インボイス制度が導入され、仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の管理が重要視されています。その一方、帳簿に何をどう記載すればいいか迷う方も少なくありません。今回はインボイス制度下での帳簿の書き方や保存時の注意点をまとめました。制度を正しく理解して、スムーズに対応を進めましょう。
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【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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1. インボイス制度と帳簿の関係とは
仕入税額控除に必要な書類 インボイスだけでなく帳簿も欠かせない
インボイス制度(適格請求書保存方式)では、取引先が発行したインボイスを受け取り保存しないと仕入税額控除が受けられなくなります。加えて、帳簿にも詳細を記載し、インボイスと照合できる状態にすることが必要です。つまり、インボイスの原本や電子データを保管するだけでは不十分で、帳簿への正しい記載がポイントとなります。
帳簿の記載内容は取引日時や取引先名、金額、税率区分などをインボイスと一致させる形で整理し、後日の税務調査で指摘を受けないよう備えておきましょう。
2. インボイス制度で求められる帳簿の記載事項
消費税率ごとに合計額を分けて書くことが基本 取引先や日付などの情報も必須
インボイスをもとに帳簿を記載する際は、次のような項目が求められる場合があります。
- 取引の年月日
実際に商品やサービスのやり取りが行われたタイミングを正確に記入します。 - 取引先の名称・氏名
インボイスに記載された適格請求書発行事業者の名称や登録番号と一致させる必要があります。 - 品目やサービス内容
どのような商材や業務に対する取引だったかを書きます。 - 取引金額・税率・消費税額
一番重要なのがここです。消費税の税率区分ごとに金額を分け、税抜き・消費税額を明確に区別するよう記載します。 - 合計金額
複数の取引をまとめる場合は、その日や一定期間分の合計額をまとめて書くことが多いです。
消費税率は標準税率(10%)や軽減税率(8%)などがあり、取引内容によって異なるため、ミスがないように注意を払いながら帳簿に反映させましょう。
3. 帳簿だけで保存が認められるケースと特例
3万円未満など、一部の場合は帳簿のみで仕入税額控除が可能
インボイス制度では通常、仕入税額控除を行うにはインボイス(適格請求書)と帳簿の両方が必要です。ただし、特例として「帳簿のみの保存」で控除が認められるケースがあります。例えば、公共交通機関の運賃や3万円未満の取引などが対象となる場合が代表的です。
- 公共交通機関特例
バスや電車、タクシーなど公共交通機関の運賃で一定額未満の場合、帳簿への記載のみでOKです。 - 自動販売機などの特例
自販機で購入した際に領収書が発行されないケースでも、帳簿のみの保存で済むことがあります。 - 3万円未満の取引
一部条件を満たすと、必ずしもインボイスを保存しなくても仕入税額控除が認められる特例が存在します。帳簿の記載事項はしっかり満たすことが前提です。
これらの特例を活用する際は、帳簿の記載内容(相手先、日付、金額、税率など)をしっかり満たしていないと控除が否認される恐れがあるため、細心の注意が必要です。
4. インボイス対応の帳簿記載例
売上帳・仕入帳・経費帳など科目ごとの書き方を具体的に見る
実際に帳簿へどのように書き込むのか例を示しましょう。インボイス制度下では、税率区分ごとに合計金額を明示する形が推奨されます。
- 売上帳の場合
| 日付 | 取引先(登録番号) | 品目 | 税抜金額(10%) | 税額(10%) | 税抜金額(8%) | 税額(8%) | 合計(税抜) | 合計税額 |
各取引ごとに、このような形で記入します。取引先のインボイス登録番号を載せると後からも確認が容易です。 - 仕入帳の場合
| 日付 | 仕入先(登録番号) | 品目 | 税抜金額(10%) | 税額(10%) | 税抜金額(8%) | 税額(8%) | 合計(税抜) | 合計税額 |
インボイスに記載された税率別の取引金額をそのまま集計し、帳簿に転記します。 - 経費帳の場合
交通費や通信費など、8%や10%の税率が混在する可能性があります。科目別の列を設けつつ、税率ごとの金額を記載すると便利です。
税務調査で「インボイスの情報と帳簿が一致しているか」が確認されるため、インボイスの内容と同じ登録番号・金額・税率を正確に反映してください。
5. 電子保存の要件と電子帳簿保存法への対応
真実性と可視性を確保したシステム管理が必須
紙の請求書や領収書を電子化したり、最初から電子データとしてやり取りしているインボイスを保存する場合には、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。例えば、以下のポイントが代表的です。
- タイムスタンプの付与や改ざん防止策
データを保存した日時や内容が後から変えられないようにする措置が求められます。 - 検索性の確保
日付や取引先名、金額などで容易に検索できる仕組みを用意すること。 - 訂正・削除履歴の保持
万一の修正があった場合、修正の痕跡が残らなければなりません。
2024年1月からは電子取引データの電子保存が義務化されるので、インボイス情報も紙での保管だけでは対応が難しくなります。会計ソフトなどのシステム導入を検討し、早めに準備するのがおすすめです。
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まとめ
インボイス制度が始まり、帳簿での記載事項が従来よりも詳細になりました。特に消費税率別の金額や取引先の登録番号を記入する必要があるなど、作業量が増える場面も想定されます。ただし、インボイスを正しく受領し、帳簿に反映することで仕入税額控除を確実に受けられるメリットも大きいです。
特例として帳簿のみでOKなケースや、電子帳簿保存法への対応など、カバーすべき範囲は広がっています。これまで紙での管理が主流だった事業者も、早めに会計ソフトやクラウドシステムを導入して電子化を進めるとよいでしょう。きちんとルールを把握していれば、インボイス対応は決して難しくありません。正しい記帳と保存を実践して、安心して制度へ対応しましょう。
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よくある質問
Q1: インボイス制度で紙の領収書がもらえない場合、どうやって帳簿に記載すればいいでしょうか?
電子データとして受領したインボイス(PDFなど)を保存し、その情報を帳簿に転記します。対応する消費税率や登録番号などの必要項目を正確に記入し、電子帳簿保存法の要件を守ってデータを保管してください。
Q2: インボイスで適格請求書をもらわないと帳簿に書けませんか?
インボイス自体は仕入税額控除を受ける際の要件です。取引の実態があれば帳簿には記入しますが、インボイスがない取引では仕入税額控除ができない可能性があります。免税事業者からの仕入れなど、例外や特例対象取引かどうかチェックすることが大切です。
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