事業を始めて間もない個人事業主の場合、年収(売上から経費を引いた後の所得)が150万円程度となることは珍しくありません。では、その場合にはどのような税金が発生し、どれぐらい負担になるのでしょうか。今回は、個人事業主が知っておくべき所得税や住民税の仕組み、税金の計算例、そして少しでも税負担を抑える方法をご紹介します。
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【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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1. 個人事業主の年収150万円はどんな状況を指す?
売上150万円なのか、所得150万円なのかで意味が変わる
個人事業主の「年収150万円」と言っても、実際には「売上」が150万円なのか、「所得(利益)」が150万円なのかで意味合いがまったく異なります。
- 売上: 事業から得られた収入の総額
- 所得: 売上から必要経費を差し引いた後の金額(所得=売上-経費)
税金は基本的に所得をもとに計算されます。つまり、売上150万円で経費が少なければ所得は多くなりますし、経費が大きければ所得は小さくなります。ここでは、分かりやすく「所得が150万円程度である場合」を想定して解説します。

2. 所得150万円の場合にかかる主な税金
個人事業主が負担するのは、所得税・住民税・個人事業税・消費税など
個人事業主に課される代表的な税金を、ざっくり見てみましょう。
- 所得税
事業所得や副業所得を含む「課税所得」に対して課される国税です。所得税率は累進課税方式で、課税所得が増えるほど税率も上がります。所得が150万円程度なら10%前後の層になるケースが多いでしょう(基礎控除48万円や他の所得控除を踏まえて、実際の課税所得がさらに小さくなる可能性があります)。 - 住民税
地方自治体に納める税金で、所得割と均等割があります。所得割は原則として課税所得の10%程度(都道府県民税4%+市町村民税6%)が目安となります。 - 個人事業税
課税対象となる業種かどうかを確認する必要があります。課税所得が290万円超で初めて納付義務が生じるため、年収150万円ほどの場合は基本的に発生しない場合が多いです。 - 消費税
前々年の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者となります。売上150万円の個人事業主であれば、まず免税事業者になる可能性が高いです。ただし、インボイス制度への対応もあるので注意しましょう。
全体として、年収(=所得)150万円前後であれば所得税と住民税が中心的な負担となり、個人事業税や消費税は生じないケースが多いといえます。

3. 所得150万円の所得税と住民税の計算例
控除を差し引いた後の課税所得に税率を掛け、税額を求める
よりイメージしやすいよう、単純な計算例を示します(あくまでざっくりとした目安です)。
- 事業所得: 150万円
- 基礎控除: 48万円(2023年分以降の適用)
- 他の所得控除: なし(仮定)
この場合、課税所得は「150万円 - 48万円 = 102万円」です。実際には社会保険料控除などが加わり、課税所得はもっと下がる可能性がありますが、ここでは簡略化します。
- 所得税
課税所得102万円なら、速算表を使うと5%の税率が適用される層です。よって所得税はおおよそ「102万円×5%=5.1万円」程度。復興特別所得税を考慮すると、もう少し上乗せされます。 - 住民税
所得割は「課税所得×10%」が目安なので、102万円×10%=10.2万円に、均等割(約5,000円程度)が加算されるイメージです。ただし、実際には自治体ごとに若干の違いがあり、非課税限度額や各種控除も考慮されるため、最終金額は若干変わります。
結果、所得が150万円の場合でも10万円以上の税金がかかることはあり得ます。実際は各種所得控除が他にも適用されるかもしれないので、自分の事情に合わせて計算するのが大切です。

4. 150万円の所得がある個人事業主が節税する方法
青色申告や各種控除で課税所得を圧縮しよう
年収(所得)150万円なら、税率はそこまで高くないとはいえ、節税策を取れば支払い負担はさらに減ります。代表的な方法は以下のとおりです。
- 青色申告を活用
複式簿記で正しい帳簿を作成すれば、青色申告特別控除(最大65万円)を受けることが可能です。課税所得が大きく下がり、所得税と住民税の負担が軽減されます。 - 経費の適正計上
事業に必要な費用は全て経費として計上し、所得を適切に減らしましょう。ただし、プライベートな支出を混同しないよう領収書やレシートをきちんと整理することが重要です。 - 小規模企業共済やiDeCo
掛金が全額所得控除になる小規模企業共済やiDeCoを利用し、将来の資金を積み立てながら課税所得を下げる方法があります。特に年収150万円だとしても、余裕資金の範囲で掛金を設定すれば、所得税・住民税の軽減効果を享受できます。 - ふるさと納税などの寄附金控除
住民税や所得税を減らせる仕組みです。限度額を確認しつつ、商品の返礼を受け取ることもできます。所得が少ないほど、控除枠は限られる点には留意が必要です。
5. 150万円の所得で気をつけたい注意点
社会保険の負担や扶養の条件など 全体の収入構造にも留意
最後に、個人事業主が150万円の所得を得る際に意識しておきたいポイントをまとめます。
- 社会保険の問題
会社員の扶養に入っている場合、所得や収入が一定ラインを超えると扶養を外れ、国民健康保険・国民年金に加入する必要があります。150万円は扶養の境界を意識する金額帯でもあるので、注意しましょう。 - 副業・複業との兼ね合い
会社員として年末調整を受けている場合、副業所得が20万円を超えると確定申告が必要になるなど、税務上の手続きが増えることがあります。青色申告と両立しているなら、書類準備や経理作業に時間を割く必要があるでしょう。 - 住宅ローン控除との組み合わせ
住宅ローン控除を使う場合、所得が低すぎると控除を十分に活かせないことがあります。所得150万円前後だと残りの控除額を引ききれず、減税効果が限定的になる恐れがあります。 - 将来の収入拡大
今は150万円でも、将来ビジネスが成長すれば一気に所得が増える可能性もあります。その際、消費税の免税事業者が課税事業者になるタイミングや、個人事業税がかかるラインなどを見据えて、適切なタイミングで法人化を検討することも視野に入れましょう。
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まとめ
個人事業主として所得が150万円程度の場合、税率は比較的低めですが、所得控除の活用や青色申告、各種節税策を行うことで、税負担をさらに抑えられます。とはいえ、扶養を外れるかどうかや将来の収入アップを見越した経営プランなど、考慮すべきポイントは多々あります。
年収が増えて所得が上がれば、課税率が高まるだけでなく、消費税や個人事業税の発生など新たなステージに突入する可能性もあるため、常に最新の税制や制度をチェックする姿勢が大切です。適切な納税と計画的な節税を両立させながら、個人事業をしっかり成長させていきましょう。
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よくある質問
Q1: 経費が少なくても年収150万円でどうにか暮らしていますが、赤字になったら税金はどうなる?
所得が赤字の場合、所得税や住民税はかかりません。むしろ青色申告なら赤字を繰り越せるメリットもあります。しかし、国民健康保険料などは別途計算されるため、赤字でも負担がゼロになるわけではない点に気を付けましょう。
Q2: 家族の扶養を抜けて自分で国民健康保険や国民年金を払うと損ではないですか?
一概に損かどうかは事情次第です。自分で社会保険に加入すると保険料は上がるものの、老後に受け取る年金額が増える場合もあります。所得を増やして収入を大きく伸ばしたり、青色申告の特典を活用して大幅に節税したりする選択肢も検討してみるとよいでしょう。
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