この記事のポイント
- 同じ年に転職した人は前職と現職の給与を合算して年末調整するため前職の源泉徴収票が必要
- 手元にないときはまず前職の会社へ再発行を依頼する(会社には交付義務がある)
- 会社が応じないときは税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できる
- 年末調整に間に合わなくても自分で確定申告すれば精算できる(還付申告は翌年1月1日から5年間)
- 確定申告書への源泉徴収票の添付は不要だが金額の転記に現物が必要
田淵 宏明
【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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年末調整に前職の源泉徴収票がないとどうなる?
同じ年に転職した人は、前職分の源泉徴収票がないと現職で年末調整を完了できません。年末調整は1年間の給与をまとめて精算する手続きのため、前職で受け取った給与の情報が欠けると正しく計算できないからです。
そのままにすると現職での年末調整が受けられず、自分で確定申告する必要が出てきます。まずは前職の会社に連絡して源泉徴収票を用意するのが最初の一手です。
なぜ前職の源泉徴収票が必要なのか
年末調整は、その年の1月1日から12月31日までの給与総額をもとに税額を精算する仕組みだからです。同じ年に前職と現職の両方から給与を受けた人は、両方を合算して1年分として計算しなければ正しい税額になりません。
現職の会社は、あなたが前職でいくら給与をもらい、いくら源泉徴収されたかを知りません。そのため前職の源泉徴収票を提出して、前職分の給与額と源泉徴収税額を現職に伝える必要があります(国税庁)。
提出しない・間に合わないとどうなる
前職分を提出できないと、現職では前職分を含めた年末調整ができません。その結果、年末調整が完了せず自分で確定申告することになります。
年の途中で退職して転職した人は、月々の給与から多めに源泉徴収されているケースが少なくありません。精算しないままだと納めすぎた税金が戻らず、還付を受けそこねることにもつながります。確定申告すれば取り戻せるので、あきらめる必要はありません。
前職分の源泉徴収票が不要なケース
すべての人に前職の源泉徴収票が必要なわけではありません。自分がどのケースに当てはまるか、下の表で確認してください。
| ケース | 前職分の要否 | 理由 |
|---|---|---|
| 同じ年に退職・転職し、年内に現職へ入社 | 必要 | 前職と現職を合算して現職で年末調整するため |
| 前年以前に退職した会社の分 | 不要 | その年の給与ではないため合算しない |
| 退職後に年をまたいで入社(例:前年12月退職・当年入社) | 不要 | 現職の入社年に前職の給与がないため |
| 副業・掛け持ちの給与(他社が主たる勤務先) | 年末調整では合算しない | 年末調整は主たる1社のみ。他社分は確定申告で精算 |
副業や掛け持ちで複数の会社から給与を受けている場合、年末調整はメインの1社でしか行えません。残りの給与は自分で確定申告して精算する形になります。
源泉徴収票がない・なくしたときの対処法
源泉徴収票が手元にないときは、まず前職の会社へ再発行を依頼します。会社には源泉徴収票を交付する義務があるため、退職した会社であっても発行を求められます。
会社が応じないケースや倒産しているケースもあります。状況別に、①会社へ再発行依頼、②応じない・倒産時は税務署へ、の順で手順を整理します。
①前職の会社に再発行を依頼する
最初の一手は、前職の会社(給与担当・人事)へ源泉徴収票の再発行を依頼することです。給与の支払者には、退職した従業員に対しても源泉徴収票を交付する義務があります(所得税法第226条)。
再発行にかかる日数は会社によって異なり、数日から2週間程度が目安です。年末調整の提出期限が近いときは、電話やメールで早めに依頼し、いつまでに必要かを伝えておくと安心です。紛失した場合の再発行も、同じように会社へ依頼すれば対応してもらえます。
②会社が応じない・倒産しているときは税務署に相談する
会社が源泉徴収票を交付してくれないときは、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。これは会社が交付義務を果たさない場合に、税務署から会社へ行政指導を行ってもらうための手続きです。
会社が倒産している場合は、破産管財人が選任されていれば管財人に交付を求めます。管財人が対応できない場合や連絡先が分からない場合も、税務署に相談すれば給与明細などの代替資料で対応する方法を案内してもらえます。
源泉徴収票不交付の届出書とは
源泉徴収票不交付の届出書は、会社が源泉徴収票を交付しないときに提出する書類です。提出先は自分の納税地を所轄する税務署で、e-Taxまたは書面のどちらでも提出できます(国税庁 F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続)。
届出書には、給与明細書の写しなど、会社に交付を求めたことや給与を受けた事実が分かる書類を添付します。なお紛失時の再発行にはこの届出書は使えません。届出書はあくまで「会社が交付しない」場合の手続きで、なくした場合は会社への再発行依頼で対応します。
年末調整に間に合わないときは確定申告で精算する
年末調整に源泉徴収票が間に合わなくても、自分で確定申告すれば精算できます。年末調整はあくまで会社が行う手続きで、受けられなかった分は確定申告で取り戻せる仕組みになっているためです。
年の途中で退職して年末調整を受けていない人は、納めすぎた税金が戻る還付申告になるケースが多くあります。あわてて年末調整に間に合わせようとせず、確定申告で落ち着いて精算する道も選べます。
確定申告の期間と還付申告の期限
確定申告の期間は、例年2月16日から3月15日までです。一方、年末調整を受けられず税金を納めすぎている場合の還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
還付申告は通常の確定申告期間を待たずに年明けから提出でき、期限も5年と長めに設けられています。源泉徴収票がすぐに用意できない事情があっても、書類がそろってから落ち着いて手続きすれば問題ありません。
源泉徴収票なしでも確定申告できる?
会社の倒産などで源泉徴収票がどうしても入手できない場合、給与明細・振込履歴・労働契約書などの資料をもとに確定申告書を作成できることがあります。まずは税務署に相談し、どの資料で対応できるかを確認してください。
なお2019年4月以降、確定申告書への源泉徴収票の添付は不要になりました。ただし給与の所得金額や源泉徴収税額を申告書に転記する必要があるため、作成時には源泉徴収票の現物(または代わりになる給与明細など)が手元にいります。
年末調整をし忘れた・受けられなかった場合も確定申告でやり直せる
年末調整をし忘れた場合や、退職して受けられなかった場合も、確定申告でやり直せます。1年間の給与や控除をあらためて申告し直すことで、正しい税額に精算できるためです。
医療費控除やふるさと納税など、そもそも年末調整では扱えない控除もあります。こうした控除を受けたい人も、確定申告で一緒に精算するのがおすすめです。しかし、「何から始めればいいかわからない」「入力方法が難しそう」と感じる方も少なくありません。
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まとめ
同じ年に転職した人は、前職と現職の給与を合算して年末調整するため、前職の源泉徴収票が必要です。手元にないときは、まず前職の会社へ再発行を依頼し、会社が応じないときは税務署に源泉徴収票不交付の届出書を提出できます。
どうしても年末調整に間に合わなかった場合も、自分で確定申告すれば精算できます。還付申告なら翌年1月1日から5年間提出できるので、あわてず書類をそろえて手続きすれば問題ありません。
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よくある質問
Q. 年末調整に前職の源泉徴収票は必ず必要?
同じ年に転職した人には必要です。年末調整は1月から12月の給与を合算して精算するため、前職分の給与額と源泉徴収税額が分からないと現職で正しく計算できません。前年以前に退職した会社の分は不要です。
Q. 源泉徴収票が年末調整に間に合わないとどうなる?
現職での年末調整が完了せず、自分で確定申告して精算することになります。納めすぎた税金がある場合は還付申告で取り戻せるため、間に合わなくても損はしません。
Q. 前職に源泉徴収票の再発行を頼めば出してもらえる?
はい。会社には退職者に対しても源泉徴収票を交付する義務があります(所得税法第226条)。数日から2週間程度で発行されるのが一般的なので、期限が近いときは早めに依頼しましょう。
Q. 会社が源泉徴収票を出してくれないときはどうする?
納税地を所轄する税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。e-Taxまたは書面で提出でき、給与明細の写しなどを添付します。税務署が会社へ行政指導を行います。
Q. 源泉徴収票がなくても確定申告できる?
会社の倒産などで入手できない場合は、給与明細や振込履歴をもとに作成できることがあります。まず税務署に相談してください。なお確定申告書への源泉徴収票の添付は2019年4月以降不要ですが、金額の転記には現物か代替資料が必要です。
Q. 年末調整をし忘れた・受けられなかったらどうすればいい?
確定申告でやり直せます。1年間の給与と控除をあらためて申告することで正しい税額に精算できます。医療費控除やふるさと納税など年末調整で扱えない控除も、確定申告で一緒に精算できます。
Q. 前職分を出さずに黙っていてもバレない?
前職の給与は会社が市区町村へ提出する給与支払報告書などで把握されるため、黙っていても分かる仕組みです。合算せずに済ませると所得が過少になり、後から確定申告や修正が必要になります。正しく精算して還付を受けるほうが得です。
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