平日は工房でろくろを挽き、週末は陶芸教室で生徒に教え、春と秋はクラフトフェアに出店する。ギャラリーやセレクトショップに器を預け、ネットショップでも販売する。陶芸家のお金は、会場で受け取る代金、委託先から手数料を引いて届く入金、教室の月謝と、入り方がばらばらです。電気窯やろくろのような設備に大きなお金がかかるのも、この仕事の特徴です。
確定申告アプリ(会計ソフト)選びは、器の販売と教室の売上、窯や土・釉薬の支払いを、窯焚きや教室の合間に記録して申告まで終えられるかで決まります。この記事では、窯を経費にする年の決まり方、委託販売の売上の考え方、窯出し前の作品の棚卸、販売と教室で違う消費税の区分といった陶芸家ならではの論点から、おすすめの4本を比較します。
この記事のポイント
- 勤めながら副業で器を売っているなら、給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要
- 電気窯やガス窯は運搬費や据付費を含めた金額で判定し、10万円以上なら原則として数年に分けて経費にする
- 青色申告の40万円未満の一括経費は事業所得の人だけで、副業の雑所得では使えない
- 委託販売はギャラリーやショップが売った日の売上で、年末に残った作品や素焼き済みの作品は棚卸する
- 器の販売と陶芸教室では、消費税の簡易課税の区分が違う(販売は第三種、教室は第五種)
- 迷ったら、器の売上も教室の月謝も窯や土の支払いも、窯焚きの待ち時間に記入したいならタックスナップ、工房を構えて人を雇うならfreee、複数の口座をまとめて管理するならマネーフォワード、パソコンでじっくりならやよいの青色申告
陶芸家に確定申告アプリは必要?
器や作品を継続して売って所得が出ているなら、専業でも副業でも確定申告が必要になることがあります。一方、陶芸教室や窯元に雇われて給与で働き、勤め先で年末調整を受けていて、器の販売などほかの収入がないなら、確定申告もアプリも原則として必要ありません。
| 働き方 | 確定申告の目安 |
|---|---|
| 陶芸教室や窯元に雇われて給与で働き、年末調整あり(器の販売はしていない) | 原則不要(年末調整で完結) |
| 会社員や教員として働きながら、副業で器を売ったり教室を開いたりしている | 給与以外の所得が20万円を超えたら必要 |
| 専業の陶芸家として、個展・クラフトフェア・委託販売・ネットで器を売っている | 所得が基礎控除などの合計(令和8年分の基礎控除は合計所得489万円以下で104万円)を超えたら必要 |
| カルチャーセンターの講師料や、企業向けの器のデザイン料を受け取っている | 源泉徴収されているので、所得が少なくても申告すれば税金が戻ることがある |
ここでいう所得は、受け取った売上の総額ではなく土や釉薬、焼成の電気代、委託先の手数料などの経費を引いた金額です。所得税の申告がいらない場合も、住民税の申告は別に必要になることがあります。アクセサリーや布小物など、窯を使わない作品を作って売る人は、こちらの記事が参考になります。

器の販売は事業所得か雑所得か
器の販売は、事業といえる規模で行っていれば事業所得、そうでなければ業務に係る雑所得になります(国税庁 所得税基本通達35-2)。事業かどうかは、社会通念上、事業と称するに至る程度で行っているかで判定します。会社員や教員が休日に器を売っている場合は、雑所得になりやすいと考えておきましょう。
この区別は、窯を買ったときの経費の扱いや青色申告の控除に直結します。同じ通達にある「300万円」は、取引を記録した帳簿を保存していない場合の取扱いで、売上が300万円以下なら必ず雑所得になるという意味ではありません。帳簿をつけておくことが、事業として認めてもらうための土台になります。
器を売るのに許可は要らないが食器の規格はある
陶芸家として器を作って売ること自体に、許可や資格は必要ありません。一方、食器として売る陶磁器には、食品衛生法で鉛とカドミウムが溶け出す量の規格があり、伝統的工芸品であっても規格に合わないものは販売できません(厚生労働省 器具・容器包装の規格基準の改正に関するQ&A)。美術的な価値のある絵皿や抹茶茶碗は、鉛を含む旨の注意書きを付けることを条件に例外が設けられています。なお、器具の規格の所管は令和6年4月から消費者庁です。
鉛を含む釉薬や絵具を使う場合は、とくに注意が必要です。陶芸教室の生徒が趣味として自分で使う器を作ることは禁止されていませんが、教室で作った器を販売するなら規格の対象になります。釉薬の溶出検査の要否や届出が必要かどうかは、器を売り始める前に保健所に確認しましょう。仕事ごとの許可と届出は、こちらの記事で一覧にしています。

青色申告65万円控除はアプリで取れる?
取れます。器の販売や教室を事業所得として申告する陶芸家は、開業届と青色申告承認申請書を出しておけば、最大65万円の控除が受けられます(雑所得の場合は青色申告特別控除の対象外です)。65万円控除には複式簿記の帳簿が必要ですが、確定申告アプリなら取引を入力するだけで自動で出来上がります。e-Taxで提出すれば控除額は55万円ではなく65万円になります。令和9年分からは、紙で提出すると控除は10万円になり、e-Taxでの提出が65万円の条件になります(財務省 令和8年度税制改正の大綱)。
税理士に頼むのとどちらがいい?
一人で器を作って売り、小さな教室を開いている程度なら、費用の面では確定申告アプリで十分です。販路がいくつあっても、1件ずつの売上と経費を記録していけば申告書は作れます。相場を比べてみます。
| 依頼方法 | 費用の目安(年間) |
|---|---|
| 税理士に記帳から丸ごと依頼 | 10〜20万円 |
| 税理士に申告書作成だけスポット依頼 | 5〜10万円 |
| 確定申告アプリ | 1〜3万円台 |
アプリなら年1〜3万円台で利用料は経費にできる
確定申告アプリの利用料は年間1〜3万円台で、器の販売や教室の収入を申告する陶芸家は全額をその年の経費にできます。土や釉薬、梱包材と同じく、仕事を回すための費用です。
税理士に頼んだほうがいいのはこんな場合
ガス窯や大型の電気窯を買って工房を建てる、教室の講師やアシスタントを雇う、売上が1,000万円に近づいてきた、法人化を考えているという場合は、税理士に相談する価値があります。設備の資産区分や消費税の事業区分、給与の源泉徴収など、判断することが一気に増えるためです。
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陶芸家が確定申告アプリを選ぶ4つの基準
陶芸家のアプリ選びは、①器の販売・委託販売・教室の売上を、収入の種類ごとに分けて記録できるか、②窯やろくろなどの設備と、土や釉薬などの材料の支払いを分けて記録できるか、③窯焚きと教室の合間に、スマホだけで申告まで終わるか、④窯の減価償却や作りかけの作品の扱いを質問できる窓口があるか、の4つで決まります。どれも「販路と収入の種類が多く、設備と在庫にお金が寝る」というこの仕事の構造から来る基準です。

器の販売・委託販売・教室の売上を、収入の種類ごとに分けて記録できるか
クラフトフェアや個展では会場で代金を受け取り、ギャラリーやショップの委託販売は手数料を引いてまとめて振り込まれます。教室の月謝は生徒から、ネットショップの売上は販売手数料を引いて入金されます。どの収入が器の販売で、どれが教室の月謝かを分けて記録できるかが最初の基準です。販売と教室では消費税の簡易課税の区分が違うので、この区分がすべての土台になります。
窯やろくろなどの設備と、土や釉薬などの材料の支払いを分けて記録できるか
電気窯やろくろ、土練機は、金額によって数年に分けて経費にする設備です。一方、土や釉薬、窯の電気代やガス代は、作品の材料や焼成の費用です。設備の購入と材料の支払いを分けて記録できるかを確認しましょう。年末に窯出し前の作品や残った土を数えるときも、材料の支払いがまとまっていると原価をすぐに確かめられます。
窯焚きと教室の合間に、スマホだけで申告まで終わるか
成形、素焼き、施釉、本焼きと、作品が仕上がるまでには時間がかかり、教室がある日はその準備にも追われます。申告期に領収書の整理で制作の時間が削られることもあります。記帳から申告書の作成、e-Taxでの提出までスマホだけで終わるかを確認しましょう。土で手が汚れる仕事なので、手を洗った合間の数分で進められることも大切です。
窯の減価償却や作りかけの作品の扱いを質問できる窓口があるか
「中古で買った窯は何年で経費にする?」「素焼きまで済んだ作品も棚卸に入れる?」「教室で他人の作品を焼いた代金はどう記録する?」。陶芸家の申告には、判断に迷う点が少なくありません。チャットやLINEで質問できる窓口があると、申告の直前で手が止まることを防げます。
アプリ選びでよくある失敗
よくある失敗は次の3つです。どれも「収入の種類ごとの売上と、設備・材料の支払いを分けて記録できるか」を基準に選べば避けられます。
- 委託先から手数料を引かれた入金額だけを売上にして、販売価格と手数料の記録が残らない
- 運搬費や据付費を含めると10万円を超える窯を、本体価格だけ見てその年の経費にしてしまう
- 年末に残った作品や素焼き済みの作品を棚卸せず、土や釉薬の代金まで全部その年の経費にしてしまう
陶芸家におすすめの確定申告アプリ4選
器の売上も教室の月謝も窯や土の支払いも、窯焚きの待ち時間に記入したいならタックスナップ、工房を構えて人を雇うならfreee、複数の口座やカードをまとめて管理するならマネーフォワード、パソコンでじっくり進めるならやよいの青色申告が有力です。まずは最安プラン同士の比較表で全体像をつかんでください。
| アプリ名 | スマホ完結度 | レシート撮影上限(最安プラン) | カード・口座連携の自動仕訳 | 月額(最安・年払い・税抜) |
|---|---|---|---|---|
| タックスナップ | ◎ 提出まで完結 | 無制限 | ◎ 連携明細をAIが自動仕訳・スワイプで確認するだけ | 980円・無料トライアルあり |
| freee | ○ | 月5枚 | ○ 自動で経理 | 980円・無料お試しあり |
| マネーフォワード | ○ | 月15件(超過は上位プランへ) | ◎ 連携できる金融サービスが豊富 | 900円・無料トライアルあり |
| やよいの青色申告 | △ パソコン前提 | 対応(上限の公表なし) | ○ スマート取引取込 | 初年度無料あり |
器の売上も教室の月謝も窯や土の支払いも、窯焚きの待ち時間に記入したいならタックスナップ
タックスナップはスマホ完結に特化した確定申告アプリで、クラフトフェアや委託販売で器を売り、教室も開いている陶芸家や、勤めながら副業で器を売る人に向いています。委託先やネットショップからの入金、教室の月謝、窯や土・釉薬の支払いを1つにまとめて、窯焚きの合間にも申告まで進められます。
おすすめポイント
- 連携した口座の入金から、ギャラリーやショップの委託販売の売上、ネットショップの売上、教室の月謝をスワイプで事業の売上に仕分けでき、勤め先の源泉徴収票とあわせて1つの申告書にまとめられる
- 連携したカードの明細は、特許を取得した「スワイプ仕分け」(右=経費・左=プライベート)で1件ずつ切り分け=土や釉薬の通販、梱包材の注文も、窯が冷めるのを待つ間に片づく(出典)
- 陶芸材料店やホームセンターのレシートはカメラで撮るだけ(読み取り枚数無制限・カンタンプラン以上)。「これは経費になる?」と迷ったら「みんなはどうしてる」機能で同じ職種の判断を確認できる
- スワイプと丸投げ仕分け(1,000件最短3秒・安心プラン以上)で、複式簿記の知識ゼロでも青色申告65万円控除に必要な帳簿と書類を作れる(白色申告の収支内訳書にも対応)
- マイナンバーカードがあれば、申告書の作成からe-Taxでの提出(電子申告)まですべてスマホだけで完結=クラフトフェアの出店や個展の在廊で手がふさがる日でも、待ち時間に申告を進められる
- 職種に合わせた職種特化モードで、税理士監修のAIが9割以上の精度で勘定科目を自動判定(出典)
- 消費税の申告にも最安のカンタンプランから対応=ギャラリーやショップに求められてインボイス登録をし、2割特例を使う場合も同じアプリで完結できる
- 最安のカンタンプランは年払いで月980円(税抜・年額11,760円)。2026年確定申告期間の全29日間、App Storeランキング確定申告アプリ内1位(Sensor Tower)で、無料トライアルから始められる
- 24時間のAIチャットに加え、LINEで専門スタッフに相談できる(カンタンプラン以上)=「クラフトフェアの出店料や宿泊費は経費になる?」という迷いも、搬出の後に聞ける
- 登録者40万人超の税理士YouTuber・ヒロ税理士が監修した税務調査リスクチェックと、追徴課税時に利用料を全額返金する保証(安心プラン)
こんな人に向いている
- クラフトフェア・委託販売・ネットと、販路をいくつも持っている
- 器の販売に加えて、陶芸教室や体験の収入がある
- 土や釉薬、梱包材のレシートがたまりやすい
- 教室と制作で手が離せず、スマホだけで申告を終えたい
工房を構えて人を雇うならfreee
freeeは○×の質問に答える形式で申告書を作れる、初心者向けの設計が特徴の会計ソフトです。工房を構えて教室の講師やアシスタントを雇う、飲食店や旅館に器を卸して請求書を出す取引が増えたなど、事業として広げたい人、将来は法人化も考えている人に向いています。
おすすめポイント
- ○×の質問に答えるだけで確定申告書を作成できる
- 請求書の発行や給与計算までシリーズでそろう
- 法人化したあとも法人向けfreee会計にデータを引き継げる
こんな人に向いている
- 教室の講師を雇う、工房を広げる予定がある
- 請求書を出す取引が多い
複数の口座やカードをまとめて管理したいならマネーフォワード
マネーフォワード クラウド確定申告は、連携できる金融機関の多さが強みです。給与の振込口座、委託先やネットショップの入金口座、土や釉薬の購入に使うカードと、お金の出入り口が多い人に向いています。
おすすめポイント
- 連携できる銀行・カード・電子マネーなど金融関連サービスが豊富
- 家計簿アプリ「マネーフォワード ME」と組み合わせて家計と事業をまとめて把握できる
- レポート機能で月ごとの収支を見える化できる
こんな人に向いている
- 売上の受け取り口座やカードが複数ある
- 生活費と陶芸の仕事の収支をまとめて管理したい
パソコンでじっくり進めたいならやよいの青色申告
やよいの青色申告 オンラインは、会計ソフトの老舗・弥生のクラウド版です。窯焚きのない日や展示会の後にパソコンの前に座る時間があり、帳簿や決算書を大きな画面で確認しながら進めたい人に向いています。
おすすめポイント
- セルフプランは初年度無料で始められる
- 画面の大きいパソコンで決算書までじっくり作り込める
- 老舗ならではのサポート体制(プランにより電話・チャット)
こんな人に向いている
- 帳簿や決算書はパソコンでまとめて進めたい
- まず無料で1年試したい
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陶芸家の確定申告で注意したいポイント
陶芸家の申告でつまずきやすいのは、窯やろくろを経費にする年・中古の窯と償却資産の申告・委託販売の売上・窯出し前の作品の棚卸・電気代や工房の経費・消費税と個人事業税の区分・副業と扶養の7つです。順に整理します。
窯やろくろは運搬費や据付費を含めた金額で経費にする年が決まる
窯やろくろは、本体の代金に運搬費や搬入費、据付けの費用を足した金額で判定し、10万円未満なら買った年の経費、10万円以上20万円未満なら3年に分けて経費にできます(所得税法施行令第126条・第138条・第139条)。本体が10万円未満でも、運搬費と据付費を足すと10万円を超えることがあります。
青色申告で事業所得の人なら、2026年4月以後に買った40万円未満のものは、合計300万円まで一度に経費にできます(国税庁 No.2100 減価償却のあらまし)。ただしこの特例は事業所得などに限られ、副業の雑所得では使えません。これらに当たらない金額の窯は、数年に分けて経費にします。焼成に直接使う窯は「機械及び装置」に当たり、窯業用の設備なら9年が原則です(国税庁 耐用年数通達1-3-2・減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第二)。

小型の電気窯や電動ろくろを、窯業用の設備として扱うか、器具や備品として扱うかを個別に示した国税庁の文書は見当たりません。200Vの電源を引く配線工事も、窯と一体の据付けか、建物の設備かで扱いが変わる場合があります。金額の大きい窯を買うときは、設置工事の内容も含めて、買う前に税務署か税理士に確認しておくと安心です。開業前に窯や道具をそろえた場合の扱いは、こちらの記事で解説しています。

中古の窯は短い年数で経費にでき、窯は償却資産の申告の対象になる
中古の窯は、使われた年数に応じて短い耐用年数で経費にできます。9年の設備で耐用年数をすべて過ぎた窯なら、9年の20%で1.8年となり、2年未満は2年とするので2年です。耐用年数の一部が過ぎた窯は、残りの年数に、過ぎた年数の20%を足した年数で計算します(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 第3条)。ただし、使い始める前の修理などに中古の購入価格の50%を超える金額をかけた場合は、この計算は使えません。
窯やろくろなど事業で使う設備は、固定資産税の対象になる「償却資産」に当たり、毎年1月1日時点の資産を1月31日までに市区町村(東京23区は都税事務所)へ申告する決まりがあります(地方税法 第383条)。課税標準額の合計が150万円未満なら固定資産税はかかりません。10万円未満で全額経費にしたものと3年で経費にしたものは対象外ですが、青色申告の40万円未満の特例で一度に経費にした窯は対象に残ります。
委託販売はギャラリーやショップが売った日の売上にする
ギャラリーやセレクトショップの委託販売は、委託先が器を売った日の年の売上です(国税庁 所得税基本通達36-8)。入金日ではないので、12月に売れて翌年1月に振り込まれた器はその年の売上になります。売上計算書が1か月を超えない間隔で届き、継続して届いた日で計上しているなら、届いた日でもかまいません。
金額は、販売価格の総額を売上にし、委託先の手数料は経費として記録しておくのが確実です。消費税では、すべての委託販売で手数料を引いた後の金額を売上にそろえる処理も認められています(国税庁 消費税法基本通達10-1-12)。ショップが器を買い取る卸の場合は、卸値そのものが売上で、手数料の考え方はありません。委託か買取かは契約書で確かめておきましょう。
窯出し前の作品や残った土も年末に棚卸する
年末に売れ残っている器だけでなく、素焼きまで済んで本焼きを待つ作品や、使い切っていない土や釉薬も棚卸資産で、残った分の費用は翌年に持ち越します(所得税法施行令第3条)。委託先に預けたまま年を越した作品も、売れるまでは自分の在庫として数えておきましょう。梱包材のように毎年同じくらい買って使うものは、買った年の経費にしてかまいません(国税庁 所得税基本通達37-30の3)。
評価は、土や釉薬、焼成の電気代やガス代など、その作品のために払った費用が中心です。自分の作業時間を原価に含めるかを示した国税庁の文書は見当たらないので、迷うときは税務署に確認しましょう。一点ものの作品は個別法の届出をしておくと実態に合い、届出をしないと最終仕入原価法で評価します。同じ形で数多く作る日用の器は、個別法以外の方法を選びます。届出の期限は事業を始めた年の確定申告期限までです。
棚卸をゼロのまま申告を続け、税務調査で作りかけの作品まで数えられて、何年分もの在庫がまとめて計上された陶芸家の例もあります。窯出しが年をまたぐ12月は、とくに数え漏れが起きやすい時期です。
焼成の電気代や工房の費用は経費、生活と兼ねる分は分けられる分だけ
土や釉薬、絵具、焼成の電気代やガス代、梱包材、委託先やネットショップの手数料、クラフトフェアの出店料や交通費・宿泊費、搬入の運送費、個展のDMの印刷代は、器を作って売るための経費にできます。窯元や貸し窯に焼成を頼んだ代金や、窯を持たずに通う教室の利用料も経費です。
経費になるかどうかの線引きは、次のとおりです。
- 経費にできる:土や釉薬、焼成の電気代やガス代、梱包材、委託先の手数料、クラフトフェアの出店料
- 分けられる分だけ経費:自宅工房の家賃や電気代、私用と兼ねる車やスマホ(仕事で使う分を分けられる場合)
- 経費にならない:自分の食事、普段の服、同じ生計の家族に払う工房の家賃

自宅の一角を工房にしている場合は、仕事で使う部分が半分を超えるか、仕事の分をはっきり分けられる場合に、その分だけ経費になります(国税庁 所得税基本通達45-2)。電気窯は電気を多く使うので、窯専用の契約やメーターがあれば仕事の分をはっきり分けられます。家と共用なら、焼成の回数など説明できる基準で按分しましょう。自分の食事や普段の服、同じ生計の家族に払う工房の家賃は経費になりません。
消費税は販売と教室で区分が違い、個人事業税は都道府県が判断する
消費税の簡易課税を選ぶと、自分で作った器を売るのは第三種事業(みなし仕入率70%)、陶芸教室は第五種事業(みなし仕入率50%)です(国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分)。他人の作品を焼いて代金を受け取る仕事は第四種事業になる場合があり、一点ものの美術作品として売る陶芸を第三種と第五種のどちらにするかは国税庁の明示がありません。区分ごとに売上を分けて記録し、迷うものは税務署に確認しましょう。
| 収入の形 | 売上にする日 | 源泉徴収 | 消費税の簡易課税の区分 |
|---|---|---|---|
| 個展・クラフトフェア・ネットでの器の販売 | 器を引き渡した日 | 引かれない | 第三種(70%)。美術作品として売る一点ものは税務署に確認 |
| ギャラリー・ショップの委託販売 | 委託先が売った日 | 引かれない | 第三種(70%)。美術作品として売る一点ものは税務署に確認 |
| 陶芸教室・体験の受講料 | レッスンをした日 | 個人の生徒からは引かれない | 第五種(50%) |
| 他人の作品の焼成を引き受けた代金 | 焼き上げて引き渡した日 | 引かれない | 第四種(60%)の場合があるので税務署に確認 |
| カルチャーセンターの講師料・企業向けの器のデザイン料 | 仕事を終えた日 | 10.21%が引かれる(1回100万円超の部分は20.42%) | 第五種(50%)が目安 |
消費税の申告が必要になるのは、原則として2年前の課税売上が1,000万円を超えた年か、インボイス登録をした場合です。インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった場合は、令和8年分までは2割特例、令和9年分・10年分は3割特例が使えます。
個人事業税の法定業種に「陶芸」の名前はなく、課税されるかどうかは都道府県が仕事の中身で判断します。東京都の個人事業税課税事務提要(主税局長通達)は、デザイン業と芸術活動を分ける目安として、美術展や工芸展への出品を前提とする陶芸作品などを、芸術活動の所産として扱ってよいとしています(東京都行政不服審査会 答申(事務提要を引用))。日用の器の制作販売や陶芸教室は課税される可能性があり、課税される場合は、青色申告特別控除を差し引く前の事業の所得から年290万円を差し引いた残りに税率5%がかかります(東京都主税局 個人事業税)。
副業は「20万円」と住民税、扶養のラインを確認する
会社員や教員として働きながら器を売っているなら、給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は必要です。副業の雑所得では、青色申告の控除や40万円未満の一括経費が使えず、赤字を給与と差し引くこともできません。勤め先の就業規則で副業が認められているかも、事前に確かめておきましょう。
家族の扶養に入っている人は、税金の扶養は令和8年分は合計所得62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)が基準です(国税庁 No.1191 配偶者控除・財務省 令和8年度税制改正の大綱)。個展で器がまとまって売れた年は、所得がこのラインを超えることがあります。社会保険の扶養は年収130万円未満が目安で、事業の収入をどう数えるかは加入している健康保険によって違います。

窯焚きと教室の合間に確定申告を終わらせる方法
コツは、申告期にまとめてやろうとせず、出店や教室のたびに売上を記録し、土や釉薬のレシートはその日のうちに撮っておくことです。委託先から売上計算書が届いたら、販売価格と手数料を分けて記録する。窯や道具を買ったら、運搬費や据付費の領収書も一緒に残す。12月の最後の窯出しの後に、売れ残りと素焼き済みの作品、残った土を数えておく。これだけで、申告期には確認して提出するだけになります。
無料トライアルで口座とカードを連携してみて、委託先からの入金や材料の支払いが自動で取り込まれるかを試してから決めるのが失敗しない選び方です。なお、自動連携やAIの仕訳結果をそのまま提出せず、最後にひととおり見直すのはどのアプリでも共通の基本です。
タックスナップは、器の販売と教室の売上、窯や土・釉薬の支払いを1つにまとめ、申告までスマホで終えられる設計です。窯焚きの待ち時間や教室の後のスキマ時間だけで、申告の準備が回ります。

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「個人事業主・スマホ完結」に特化した確定申告アプリ
タックスナップは、日々の経費処理から確定申告書の作成・提出まで、個人事業主・フリーランスに必要な会計機能がすべてスマホで完結できるアプリです。
今までの会計ソフトは「パソコン操作」や「機能の多さ」を前提としたサービスが多かった一方で、タックスナップは「個人事業主・スマホ完結」に特化し、会計知識が全くない方でも、スキマ時間だけで確定申告が終わるように設計しています。
「初めての確定申告でも迷わずに提出できた」 「他の会計ソフトから乗り換えて、圧倒的にラクになった」 といった嬉しいレビューもいただいています。

App Store確定申告アプリランキング1位を獲得
ここ数年で、タックスナップの利用者は急拡大中。
2026年の確定申告期間(2026年2月16日〜3月16日)では、大手会計ソフトのアプリも含む確定申告アプリの中で、全期間にわたってApp Storeランキング1位を獲得しました。
(参照:Sensor TowerのApp Storeランキングデータ)

他会計ソフトの約4倍の経費処理スピード
意外に時間を取られてしまうのが、日々の経費処理です。 「気づいたら何十件も経費が溜まっていた」という時でも、タックスナップならあっという間に登録が完了します。
外部機関による比較調査では、タックスナップを使うと10分間で平均518件の経費を処理できることがわかっています。 他会計ソフトと比べて約4倍、手書きの約18倍、Excelの約40倍のスピードです。

出典:株式会社タックスナップ 「【比較調査】確定申告アプリ「タックスナップ」、同時間での経費処理件数が他会計ソフトと比較して約4倍を記録。」 (実査運営機関:株式会社アスマーク)
速さの秘訣は丸投げ仕分け
タックスナップの経費処理の速さの最大の理由は、「丸投げ仕分け」機能です。
銀行やカードの取引データが自動で反映されるだけでなく、それぞれの取引が経費かプライベートか、どの勘定科目が適しているのかをアプリが高精度で自動判定してくれます。
「丸投げ仕分け」機能を使えば1,000件の仕分けも最短3秒で完了するので、経費処理が驚くほど楽になります。

税理士監修の機能で、はじめての確定申告でも安心
「本当にこの内容で提出して大丈夫?」という不安を解消するために、税理士監修の「税務調査リスクチェック機能」があります。
あなたのデータをもとに、同じ職種の人の傾向と比べながら、税務調査が入りやすいかをアプリが診断します。
修正するべき内容も表示されるので、事前に修正し、安心して提出できます。

タックスナップは、確定申告をできるだけ簡単に、かつ安心して提出できるようにサポートするアプリです。 無料トライアルも行っているので、まずはその快適さを体験してみてください。
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まとめ
陶芸家の確定申告は、「窯やろくろは運搬費や据付費を含めた金額で判定し、40万円未満の一括経費は青色の事業所得だけ」「委託販売は委託先が売った日の売上で、販売価格と手数料を分けて残す」「年末には売れ残りと窯出し前の作品、残った土を棚卸する」の3点を押さえれば怖くありません。土を練って一つずつ器を形にするように、売上と経費も1件ずつ記録していけば、申告はきちんと形になります。

よくある質問
Q. 会社員をしながら週末に器を売っています。確定申告は必要ですか?
給与以外の所得が20万円を超えたら必要です。所得は、器の売上から土や釉薬、委託先の手数料などの経費を引いた金額です。20万円以下でも住民税の申告は必要です。
Q. 専業の陶芸家は、いくらから申告が必要ですか?
令和8年分は、所得が基礎控除の104万円などの合計を超えたら必要です。カルチャーセンターの講師料などで源泉徴収されている人は、所得が少なくても申告すれば税金が戻ることがあります。
Q. 器の販売は事業所得ですか、雑所得ですか?
社会通念上、事業といえる程度で行っているかどうかで決まります。帳簿を保存していないと、収入が300万円を超えて事業の実態がある場合を除き、雑所得になります。
Q. 電気窯は買った年に全部経費にできますか?
運搬費や据付費を含めて10万円未満なら、買った年の経費にできます。10万円以上20万円未満なら3年に分けて経費にでき、青色申告の事業所得なら2026年4月以後に買った40万円未満のものも一度に経費にできます。
Q. 窯の設置工事費はどう扱いますか?
窯を使えるようにするための据付けの費用は、窯の取得価額に含めます。建物側に200Vの配線を引く工事は、建物の設備として別に扱う場合があるので、工事の内容を税理士か税務署に確認しましょう。
Q. 窯は何年で経費にしますか?
焼成に直接使う窯は「機械及び装置」に当たり、窯業用の設備として9年が原則です。主に陶芸教室で使う窯は、教育業用の設備として別の年数になる場合があります。小型の電気窯の扱いを個別に示した文書は見当たらないので、迷うときは税務署に確認しましょう。
Q. 中古の窯を買いました。何年で経費にしますか?
窯業用の設備(9年)として扱う窯で、耐用年数をすべて過ぎていれば2年で経費にできます。一部が過ぎた窯は、残りの年数に過ぎた年数の20%を足した年数で計算します。
Q. 窯に固定資産税はかかりますか?
事業で使う窯は償却資産に当たり、1月31日までに市区町村(東京23区は都税事務所)へ申告する決まりがあります。課税標準額の合計が150万円未満なら固定資産税はかかりません。
Q. 副業でも40万円未満の窯を一度に経費にできますか?
できません。40万円未満の一括経費は青色申告の事業所得などに限られ、副業の雑所得では使えません。10万円未満の全額経費と、20万円未満の3年に分けて経費にする方法は、雑所得でも使えます。
Q. ギャラリーに預けた器が12月に売れ、入金は翌年1月です。いつの売上ですか?
委託先が売った日の年の売上です。入金日ではないので、年末に売れた器は売上計算書で確かめて、その年の売上に入れましょう。
Q. 委託販売で手数料を引かれて入金されました。売上はいくらですか?
販売価格の総額を売上にし、手数料は経費として記録しておくのが確実です。消費税では、すべての委託販売で手数料を引いた後の金額にそろえる処理も認められています。
Q. 素焼きまで済んだ作品も棚卸に入れますか?
作りかけの作品も棚卸資産なので、年末に残っていれば棚卸に入れます。その作品のために払った土や釉薬、焼成の電気代などをもとに評価します。
Q. 土や釉薬は買った年の経費にできますか?
使った分はその年の経費ですが、年末に残っている土や釉薬は棚卸に含めます。土は作品の主な材料なので、まとめ買いした分が残っていれば翌年に持ち越します。
Q. 自宅の電気代はどこまで経費になりますか?
窯専用の契約やメーターがあれば、その分は経費にできます。家と共用なら、焼成の回数など説明できる基準で、仕事の分を按分します。
Q. 作った器を家で使ったり、人にあげたりしたら?
販売用に作った器を自分で使ったり人に贈ったりした分は、売ったものとして売上に入れます(国税庁 No.2200 収入金額とその計算)。金額は通常の販売価格が原則ですが、原価以上で、かつ販売価格のおおむね70%以上の金額で帳簿に記録していれば認められます(国税庁 所得税基本通達39-2)。
Q. 陶芸教室の月謝と器の売上は分けて記録すべきですか?
分けて記録しましょう。消費税の簡易課税では、器の販売が第三種、教室が第五種と区分が違い、個人事業税の判断も分かれることがあります。
Q. 他人の作品を自分の窯で焼いて代金をもらいました。
焼成の代金も売上になります。消費税の簡易課税では第四種事業になる場合があり、教室の一環として受け取る場合は扱いが変わることがあるので、税務署に確認しましょう。
Q. 窯元から材料を受け取って、絵付けを請け負っています。
材料の提供を受けて委託された仕事なら、家内労働者等の必要経費の特例を使える場合があります。令和8年分は、実際の経費が少なくても最大69万円を差し引けます(国税庁 No.1810 家内労働者等の必要経費の特例)。給与の収入が69万円以上ある人は、この特例は使えません。
Q. 個人事業税はかかりますか?
法定業種に「陶芸」の名前はなく、課税されるかどうかは都道府県が判断します。日用の器の制作販売や陶芸教室は課税される可能性があり、課税される場合は、青色申告特別控除を差し引く前の事業の所得から年290万円を差し引いた残りに税率5%がかかります。
Q. 開業届は出すべきですか?
陶芸家として継続して器を売るなら、開業届を出すのが原則です。青色申告承認申請書とセットで出せば、最大65万円の特別控除が使えるようになります。

Q. 今使っている会計ソフトからデータを移行できますか?
できます。たとえばタックスナップはfreee・マネーフォワード・弥生・PayPayからのデータ移行に対応しています。年初から新しいアプリで始めるか、申告前に前年分をまとめて移すのがスムーズです。



