フリーランスや個人事業主が安定した収入を求めて派遣契約を検討するケースが増えています。ただし、派遣社員のような働き方と個人事業主の契約形式は大きく異なる点が多いため、その違いを理解することが大切です。今回は、個人事業主が派遣契約を結ぶメリット・デメリットや、法的リスク、さらに成功させるためのコツをご紹介します。
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【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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1. 個人事業主と派遣契約とはどういうこと?
フリーランスが派遣先と契約し、業務を行う形態 会社員の派遣と異なる扱いに注意
派遣といえば一般的に「派遣社員」が思い浮かびますが、個人事業主であっても派遣契約のような形で仕事をする事例があります。とはいえ、会社員としての雇用契約ではなく、あくまで個人事業主として契約を結び、派遣先企業の業務を請け負う形になります。
多くの場合、派遣会社と「業務委託契約」を結んで実質的に派遣先へ派遣されるパターンが見られます。しかし、労働基準法上は雇用関係なのか委託関係なのかが問題になりやすく、実態が雇用に近いなら「偽装請負」と見なされる危険もある点に注意が必要です。法人化や個人事業としての独立性が明確に保たれているかが重要になります。

2. 個人事業主が派遣契約をするメリット
安定収入の確保や社会保険加入など 多角的にメリットを得られる可能性
個人事業主があえて派遣契約を利用するメリットは以下のとおりです。
- 安定した収入源
完全フリーランスだと収入が不安定になりがちですが、一定期間の派遣契約なら月々の報酬が見込みやすいです。副業や複業として並行すれば、キャッシュフローの安定に役立ちます。 - 知識やノウハウの吸収
派遣先企業で働くことで、新たなスキルやビジネスの進め方を学べる場合があります。個人事業にも活かせる実践的なノウハウを習得するチャンスです。 - 人脈の拡大
同僚や取引先との交流を通じてビジネスパートナーが広がります。フリーでのプロジェクト獲得につながるなど、今後の事業発展にも好影響を及ぼす可能性があります。 - 社会保険への加入の可能性
雇用保険や健康保険などに派遣先を経由して加入できるケースもあります。ただし、業務委託契約扱いの場合は対象外になることが多いため、契約形態を確認する必要があります。

3. 個人事業主が派遣契約で感じるデメリット
時間的制約や事業拡大の妨げなど 自由度が下がる点に要注意
一方、派遣契約を活用することによっていくつかのデメリットも生じます。
- 時間と体力の制約
派遣先の就業時間が定められている場合、フリーランスとしての本来業務に割ける時間が減少し、自身の事業進行が遅れるリスクがあります。 - 雇用とみなされるリスク(偽装請負問題)
派遣先の指揮命令に従う形式になってしまうと、実質的に「雇用関係」があると見なされるケースがあり、法的トラブルに発展するかもしれません。 - 収入上限が固定されやすい
一定額の月給や時給で働く形になると、個人事業の特徴である「収入の伸びしろ」が限定的になります。スケジュール管理がうまくいかなければ、本業が思うように成長できない場合も。 - 職場環境への順応が必要
派遣先の社内ルールや文化に適応しなければならず、求められる対応が会社員に近いケースがあります。自由度や裁量が低くなる可能性があるため、個人事業主としての独立性を重視するなら要検討です。
4. 個人事業主と派遣契約の適法性と注意点
偽装請負に注意 雇用に近い実態なら労働法上の問題が生じる
派遣法や労働基準法では、雇用形態と業務委託形態を明確に区別しています。個人事業主が派遣会社を通じて企業に派遣される場合、以下に気を付けましょう。
- 実態が指揮命令下にあるか
勤務時間や業務内容を細かく会社に指示されているなら、雇用関係と見なされる可能性が高いです。業務委託だと自らの裁量で作業を進める自由度が本来あるはずです。 - 労災や社会保険の扱い
偽装請負が認定されると、未払の社会保険料や労災補償の問題などが発生します。安全配慮義務も含め、誰が責任を負うのか契約時に確認が必要です。 - 契約書で明確化
雇用契約なのか業務委託なのか、あるいは派遣契約なのかを明文化することが重要です。あいまいな契約書で始めると、後から法律上の問題が起こる可能性があります。

5. 個人事業主が派遣契約で成功するためのコツ
契約内容とスケジュール管理が鍵 本業とのバランスを保ちつつ収入安定を図る
最後に、個人事業主が派遣契約をうまく活用し、デメリットを最小限に抑えるためのコツを紹介します。
- 契約内容をよく吟味する
契約書をしっかり確認し、業務委託なのか派遣なのか、自分で労働時間を決められるのかを把握しましょう。偽装請負につながるような条文がないか、専門家にチェックしてもらうのも手です。 - 時間管理を徹底する
派遣先での就業時間と自分の事業活動のバランスを取ることが重要です。スケジュールを詰めすぎるとオーバーワークになり、本業が停滞する恐れがあります。 - 長期的なプランを立てる
一時的に派遣契約で収入を安定させながら、数年後には完全フリーランスに戻る、あるいは副業として続けるなどの目標を持つと効果的です。ゴールを設定すると行動にメリハリが出ます。 - トラブル防止のための記録
やり取りの内容や業務指示の方法などを日々記録しておくと、後々法的な問題が起きた際に証拠として役立ちます。メールやチャットの履歴を残しておくことを意識しましょう。
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まとめ
個人事業主が派遣契約を利用すると、安定収入を得ながら事業を進めるメリットが得られる一方、実質的に雇用に近い実態になってしまえば偽装請負と見なされるリスクもあります。また、本来のフリーランスの柔軟性が損なわれるなどのデメリットもあるため、時間管理や契約書のチェックが重要です。
最終的には、派遣会社との取り決めが「業務委託」なのか「雇用契約」なのかをはっきりさせ、自分の事業活動に支障が出ない形を選ぶ必要があります。しっかり契約を確認しながら、派遣契約のメリットを上手に活かし、安定した収入と個人事業の成長を両立させていきましょう。
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よくある質問
Q1: 個人事業主として派遣契約をする場合、社会保険に入れるのでしょうか?
雇用形態であれば派遣会社が社会保険を負担してくれますが、業務委託契約の場合は対象外になることが多いです。実態が雇用に近いならば加入できる可能性もありますが、契約形態や会社の対応次第なので事前確認が必要です。
Q2: 派遣先から指示を受けているのに、業務委託契約になっているのは違法ですか?
指揮命令系統が明確に派遣先にあり、就労実態が社員と変わらないなら「偽装請負」のリスクが高まります。法律上は雇用関係となり、派遣法に違反する可能性があるため、契約形態を見直すか専門家に相談したほうがよいです。
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