この記事のポイント
- 不動産所得は家賃・地代・礼金・更新料などの総収入金額から必要経費を引いて計算する
- 給与所得者は不動産所得を含む給与以外の所得が合計20万円を超えると確定申告が必要
- 経費にできるのは固定資産税・減価償却費・修繕費・管理委託費・借入金利息など
- 事業的規模(おおむね5棟10室以上)かどうかで青色申告特別控除の上限が変わる
- 申告書の具体的な記入は白色は収支内訳書・青色は青色申告決算書(いずれも不動産所得用)で行う
田淵 宏明
【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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家賃収入で確定申告が必要な人・不要な人
不動産収入がある人は、不動産所得が生じていれば原則として確定申告が必要です。ただし本業や他の所得の状況によって、申告が必要になるラインは変わります。
不動産所得とは、土地や建物などの貸付けによって生じる所得のことです(国税庁 No.1370)。アパートやマンションの家賃、駐車場の地代、借地権の設定に伴う収入などが該当します。
給与所得者は給与以外の所得が20万円超で必要
会社員などの給与所得者は、給与以外の所得の合計額が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁 No.1900)。副業で賃貸物件を持っている場合、この「給与以外の所得」に不動産所得が含まれます。
ここで判定するのは家賃の「収入」ではなく、経費を引いたあとの「所得」です。年間の家賃収入が20万円を超えていても、経費を差し引いた不動産所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要になります。
個人事業主・年金受給者・専業主婦などのケース
給与を受けていない人は、その年の所得の合計が基礎控除などの合計を超えると申告が必要になります。すでに事業所得などで確定申告している個人事業主は、金額にかかわらず不動産所得も合わせて申告します。
年金受給者や扶養に入っている人も、不動産所得が生じれば申告の対象になり得ます。判定は他の所得と合算して行うため、家賃収入だけを単独で見て「少額だから不要」と決めつけないよう注意してください。
所得税が不要でも住民税の申告は必要
所得税の確定申告が20万円以下で不要になる場合でも、住民税の申告は別途必要です。20万円ルールはあくまで所得税の特例で、住民税にはこの基準がありません。
確定申告をすれば住民税の情報も自治体へ連携されるため、改めて住民税の申告をする必要はありません。申告が不要と判断したときだけ、お住まいの自治体で住民税の申告を行います。
不動産所得の計算方法(総収入金額−必要経費)
不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。式にすると「不動産所得=総収入金額−必要経費」で、この金額が申告や課税のベースになります(国税庁 No.1370)。
家賃収入そのものに課税されるわけではありません。経費をきちんと計上できれば所得は圧縮され、納める税額も下がります。だからこそ、収入と経費を正確に把握することが申告の第一歩になります。
総収入金額に含まれるもの
総収入金額には、毎月の家賃だけでなく一時金や名目の異なる収入も含まれます。国税庁は不動産所得の総収入金額として、次のようなものを挙げています。
- 家賃・地代などの賃貸料収入
- 礼金・更新料・名義書換料・承諾料など
- 敷金や保証金のうち、返還を要しないもの
- 共益費などの名目で受け取る電気代・水道代・掃除代など
礼金や更新料は「預かり金」ではなく収入として扱う点に注意が必要です。返還しない敷金・保証金も、返還不要が確定した時点で収入に含めます。
不動産所得の必要経費にできるもの
必要経費は、賃貸物件の管理や維持のために支出した費用が対象です。主な種類を整理すると次のようになります。
| 経費の種類 | 内容 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 賃貸物件にかかる税金 |
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険などの保険料(その年分) |
| 減価償却費 | 建物や設備の取得費を耐用年数で分割した費用 |
| 修繕費 | 原状回復・小規模な修理などの費用 |
| 管理委託費 | 管理会社へ支払う管理料 |
| 借入金の利息 | 物件購入のためのローン利息 |
| その他 | 仲介手数料・広告料・司法書士報酬など |
このうち減価償却費は、実際の支出がない年でも経費に計上できるのが特徴です。建物の取得費を耐用年数にわたって分けて費用化するため、手元の現金を減らさずに所得を圧縮できます。
借入金の利息は経費にできますが、注意点があります。土地を取得するための借入金の利子は、不動産所得が赤字のときに他の所得と相殺(損益通算)できる範囲が制限されます。建物分の利子は通常どおり扱えるため、赤字が出る年は土地分と建物分を分けて考える必要があります。
不動産所得が赤字になった場合でも、給与所得や事業所得など他の所得と損益通算できるのが不動産所得の利点です。ただし土地取得にかかる借入金利子のうち赤字に対応する部分は、損益通算の対象から外れる点だけ押さえておいてください。
青色申告と白色申告・事業的規模の違い
不動産所得の申告方法は、青色申告と白色申告のどちらかを選びます。青色申告は控除などの特典が大きく、白色申告は帳簿がシンプルという違いがあります。そして特典の大きさは「事業的規模かどうか」で変わります。
| 項目 | 白色申告 | 青色申告(事業的規模) | 青色申告(規模に満たない) |
|---|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | なし | 最大65万円(複式簿記+e-Tax等) | 最高10万円 |
| 帳簿づけ | 収支内訳書 | 複式簿記の帳簿 | 簡易な帳簿でも可 |
| 青色事業専従者給与 | 適用なし(白色は専従者控除) | 適用できる | 適用なし |
| 事前申請 | 不要 | 必要(青色申告承認申請書) | 必要(青色申告承認申請書) |
青色申告で最大65万円の特別控除を受けたい場合は、複式簿記による記帳と、e-Taxでの電子申告または電子帳簿保存が条件になります。これを満たさない場合の控除額は55万円です。
事業的規模はおおむね5棟10室が目安
事業的規模かどうかは、貸付けの規模で判定します。国税庁は目安として、独立した室数がおおむね10室以上、独立家屋ならおおむね5棟以上を示しています(国税庁 No.1373)。
事業的規模と認められると、青色申告特別控除が最大65万円まで使えるほか、家族に支払う給与を経費にできる青色事業専従者給与が適用できます。規模がこれに満たない場合、青色申告特別控除は最高10万円にとどまります。
区分所有マンション1室の貸付けのような小規模な賃貸でも青色申告自体は可能ですが、控除額の上限が下がる点を理解したうえで方法を選ぶとよいでしょう。
不動産収入の確定申告の流れ
不動産収入の確定申告は、「必要書類の準備→帳簿・決算書の作成→申告書への転記→提出」という流れで進みます。全体像をつかんでおくと、どこでつまずきやすいかが見えてきます。
まず、家賃の入金明細・固定資産税の納税通知書・借入金の返済予定表・修繕費などの領収書といった書類を集めます。次に1年分の収入と経費を集計し、申告方法に応じた決算書類を作成します。
作成する書類は申告方法で分かれます。白色申告なら収支内訳書(不動産所得用)、青色申告なら青色申告決算書(不動産所得用)を用意し、そこで算出した不動産所得を確定申告書へ転記します。最後にオンライン・郵送・窓口のいずれかで提出します。
収支内訳書や青色申告決算書、確定申告書第一表・第二表への具体的な記入例は、以下の記事で数字を追いながら解説しています。実際の記入で手を止めたくない人は、そちらも合わせて確認してください。

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まとめ
不動産収入がある人の確定申告は、「不動産所得=総収入金額−必要経費」を正しく計算することが出発点です。給与所得者は給与以外の所得が合計20万円を超えると申告が必要になり、経費や青色申告の使い方しだいで納税額は大きく変わります。
礼金・更新料まで含めた収入の把握、減価償却費や借入金利息などの経費計上、そして事業的規模に応じた青色申告の選択。この3点を押さえれば、不動産所得の申告の全体像はつかめます。あとは決算書を作り、申告書へ転記して提出するだけです。
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よくある質問
Q. 家賃収入はいくらから確定申告が必要ですか?
給与所得者の場合、経費を引いた不動産所得を含む給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。判定するのは家賃の「収入」ではなく「所得」なので、収入が20万円を超えていても経費差引後が20万円以下なら所得税の申告は不要になります。ただし住民税の申告は別途必要です。
Q. 不動産所得が赤字になった場合も申告は必要ですか?
赤字であれば所得税の申告義務はありませんが、申告すると給与所得などと損益通算でき、税額が減る場合があります。ただし土地を取得するための借入金の利子にあたる部分は、損益通算の対象から除かれる点に注意してください。
Q. マンション1室の貸付けでも青色申告はできますか?
できます。ただし事業的規模(おおむね5棟10室以上)に満たない場合、青色申告特別控除の上限は最高10万円になります。最大65万円の控除を受けるには、事業的規模であることに加えて複式簿記とe-Tax等の要件を満たす必要があります。
Q. 家賃収入の確定申告で経費にできるものは何ですか?
固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費、管理委託費、物件購入のための借入金利息、仲介手数料などが経費になります。中でも減価償却費は実際の支出がない年でも計上でき、所得を圧縮する効果があります。私生活の費用は経費にできません。
Q. 不動産の売却(譲渡)も不動産所得になりますか?
なりません。物件を売却して得た利益は「譲渡所得」として、家賃収入による「不動産所得」とは別に計算します。この記事は保有中の家賃収入(不動産所得)を対象にしています。売却時は必要書類や計算方法が異なるため、譲渡所得の解説を確認してください。
Q. 確定申告はスマホだけでできますか?
できます。マイナンバーカードとスマホがあれば、収入・経費の集計から決算書の作成、e-Taxでの提出までスマホ完結で進められます。確定申告アプリを使えば、簿記の知識がなくても質問に沿って入力するだけで書類が整うため、PCが苦手でも取り組みやすくなります。
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