個人事業主である一人親方は、公的医療保険に必ず加入しなければなりません。建設業界には「建設国保」という業界団体型の健康保険があり、市町村の国民健康保険（以下、国保）と比較してどちらが有利かが悩みどころです。収入や家族構成によって保険料が逆転するケースもあるため、本記事でポイントを整理し、最適な選択に役立ててください。
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一人親方は健康保険に加入する必要がある
健康保険法・国民健康保険法では、個人事業主や無職の人を含むすべての国民に公的医療保険への加入を義務づけています。建設現場で独立して働く一人親方も例外ではなく、国保か業界別国保のいずれかに加入しなければ医療費の自己負担が原則10割となり、万一のときに経済的リスクが大きくなります。
一人親方が加入できる健康保険3選
国民健康保険（国保）
市区町村が運営し、保険料は前年所得や世帯人数に応じて変動します。所得が低いと軽減措置を受けられますが、所得が増えると保険料も急増するのが難点です。
国民健康保険組合（建設国保）
全国の建設業従事者を対象とする組合形式の健康保険です。保険料は所得ではなく年齢と被保険者数で決まるため、同じ世帯構成なら収入が高くても保険料は一定です。補助金を受けているため給付内容も手厚い傾向があります。
後期高齢者医療制度
75歳以上になると自動的に後期高齢者医療制度へ移行します。現役世代の一人親方は該当しませんが、家族が高齢の場合には世帯全体の保険料を試算するうえで理解しておく必要があります。
一人親方が建設国保に加入するメリットとは
補償内容の充実
建設国保は業界団体が独自に付加給付を用意しており、入院日額上乗せ給付、出産一時金の増額、人間ドック補助など市町村国保より手厚いことが多いです。
保険料が一定
所得の多寡にかかわらず、保険料は年齢区分と家族人数で決定されます。高収入でも保険料が跳ね上がらない点は大きな利点です。たとえば2025年度の目安では、40代の一人親方（本人のみ）で月額約2万円、年間約24万円という試算例があります。
その他
労災保険の「特別加入」や退職金共済とセットで手続きできる組合もあり、福利厚生をワンストップで整えられるメリットも見逃せません。
一人親方が建設国保に加入するデメリットとは
加入手続きが面倒
加入には建設業であることの証明（請負契約書や発注書の写し）、所得証明、組合推薦書など多くの書類が必要で、審査が通るまで時間がかかります。
手続き方法とは？
①組合窓口で申請書を受領
②必要書類を準備し仮申し込み
③審査通過後に初回保険料を納付
④被保険者証が交付される――という流れが一般的です。
保険料が一定であることがデメリットになる場合も
低所得世帯や扶養家族が多い世帯では、所得比例型の国保より負担が高くなることがあります。また、建設業を離れた時点で資格を失うため、転業・廃業時は国保への切り替え手続きが必要です。
その他
組合によっては地域外現場での長期作業や海外出張時に制限がかかるケースがあるため、事前に約款を確認しましょう。
国保と建設国保の違いとは？
| 比較項目 | 国保 | 建設国保 |
| 保険料算定 | 所得＋資産＋人数で変動 | 年齢・人数で一律 |
| 付加給付 | 原則なし（自治体差あり） | 入院・出産・健診補助が充実 |
| 加入条件 | 原則誰でも可 | 建設業従事者、従業員5人未満など制限あり |
| 手続き | 市区町村窓口で即日可 | 書類審査あり、1〜2週間程度 |
よくある間違いと注意点
建設国保に入れば「どんな世帯でも国保より安い」と思い込んでしまう方が多いのですが、実際には所得が少ない、または扶養家族が多い世帯では、市町村国保の軽減措置を利用したほうが保険料を抑えられるケースが少なくありません。加入時には必ず両制度の年間保険料を比較し、世帯構成の変化も踏まえて試算しましょう。
もう一つありがちな失敗は、家族を建設国保の扶養に入れ忘れることです。扶養追加は手続きが煩雑なうえ、遡って保険料を請求される場合もあるため、開業や結婚・出産のタイミングで早めに届け出ることが肝心です。さらに、廃業や職種変更の際に資格喪失の届出を怠ると、無保険期間が生じたり、後から国保へ切り替える際に二重払いが発生したりするリスクがあります。建設国保を脱退する可能性がある場合は、転業・廃業日を含む月内に市区町村で国保加入の手続きを済ませ、連続して保険証が使える状態を保ってください
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まとめ
建設国保は「所得が高く家族が少ない」一人親方にとって保険料が割安で、付加給付も魅力的です。一方、手続きの煩雑さと低所得世帯では保険料が割高になる点がデメリットとなり得ます。国保と建設国保の違いを理解し、世帯の収入・家族構成・将来の事業計画を踏まえて選択することが重要です。日々の帳簿付けや確定申告はタックスナップを活用し、保険料と税負担を俯瞰しながら賢く資金管理を行いましょう。
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よくある質問
健康保険以外に一人親方が加入すべき保険とは
業務災害に備える「一人親方労災保険」や所得補償保険、工具の盗難・破損をカバーする動産総合保険などが代表的です。
お得なのは国保と建設国保どっち？
収入が高く扶養家族が少ない場合は建設国保、収入が低いまたは扶養が多い場合は国保が有利になる傾向があります。具体的には市町村の保険料試算サービスと建設国保のシミュレーションを比較し、年間保険料と給付内容を総合して判断してください。
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