朝は出張で産後ケアの訪問、昼は自宅の一室で母乳外来、夜は市の両親学級の講師。分娩を扱う助産所なら、妊婦健診とお産も加わります。開業助産師のお金は、妊産婦さん本人、市町村、県の助産師会、講演を頼んだ企業や学校と、払う相手ごとに入り方が違います。同じ事業の中に、消費税がかからない売上とかかる売上が混ざるのも、この仕事ならではです。
確定申告アプリ(会計ソフト)選びは、妊産婦さんや市町村からの入金と、研修費や消耗品の細かい支払いを、訪問の合間に記録して申告まで終えられるかで決まります。この記事では、非課税と課税の売上の見分け方、消費税の免税点の数え方、個人事業税と源泉徴収の扱い、開業1年目の赤字と非常勤の給与との関係といった開業助産師ならではの論点から、おすすめの4本を比較します。
この記事のポイント
- 病院や産院に勤めて年末調整を受けているなら、確定申告もアプリも原則不要。助産所を開設して出張や産後ケアの仕事を受けると、自分で申告する
- 分娩介助・妊婦健診・産後2か月以内の回復検診・市町村から委託された産後ケアは消費税が非課税で、自主事業の母乳外来・講座・物販は原則として課税
- 消費税の免税点(2年前の課税売上1,000万円)は、非課税の売上を除いた課税売上だけで判定
- 助産師業は個人事業税の法定業種に入っておらず原則かからない(判断は都道府県)
- 源泉徴収されるのは講演や原稿の報酬で、妊産婦さんや市町村から受け取る助産・産後ケアの報酬は源泉徴収されない
- 開業1年目の赤字は、事業所得と認められれば非常勤やパートの給与と差し引きできる
- 迷ったら、入金と消耗品のレシートを訪問の合間に書き溜めたいならタックスナップ、助産所を構えてスタッフを雇うならfreee、複数の口座をまとめて管理するならマネーフォワード、パソコンでじっくりならやよいの青色申告
開業助産師に確定申告アプリは必要?
病院や産院に雇われて働き、年末調整を受けているなら、確定申告もアプリも原則として必要ありません。一方、助産所の開設届を出して出張で訪問している、自宅の一室で母乳外来を開いている、市町村から産後ケアの委託を受けている、という場合は確定申告が必要になります。
| 働き方 | 確定申告の目安 |
|---|---|
| 病院や産院に雇われて働き、年末調整あり | 原則不要(年末調整で完結) |
| 病院に勤めながら、休日にオンライン相談や講座の仕事を受けている | 給与以外の所得が20万円を超えたら必要 |
| 出張専門や自宅の一室、施設を構えて助産所を開業している | 所得が基礎控除などの合計(令和8年分の基礎控除は合計所得489万円以下で104万円)を超えたら必要 |
| 開業しながら、非常勤で病院や健診の仕事を続けている | 給与と事業の所得を合わせて申告する。事業が赤字なら、給与で引かれた税金が戻ることがある |
ここでいう所得は、受け取った売上の総額ではなく研修費や消耗品、交通費などの経費を引いた金額です。所得税の申告がいらない場合も、住民税の申告は別に必要になることがあります。病院に勤めながら副業をする場合の考え方は、看護師向けのこちらの記事で解説しています。

助産所の開設届は税務署の開業届とは別に出す
助産師が助産所を開設したときは、開設後10日以内に、所在地の都道府県知事(保健所を設置する市や特別区では市長・区長。窓口は保健所)に届け出る必要があります(e-Gov法令検索 医療法)。施設を持たず出張だけで仕事をする助産師も、住所を助産所とみなして同じ届出の対象になります。税務署に出す開業届とは別の手続きなので、両方を出しておきましょう。
分娩を扱う助産所は、産科か産婦人科の嘱託医師と、異常に対応できる病院や診療所を定めておく必要があります。出張だけの助産師も、お産の介助を約束するときは、異常に対応する病院や診療所を定めます。分べんを介助したときの助産録は、5年間の保存が求められます(e-Gov法令検索 保健師助産師看護師法)。仕事ごとの許可と届出は、こちらの記事で一覧にしています。

青色申告65万円控除はアプリで取れる?
取れます。開業助産師として続けるなら、開業届と青色申告承認申請書を出しておけば、最大65万円の控除が受けられます。65万円控除には複式簿記の帳簿が必要ですが、確定申告アプリなら取引を入力するだけで自動で出来上がります。e-Taxで提出すれば控除額は55万円ではなく65万円になります。令和9年分からは、紙で提出すると控除は10万円になり、e-Taxでの提出が65万円の条件になります(財務省 令和8年度税制改正の大綱)。
税理士に頼むのとどちらがいい?
出張専門や自宅の一室で、一人で助産所を回している程度なら、費用の面では確定申告アプリで十分です。売上の種類がいくつあっても、1件ずつの入金と経費を記録していけば申告書は作れます。相場を比べてみます。
| 依頼方法 | 費用の目安(年間) |
|---|---|
| 税理士に記帳から丸ごと依頼 | 10〜20万円 |
| 税理士に申告書作成だけスポット依頼 | 5〜10万円 |
| 確定申告アプリ | 1〜3万円台 |
アプリなら年1〜3万円台で利用料は経費にできる
確定申告アプリの利用料は年間1〜3万円台で、開業助産師として申告する人は全額をその年の経費にできます。賠償責任保険や助産師会の会費と同じく、助産所を続けるための費用です。
税理士に頼んだほうがいいのはこんな場合
入所施設のある助産所を開いた、助産師やスタッフを雇った、課税売上が1,000万円に近づいてきた、法人化を考えているという場合は、税理士に相談する価値があります。給与の源泉徴収や、非課税の売上が多い事業者の消費税の計算など、手続きが一気に増えるためです。
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開業助産師が確定申告アプリを選ぶ4つの基準
開業助産師のアプリ選びは、①分娩介助・産後ケア・母乳外来・講座の売上を種類ごとに分けて記録できるか、②市町村や助産師会からの委託料を訪問した月の売上として記録できるか、③訪問と訪問の合間にスマホだけで申告まで終わるか、④非課税と課税の線引きや助産所の費用の扱いを質問できる窓口があるか、の4つで決まります。どれも「非課税と課税の売上が混ざり、入金が後から届く」というこの仕事の構造から来る基準です。

分娩介助・産後ケア・母乳外来・講座の売上を種類ごとに分けて記録できるか
分娩の介助や妊婦健診、市町村から委託された産後ケアは消費税が非課税で、自主事業の母乳外来や講座、物販は原則として課税です。売上を種類ごとに分けて記録できるかが最初の基準です。分けておけば、消費税の免税点を判定するときに、課税売上だけをすぐに数えられます。
市町村や助産師会からの委託料を訪問した月の売上として記録できるか
産後ケアや新生児訪問の委託料は、振り込まれるのが訪問の翌月以降になることがあります。出産育児一時金の直接支払制度を使った分娩費も、保険者からの入金は分娩より後です。入金の日ではなく、訪問や分娩をした日の売上として記録できるかを確認しましょう。12月の訪問分を翌年の売上にしてしまう失敗を防げます。
訪問と訪問の合間にスマホだけで申告まで終わるか
出張の助産師は、自転車や車で家庭を回り、1日に何件も訪問する日があります。子育てをしながら開業する人もいて、帳簿のためにパソコンを開く時間はなかなか取れません。記帳から申告書の作成、e-Taxでの提出までスマホだけで終わるかを確認しましょう。
非課税と課税の線引きや助産所の費用の扱いを質問できる窓口があるか
「自主事業の産後ケアは課税?」「助産師会の会費は経費になる?」「ベビースケールは一度に経費にできる?」。開業助産師の申告には、判断に迷う点が少なくありません。チャットやLINEで質問できる窓口があると、申告の直前で手が止まることを防げます。
アプリ選びでよくある失敗
よくある失敗は次の3つです。前の2つは「売上を種類ごとに分け、訪問や分娩をした日に記録できるか」を基準に選べば避けられます。
- 分娩費や委託の産後ケアと、母乳外来や講座の売上を区別せずに記録し、消費税の免税点を判定できなくなる
- 12月に訪問した産後ケアの委託料を、振り込まれた翌年の売上にしてしまう
- 開業1年目の赤字を申告せず、非常勤先の給与で引かれた税金を取り戻せない
開業助産師におすすめの確定申告アプリ4選
入金と消耗品のレシートを訪問の合間に書き溜めたいならタックスナップ、助産所を構えてスタッフを雇うならfreee、複数の口座やカードをまとめて管理するならマネーフォワード、パソコンでじっくり進めるならやよいの青色申告が有力です。まずは最安プラン同士の比較表で全体像をつかんでください。
| アプリ名 | スマホ完結度 | レシート撮影上限(最安プラン) | カード・口座連携の自動仕訳 | 月額(最安・年払い・税抜) |
|---|---|---|---|---|
| タックスナップ | ◎ 提出まで完結 | 無制限 | ◎ 連携明細をAIが自動仕訳・スワイプで確認するだけ | 980円・無料トライアルあり |
| freee | ○ | 月5枚 | ○ 自動で経理 | 980円・無料お試しあり |
| マネーフォワード | ○ | 月15件(超過は上位プランへ) | ◎ 連携できる金融サービスが豊富 | 900円・無料トライアルあり |
| やよいの青色申告 | △ パソコン前提 | 対応(上限の公表なし) | ○ スマート取引取込 | 初年度無料あり |
入金と消耗品のレシートを訪問の合間に書き溜めたいならタックスナップ
タックスナップはスマホ完結に特化した確定申告アプリで、出張専門で開業した助産師や、非常勤の勤務を続けながら自宅の一室で助産所を始めた助産師に向いています。妊産婦さんや市町村、助産師会からの入金と、研修費や消耗品の支払いを1つにまとめて、訪問の合間にも申告まで進められます。
おすすめポイント
- 連携した口座の入金から、妊産婦さんからの分娩費や母乳外来の料金、市町村や助産師会からの産後ケアの委託料をスワイプで事業の売上に仕分けでき、非常勤先の源泉徴収票とあわせて1つの申告書にまとめられる
- 連携したカードの明細は、特許を取得した「スワイプ仕分け」(右=経費・左=プライベート)で1件ずつ切り分け=乳房ケアの消耗品の通販や訪問先への交通費も、次の訪問までの待ち時間に片づく(出典)
- 研修の受講料や消耗品のレシートはカメラで撮るだけ(読み取り枚数無制限・カンタンプラン以上)。「これは経費になる?」と迷ったら「みんなはどうしてる」機能で同じ職種の判断を確認できる
- スワイプと丸投げ仕分け(1,000件最短3秒・安心プラン以上)で、複式簿記の知識ゼロでも青色申告65万円控除に必要な帳簿と書類を作れる(白色申告の収支内訳書にも対応)
- マイナンバーカードがあれば、申告書の作成からe-Taxでの提出(電子申告)まですべてスマホだけで完結=訪問バッグを抱えて家庭を回る日でも、移動の合間に申告を進められる
- 職種に合わせた職種特化モードで、税理士監修のAIが9割以上の精度で勘定科目を自動判定(出典)
- 消費税の申告にも最安のカンタンプランから対応(2割特例を含む)=企業の研修講師などでインボイス登録をした場合も同じアプリで申告でき、分娩介助などの非課税の売上の扱いはLINEの専門スタッフに確認できる
- 最安のカンタンプランは年払いで月980円(税抜・年額11,760円)。2026年確定申告期間の全29日間、App Storeランキング確定申告アプリ内1位(Sensor Tower)で、無料トライアルから始められる
- 24時間のAIチャットに加え、LINEで専門スタッフに相談できる(カンタンプラン以上)=「助産師会の会費は経費になる?」という迷いも、訪問の後に聞ける
- 登録者40万人超の税理士YouTuber・ヒロ税理士が監修した税務調査リスクチェックと、追徴課税時に利用料を全額返金する保証(安心プラン)
こんな人に向いている
- 出張専門や自宅の一室で助産所を開業している
- 妊産婦さん、市町村、助産師会と、入金してくる相手がいくつもある
- 非常勤やパートの給与をもらいながら開業している
- パソコンを開く時間がなく、スマホだけで申告を終えたい
助産所を構えてスタッフを雇うならfreee
freeeは○×の質問に答える形式で申告書を作れる、初心者向けの設計が特徴の会計ソフトです。入所施設のある助産所を開く、助産師やスタッフを雇う、企業や法人の産院に請求書を出す件数が増えたなど、事業として広げたい人、将来は法人化も考えている人に向いています。
おすすめポイント
- ○×の質問に答えるだけで確定申告書を作成できる
- 請求書の発行や給与計算までシリーズでそろう
- 法人化したあとも法人向けfreee会計にデータを引き継げる
こんな人に向いている
- 施設を構えて、スタッフを雇う予定がある
- 企業研修や講演など、請求書を出す取引が多い
複数の口座やカードをまとめて管理したいならマネーフォワード
マネーフォワード クラウド確定申告は、連携できる金融機関の多さが強みです。非常勤先の給与の振込口座、委託料や分娩費の受け取り口座、消耗品の購入に使うカードと、お金の出入り口が多い人に向いています。
おすすめポイント
- 連携できる銀行・カード・電子マネーなど金融関連サービスが豊富
- 家計簿アプリ「マネーフォワード ME」と組み合わせて家計と事業をまとめて把握できる
- レポート機能で月ごとの収支を見える化できる
こんな人に向いている
- 委託料や分娩費の受け取り口座やカードが複数ある
- 生活費と助産所の収支をまとめて管理したい
パソコンでじっくり進めたいならやよいの青色申告
やよいの青色申告 オンラインは、会計ソフトの老舗・弥生のクラウド版です。訪問のない日や夜にパソコンの前に座る時間があり、帳簿や決算書を大きな画面で確認しながら進めたい人に向いています。
おすすめポイント
- セルフプランは初年度無料で始められる
- 画面の大きいパソコンで決算書までじっくり作り込める
- 老舗ならではのサポート体制(プランにより電話・チャット)
こんな人に向いている
- 帳簿や決算書はパソコンでまとめて進めたい
- まず無料で1年試したい
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開業助産師の確定申告で注意したいポイント
開業助産師の申告でつまずきやすいのは、非課税と課税の売上の区分・消費税の免税点・個人事業税・源泉徴収・委託料と出産育児一時金の計上時期・経費と備品・赤字と給与の差し引きの7つです。順に整理します。
同じ事業の中に非課税の売上と課税の売上が混ざる
分娩の介助や妊婦健診、出産の日以後2か月以内の母体の回復検診と新生児の検診は、助産として消費税が非課税です(国税庁 No.6201 非課税となる取引・消費税法基本通達6-8-1)。市町村から委託された産後ケア事業も、委託料と利用者から受け取る利用料の両方が非課税です(こども家庭庁 産後ケア事業の実施に当たり留意すべき事項及び消費税の取扱いについて)。
一方、市町村の委託を受けずに自主事業として行う産後ケアや母乳外来、育児相談、両親学級などの講座、物販は、原則として消費税の課税売上です。同じ「産後ケア」でも、委託か自主事業かで扱いが変わります。
| 売上の種類 | 消費税 | 確認すること |
|---|---|---|
| 分娩の介助・妊娠の検査・妊婦健診 | 非課税 | 助産に当たる。出産後の入院は出産の日から1か月が限度 |
| 出産の日以後2か月以内の母体の回復検診・新生児の検診 | 非課税 | 2か月を過ぎた後の検診は助産に当たらない(市町村委託の産後ケアなら非課税) |
| 市町村から委託された産後ケア事業(委託料・利用者の利用料) | 非課税 | 委託契約書に母子保健法17条の2の産後ケア事業の委託と書かれているか |
| 委託を受けていない自主事業の産後ケア・母乳外来・育児相談 | 原則として課税 | 産後2か月以内の母体の回復検診・新生児の検診に当たる部分は非課税になる場合がある |
| 両親学級・講座・講演・原稿・監修 | 課税 | 企業や法人の依頼ならインボイスを求められることがある |
| 育児用品などの物販 | 課税 | 助産の範囲に含まれない |

市町村から清掃や利用料の受け取りなど、付随的な業務だけを受託した場合は、産後ケア事業の委託とはいえず課税になります(国税庁 産後ケア事業を一部委託した場合の消費税の取扱い)。新生児訪問など、産後ケア事業以外の委託を市町村から受けている場合は、非課税か課税かを委託元や税務署に確認しておきましょう。エステのように母体の回復とは目的が違うサービスも、産後ケアには含まれません。委託契約書の文言と、料金表のどのメニューがどちらに当たるかを、開業した年に一度整理しておきましょう。消費税の計算と勘定科目は、こちらの記事で解説しています。

消費税の免税点は課税売上だけで判定する
消費税の申告が必要かどうかは、原則として2年前の課税売上が1,000万円を超えるかで決まり、非課税の売上は数えません(e-Gov法令検索 消費税法9条)。前年1〜6月の課税売上と給与の支払額がともに1,000万円を超えた場合や、インボイス登録をした場合も申告が必要です(国税庁 No.6501 納税義務の免除)。たとえば、分娩費と委託の産後ケアで年1,200万円、母乳外来と講座で年300万円の売上があれば、判定に使うのは300万円です。
インボイスを求められるのは、企業の研修や法人からの講演依頼など、課税売上の相手が事業者の場合です。妊産婦さん本人は事業者ではないため、インボイスを求められることは通常ありません。登録して課税事業者になった場合は、令和8年分までは2割特例が使えます。令和9年分・10年分は、2年前の課税売上が1,000万円以下でインボイス登録をしている個人事業者なら3割特例が使えます。簡易課税を選ぶと、講座や相談などのサービスは第五種事業(みなし仕入率50%)、育児用品の物販は第二種事業(80%)です(国税庁 No.6505 簡易課税制度)。
個人事業税は助産師業が法定業種になく原則かからない
個人事業税がかかる法定業種(地方税法72条の2)に「助産師業」は入っていないため、助産師の仕事には原則として個人事業税はかかりません(東京都主税局 個人事業税)。医業や、あん摩・はり・きゅう・柔道整復などは法定業種に入っているので、同じ医療系の開業でも扱いが違います。
ただし、業種の認定は都道府県が事業の中身で行います。育児用品の物販は物品販売業に当たるほか、講座や研修、コンサルティングの売上が大きくなった場合なども別の業種と判断されることがあります。対象になっても、事業の所得が290万円(事業主控除)以下ならかかりません。助産所のある都道府県(事務所がなければ住所地)の税事務所に確認しておきましょう。
源泉徴収されるのは講演や原稿の報酬
妊産婦さんや市町村から受け取る助産・保健指導・産後ケアの報酬は、源泉徴収の対象ではありません。所得税法で源泉徴収の対象として決められた報酬に、助産師の報酬は入っていないためです。一方、企業や学校、市町村などから受け取る講演料や、両親学級・研修の講師料、原稿料は、10.21%(1回に100万円を超える部分は20.42%)が源泉徴収されることがあります(国税庁 源泉徴収のあらまし 令和8年版 第5章)。
源泉徴収された報酬は、引かれる前の金額を売上にし、引かれた税金は確定申告で差し引きます。
委託料や出産育児一時金は訪問や分娩をした年の売上にする
売上にするのは、お金が振り込まれた日ではなく、訪問やケア、分娩をした日です(e-Gov法令検索 所得税法36条)。12月に訪問した産後ケアの委託料が翌年1月に振り込まれる場合は、12月の売上として記録し、振り込まれるまでは未収として残しておきます。
出産育児一時金(原則50万円)の直接支払制度を使うと、分娩費のうち一時金の分は保険者から後日、助産所に振り込まれ、超えた分は家族から受け取ります。どちらも分娩をした日の売上にし、まだ入金されていない分は未収として記録しておくと、年をまたいでも数字がずれません(厚生労働省 出産育児一時金等について)。県の助産師会を通して委託を受け、分担金などが差し引かれて入金される場合は、契約の形で売上の金額が変わるので明細で確認しましょう。
会費や保険料は経費になり備品は金額で経費にする年が変わる
助産師会の会費、賠償責任保険の保険料、産後ケアなどの研修の受講料、乳房ケアや衛生用品などの消耗品、訪問の交通費は経費にできます。訪問に使う車や自転車、自宅の一室を助産所にしている場合の家賃や光熱費は、仕事で使った割合で按分します(国税庁 No.2210 必要経費)。

ベビースケールなどの備品は、10万円未満なら買った年の経費、10万円以上20万円未満なら3年に分けて経費にできます。青色申告なら、2026年4月以後に買った40万円未満のものは、合計300万円まで一度に経費にできます(国税庁 No.2100 減価償却のあらまし)。それ以上の医療機器は、種類や材質で分ける年数が変わるので、税務署や税理士に確認しましょう。開業前の準備にかかった費用の扱いは、こちらの記事で解説しています。

一方、自分や家族の出産・健診の費用、普段着や自分の食事代は経費にならない支出です。非常勤先で使う物を自分で買っても、給与からは自動的に給与所得控除が差し引かれるだけです。
開業初年の赤字は事業所得なら給与と差し引きできる
助産所の仕事が事業所得と認められれば、開業1年目の赤字を非常勤やパートの給与と差し引きでき、給与で引かれた税金が戻ることがあります。雑所得の赤字は、給与と差し引きできません(国税庁 No.1500 雑所得)。開業してすぐは、会費や保険料、備品の支払いが売上を上回ることも珍しくありません。
事業所得かどうかは、社会通念上事業と呼べる程度で行っているかで判断されます。取引を記録した帳簿を保存していない場合は、収入が300万円を超えて事業と認められる事実があるときを除き、雑所得になります(国税庁 所得税基本通達35-2)。赤字の年こそ帳簿をつけ、青色申告なら赤字を翌年以後3年間に繰り越せます。
家族の扶養に入っている人は、税金の扶養は令和8年分は合計所得62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)が基準です(国税庁 No.1191 配偶者控除・財務省 令和8年度税制改正の大綱)。社会保険の扶養は年収130万円未満が目安で、事業の収入をどう数えるかは加入している健康保険によって違います。
訪問の合間に確定申告を終わらせる方法
コツは、申告期にまとめてやろうとせず、訪問やケアが終わるたびに売上の種類と金額を記録し、研修費や消耗品のレシートはその日のうちに撮っておくことです。委託料や一時金が振り込まれたら、どの月の訪問や分娩の分かを明細で確かめる。消耗品の通販や交通費はカード連携で自動で取り込む。年末には、まだ振り込まれていない委託料と分娩費を書き出しておく。これだけで、申告期には確認して提出するだけになります。
無料トライアルで口座とカードを連携してみて、委託料や分娩費の入金、消耗品の支払いが自動で取り込まれるかを試してから決めるのが失敗しない選び方です。なお、自動連携やAIの仕訳結果をそのまま提出せず、最後にひととおり見直すのはどのアプリでも共通の基本です。
タックスナップは、妊産婦さんや市町村、助産師会からの入金と非常勤先の給与、研修費や消耗品の支払いを1つにまとめ、申告までスマホで終えられる設計です。訪問の待ち時間や移動中のスキマ時間だけで、申告の準備が回ります。

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「個人事業主・スマホ完結」に特化した確定申告アプリ
タックスナップは、日々の経費処理から確定申告書の作成・提出まで、個人事業主・フリーランスに必要な会計機能がすべてスマホで完結できるアプリです。
今までの会計ソフトは「パソコン操作」や「機能の多さ」を前提としたサービスが多かった一方で、タックスナップは「個人事業主・スマホ完結」に特化し、会計知識が全くない方でも、スキマ時間だけで確定申告が終わるように設計しています。
「初めての確定申告でも迷わずに提出できた」 「他の会計ソフトから乗り換えて、圧倒的にラクになった」 といった嬉しいレビューもいただいています。

App Store確定申告アプリランキング1位を獲得
ここ数年で、タックスナップの利用者は急拡大中。
2026年の確定申告期間(2026年2月16日〜3月16日)では、大手会計ソフトのアプリも含む確定申告アプリの中で、全期間にわたってApp Storeランキング1位を獲得しました。
(参照:Sensor TowerのApp Storeランキングデータ)

他会計ソフトの約4倍の経費処理スピード
意外に時間を取られてしまうのが、日々の経費処理です。 「気づいたら何十件も経費が溜まっていた」という時でも、タックスナップならあっという間に登録が完了します。
外部機関による比較調査では、タックスナップを使うと10分間で平均518件の経費を処理できることがわかっています。 他会計ソフトと比べて約4倍、手書きの約18倍、Excelの約40倍のスピードです。

出典:株式会社タックスナップ 「【比較調査】確定申告アプリ「タックスナップ」、同時間での経費処理件数が他会計ソフトと比較して約4倍を記録。」 (実査運営機関:株式会社アスマーク)
速さの秘訣は丸投げ仕分け
タックスナップの経費処理の速さの最大の理由は、「丸投げ仕分け」機能です。
銀行やカードの取引データが自動で反映されるだけでなく、それぞれの取引が経費かプライベートか、どの勘定科目が適しているのかをアプリが高精度で自動判定してくれます。
「丸投げ仕分け」機能を使えば1,000件の仕分けも最短3秒で完了するので、経費処理が驚くほど楽になります。

税理士監修の機能で、はじめての確定申告でも安心
「本当にこの内容で提出して大丈夫?」という不安を解消するために、税理士監修の「税務調査リスクチェック機能」があります。
あなたのデータをもとに、同じ職種の人の傾向と比べながら、税務調査が入りやすいかをアプリが診断します。
修正するべき内容も表示されるので、事前に修正し、安心して提出できます。

タックスナップは、確定申告をできるだけ簡単に、かつ安心して提出できるようにサポートするアプリです。 無料トライアルも行っているので、まずはその快適さを体験してみてください。
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まとめ
開業助産師の確定申告は、「病院に雇われて年末調整を受けているなら不要、助産所を開設して仕事を受けたら自分で申告」「分娩介助や委託の産後ケアは非課税、自主事業の母乳外来や講座は課税で、免税点は課税売上だけで数える」「委託料や一時金は訪問や分娩をした年の売上にし、開業1年目の赤字は給与と差し引けるか確かめる」の3点を押さえれば怖くありません。助産録を1件ずつ書くように、売上と経費も1件ずつ記録していけば、申告はきちんと形になります。

よくある質問
Q. 病院に勤める助産師も確定申告は必要ですか?
1か所に勤めて年末調整を受けているなら、原則不要です。休日にオンライン相談や講座の仕事を受けて、給与以外の所得が20万円を超えた場合は申告が必要です。
Q. 開業助産師は、いくらから申告が必要ですか?
令和8年分は、所得が基礎控除の104万円などの合計を超えたら必要です。所得は、売上から研修費や消耗品、交通費などの経費を引いた金額です。非常勤の給与もある人は、給与と合わせて申告します。
Q. 助産所の開設届と税務署の開業届は両方必要ですか?
両方必要です。助産所の開設届は開設後10日以内に所在地の都道府県知事(保健所を設置する市や特別区では市長・区長。窓口は保健所)へ、開業届は税務署へ出します。
Q. 出張だけで開業する場合も、助産所の届出は要りますか?
出張だけで仕事をする助産師も、住所を助産所とみなして届出の対象になります。手続きの窓口や添付書類は自治体によって違うので、保健所に確認しましょう。
Q. 分娩介助や妊婦健診の料金に消費税はかかりますか?
助産に当たるので非課税です。妊娠の検査、妊婦健診、分娩の介助、出産の日以後2か月以内の母体の回復検診と新生児の検診が含まれます。
Q. 市町村から委託された産後ケアの委託料に消費税はかかりますか?
母子保健法の産後ケア事業として委託を受けた場合は、委託料も利用者から受け取る利用料も非課税です。清掃など付随的な業務だけを受託した場合は課税になります。
Q. 自主事業の産後ケアや母乳外来の料金は課税ですか?
市町村の委託を受けずに行うサービスは、原則として課税です。出産の日以後2か月以内の母体の回復検診や新生児の検診に当たる部分は、非課税になる場合があります。
Q. 両親学級やオンライン講座の受講料は課税ですか?
助産にも委託の産後ケアにも当たらないため、課税売上です。講演料や原稿料、育児用品の物販も同じく課税です。
Q. 消費税の免税点は、非課税の売上も含めて判定しますか?
含めません。原則として、2年前の課税売上だけで、1,000万円を超えるかを判定します。分娩費や委託の産後ケアの売上が多くても、課税売上が1,000万円以下で、インボイス登録をしていなければ、原則として免税事業者のままです。
Q. インボイス登録は必要ですか?
登録は任意です。妊産婦さん本人は事業者ではないため、助産や母乳外来ではインボイスを求められることは通常ありません。企業の研修や法人の講演依頼が多い場合は、取引先から求められることがあります。
Q. 個人事業税はかかりますか?
助産師業は法定業種に入っていないため、原則としてかかりません。業種の認定は都道府県が行うので、講座や研修の売上が大きい場合などは税事務所に確認しましょう。
Q. 講演料から税金が引かれていました。
企業や学校、市町村などが払う講演料や講師料は、10.21%が源泉徴収されることがあります。引かれる前の金額を売上にし、引かれた税金は確定申告で差し引きます。
Q. 出産育児一時金の直接支払制度の入金は、いつの売上ですか?
分娩をした日の売上にし、入金がまだの分は未収として記録します。入金額と請求額に差があるかは、支払機関から届く明細で確かめましょう。
Q. 12月に訪問した産後ケアの委託料が、翌年に振り込まれます。
訪問をした12月の売上です。振り込まれるまでは未収として記録し、入金されたら未収を消します。
Q. 助産師会の会費や賠償責任保険料は経費になりますか?
助産所の仕事を続けるための支出なので、経費にできます。産後ケアなどの研修の受講料も、仕事に必要な知識を得るためのものなら経費です。
Q. ベビースケールは一度に経費にできますか?
10万円未満なら買った年の経費にできます。青色申告なら、2026年4月以後に買った40万円未満のものも一度に経費にできます。それ以上の医療機器の年数は、税務署や税理士に確認しましょう。
Q. 自宅の一室を助産所にしています。家賃は経費になりますか?
助産所として使う部屋の広さや時間の割合で按分した分は、経費にできます。光熱費や通信費も、仕事で使った割合で按分します。
Q. 訪問に使う車や自転車の費用は経費になりますか?
訪問のために使った分は経費にできます。私用と兼ねている場合は、走行距離や使った日数の割合で按分します。
Q. 開業1年目が赤字です。非常勤の給与と相殺できますか?
事業所得と認められれば相殺できますが、雑所得の赤字は給与と相殺できません。帳簿をつけて保存しておくことが、事業所得と判断される大きな材料になります。
Q. 開業届は出すべきですか?
助産所を開設して継続して仕事をするなら、開業届を出すのが原則です。青色申告承認申請書とセットで出せば、最大65万円の特別控除が使えるようになります。

Q. 今使っている会計ソフトからデータを移行できますか?
できます。たとえばタックスナップはfreee・マネーフォワード・弥生・PayPayからのデータ移行に対応しています。年初から新しいアプリで始めるか、申告前に前年分をまとめて移すのがスムーズです。



