費控除を申告する意味はありますか?
所得税の還付はありません。医療費控除は納めた所得税を取り戻す制度のため、源泉徴収税額が0円だと戻る所得税がないためです。ただし住民税が軽減される場合はあります。
Q. 源泉徴収票をなくした場合はどうすればいいですか?
まず勤務先に再発行を依頼します。会社が応じない場合や倒産している場合は、税務署の「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで対応できます。
Q. 医療費控除の還付申告はいつまでにすればいいですか?
医療費を支払った年の翌年1月1日から5年以内であれば申告できます。過去に申告し忘れた年分も、5年以内ならさかのぼって還付を受けられます。
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