この記事のポイント
- 消費税を申告するのは課税事業者とインボイス登録事業者で、所得税の申告とは別の手続き
- 計算方式は原則課税・簡易課税・2割特例の3つで、使える人と計算式が異なる
- 「2割特例は売上税額×20%」で計算でき、仕入の集計が不要で最もかんたん
- 簡易課税のみなし仕入率は業種で90%〜40%、基準期間の課税売上高5,000万円以下と事前届出が条件
- 個人事業者の申告・納付期限は翌年3月31日で、e-Taxやアプリを使えばスマホひとつで完結
田淵 宏明
【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
確定申告でカンタンと安心を両立した3つの魅力

消費税の確定申告が必要なのはどんな人?
消費税の確定申告が必要なのは、課税事業者とインボイス発行事業者に登録した人です。所得税の確定申告をしていても、この条件に当てはまらなければ消費税の申告は不要です。
自分が対象かどうかは、売上高の基準とインボイス登録の有無で決まります。次の2つの条件を順番に確認しましょう。
課税事業者になる条件(基準期間の課税売上高1,000万円超)
課税事業者になるのは、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合です。個人事業者の基準期間は前々年を指すので、たとえば2026年分なら2024年の課税売上高で判定します。
この基準期間が1,000万円以下でも、特定期間(前年の上半期)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります(国税庁 消費税及び地方消費税の申告等)。売上が伸びている場合は、前々年だけでなく前年の前半も確認しておくと安心です。
インボイス登録で課税事業者になった人
インボイス発行事業者の登録を受けた人は、売上高にかかわらず課税事業者になります。もともと売上1,000万円以下の免税事業者だった場合でも、登録した時点から消費税の申告・納付の義務が生じます。
つまり、取引先にインボイスを発行するために登録したフリーランスや個人事業主も、消費税の確定申告が必要です。この負担をやわらげるために設けられているのが2割特例で、計算方法はこのあとの比較表で解説します。
消費税の計算方法は3つ|原則課税・簡易課税・2割特例
消費税の計算方法は、原則課税・簡易課税・2割特例の3つに分かれます。どれを使えるかは売上規模や届出、インボイス登録の経緯によって変わるため、まず自分がどれに当てはまるかを整理するのが近道です。
3方式の違いを、計算式・要件・向く人の順で並べると次のようになります。
| 計算方式 | 納付税額の計算式 | 主な要件 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 原則課税(一般課税) | 売上税額 − 仕入等の税額 | すべての課税事業者が選べる基本方式 | 仕入や経費が多い人 設備投資で還付が見込める人 |
| 簡易課税 | 売上税額 −(売上税額 × みなし仕入率) | 基準期間の課税売上高5,000万円以下 (事前に届出が必要) | 仕入が少なくみなし仕入率が有利な人 |
| 2割特例 | 売上税額 × 20% | インボイス登録で免税から課税になった人 | 売上の集計だけでかんたんに済ませたい人 |
原則課税(本則課税):売上税額から仕入税額を差し引く
原則課税は、売上に係る消費税額から、仕入や経費に係る消費税額を差し引いて納付額を計算する方式です(国税庁)。すべての課税事業者が使える基本の計算方法にあたります。
仕入税額をすべて集計する手間はかかりますが、経費や仕入が多い事業では納税額を抑えやすいのが特徴です。設備投資などで支払った消費税が受け取った消費税を上回る年は、還付を受けられる場合もあります。
簡易課税:売上税額にみなし仕入率をかけて計算する
簡易課税は、仕入税額を実際に集計せず、売上税額にみなし仕入率をかけたものを仕入税額とみなして差し引く方式です。仕入の集計が不要になるぶん、経理の負担を軽くできます。
利用できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、かつ適用したい課税期間の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している場合です(国税庁)。届出は事前提出が原則なので、使いたい年の前年末までに出しておく必要があります。
2割特例:売上税額の20%だけ納める負担軽減措置
2割特例は、売上に係る消費税額の20%だけを納める計算方式です。売上税額から売上税額の80%を差し引く形になるため、実質的に「売上税額 × 20%」で税額が決まります。
対象は、インボイス発行事業者の登録によって免税事業者から課税事業者になった人です。仕入税額の集計が不要で、売上を集計するだけで計算できるので、3方式の中で最もかんたんに申告できます。適用できる期間は課税期間ごとに定められているため、自分の年分が対象かは国税庁で最新の内容を確認しておくと確実です。
みなし仕入率は業種で違う|簡易課税の早見表
簡易課税のみなし仕入率は、業種によって90%から40%まで6段階に分かれています。自分の事業がどの区分に当たるかで納税額が変わるため、事業区分の確認が欠かせません。
第1種から第6種までの区分とみなし仕入率は次のとおりです(国税庁 簡易課税制度の事業区分)。
| 事業区分 | みなし仕入率 | 主な業種 |
|---|---|---|
| 第1種事業 | 90% | 卸売業 |
| 第2種事業 | 80% | 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡) |
| 第3種事業 | 70% | 製造業、建設業、鉱業、農林漁業(飲食料品を除く)など |
| 第4種事業 | 60% | 飲食店業など(他の区分に該当しない事業) |
| 第5種事業 | 50% | 運輸通信業、金融・保険業、サービス業 |
| 第6種事業 | 40% | 不動産業 |
たとえばサービス業なら第5種でみなし仕入率50%となり、売上税額の半分を仕入税額とみなして差し引けます。複数の事業を営んでいる場合は区分ごとに分けて計算するため、判断に迷うときは国税庁の事業区分の説明で確認しておきましょう。
消費税の確定申告の期限・納付方法は?
個人事業者の消費税の申告・納付期限は、その年の翌年3月31日です。所得税の期限(翌年3月15日)とは異なるので、2つの締め切りを混同しないよう注意が必要です。
期限を過ぎると延滞税や無申告加算税がかかる場合があります。所得税を3月15日までに終わらせても消費税がまだ残っている、というケースがあるため、両方の期限をカレンダーに分けて控えておくと安心です。
個人事業者の申告・納付期限は翌年3月31日
消費税の確定申告と納税の期限は、課税期間の翌年3月31日までと定められています(国税庁 消費税及び地方消費税の申告等)。所得税より半月ほど後ろにずれている点が特徴です。
ただし振替納税を利用する場合は、口座からの引き落とし日が4月上旬に別途設定されます。納付日と申告期限が同じではないので、資金の準備は引き落とし日を基準に考えると計画が立てやすくなります。
納付方法(振替納税・ダイレクト納付・クレジット等)
消費税の納付方法は複数あり、自分の環境に合わせて選べます。窓口に行かずに済ませたい場合は、電子的な納付手段が便利です。
- 振替納税(指定口座からの自動引き落とし)
- ダイレクト納付(e-Taxからの口座振替)
- クレジットカード納付
- スマホアプリ納付やコンビニ納付(QRコード)
- 金融機関・税務署の窓口での現金納付
振替納税は一度手続きすれば毎年自動で引き落とされるため、納付忘れを防ぎやすい方法です。まとまった納税資金を用意しておくのが不安な場合は、早めに準備を始めておくと負担を分散できます。
消費税の確定申告に必要な書類とe-Taxでのやり方
消費税の確定申告には、消費税及び地方消費税の申告書と、計算方式に応じた付表が必要です。日々の帳簿や請求書・領収書をもとに税額を計算し、申告書へ転記していきます。
提出方法はオンライン・郵送・窓口の3つがあります。オンラインで提出する方法には、国税庁のe-Taxを利用する方法と、確定申告アプリを利用する方法の2種類があり、自宅で完結できることから主流になっています。手順の流れをつかんでおけば、初めてでも迷いにくくなります。
必要書類(申告書・付表・帳簿等)
消費税の申告で用意する主な書類は次のとおりです。計算方式によって使う付表が変わる点に注意しましょう。
- 消費税及び地方消費税の確定申告書
- 課税方式に応じた付表(一般課税用・簡易課税用など)
- 売上や仕入を記録した帳簿
- 取引先から受け取った請求書・領収書(インボイス)
帳簿と請求書は、仕入税額控除の根拠として保存が求められます。日々の取引を記録しておけば、申告時にまとめて集計する手間を減らせます。
e-tax(確定申告書等作成コーナー)での申告手順
e-Taxを使えば、国税庁の確定申告書等作成コーナーから画面の案内に沿って申告書を作成できます。大きな流れは次の4ステップです。
- 作成コーナーで「消費税」を選び、課税方式を指定する
- 売上や仕入の金額を入力し、税額を自動計算させる
- 内容を確認して申告書データを作成する
- マイナンバーカードなどで本人確認し、そのまま電子送信する
e-Taxはスマホからも利用できますが、金額の集計や区分の判断は自分で進める必要があり、初めての年は手間に感じてしまう場面もあります。売上や経費のデータが手元で整理できていれば、入力もスムーズに進みます。
確定申告アプリでの申告手順
タックスナップのようなインボイス(消費税申告)に対応した確定申告アプリを使えば、税額の計算から申告書の作成・提出までアプリの中で完結します。e-Taxの作成コーナーと違い、売上の集計や申告書への転記を自分で進める必要がありません。
大きな流れは次の3ステップです。
- 売上や経費をアプリに記録する(口座・カード連携やレシート撮影で自動取り込み)
- 課税方式を選ぶと、記録した売上データからアプリが消費税額を自動計算する
- 画面の案内に沿って申告書を作成し、マイナンバーカードで本人確認してそのまま提出する
ふだんの記録がそのまま申告データになるため、申告時期にまとめて集計し直す手間がかかりません。ただし消費税申告への対応状況はアプリによって異なるので、インボイス(消費税申告)に対応しているかを確認してから選ぶと安心です。
まとめ
消費税の確定申告が必要なのは課税事業者とインボイス登録事業者で、計算方式は原則課税・簡易課税・2割特例の3つです。原則課税は売上税額から仕入税額を引き、簡易課税は売上税額にみなし仕入率をかけ、2割特例は売上税額の20%だけを納めます。
個人事業者の申告・納付期限は所得税とは別の翌年3月31日です。自分がどの方式を使えるかを先に整理し、売上や仕入のデータを日ごろから残しておけば、申告の負担を大きく減らせます。
スマホで確定申告するならタックスナップ
方式の選択から税額計算、申告書の作成までを自分で進めるのは、初めての年ほど手間に感じてしまいます。売上や経費のデータをふだんから整理し、そのまま申告につなげられる環境があると負担が軽くなります。
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よくある質問
Q. 消費税の確定申告は誰がしないといけない?
課税事業者とインボイス発行事業者に登録した人が対象です。基準期間(個人は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になり、インボイス登録者は売上高にかかわらず申告が必要になります。
Q. 原則課税と簡易課税はどちらが得?
仕入や経費が多い事業は原則課税、仕入が少ない事業は簡易課税が有利になりやすいです。ただし簡易課税は事前の届出が必要で、業種ごとのみなし仕入率によっても結果が変わるため、実際の数字で試算して選ぶのがおすすめです。
Q. 2割特例は誰でも使える?
いいえ。2割特例は、インボイス発行事業者の登録によって免税事業者から課税事業者になった人向けの負担軽減措置です。適用できる課税期間が定められているので、自分の年分が対象かは国税庁の最新情報で確認してください。
Q. 消費税の確定申告の期限はいつ?
個人事業者は、その年の翌年3月31日までに申告と納付を行います。所得税の期限(翌年3月15日)とは異なるため、2つの締め切りを分けて管理しておくと安心です。
Q. 所得税の確定申告とは別に手続きが必要?
はい。消費税の確定申告は、所得税の確定申告とは別の手続きです。課税事業者やインボイス登録者は、所得税の申告に加えて消費税の申告書も作成・提出する必要があります。
Q. 消費税の計算や申告をスマホだけでできる?
できます。e-Taxはスマホからも利用でき、インボイス(消費税申告)に対応した確定申告アプリを使えば、経費の記録から税額計算、申告書の提出までスマホひとつで完結します。
メタディスクリプション:消費税の確定申告は「売上に係る消費税−仕入等の消費税」で計算します。原則課税・簡易課税・2割特例の3つの計算方法と要件、みなし仕入率、個人事業主の申告期限(翌年3月31日)、e-Taxでのやり方までわかりやすく解説します。
確定申告でカンタンと安心を両立した3つの魅力

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