会社員なら部署名や役職が当然ありますが、個人事業主は同じように名乗っていいか疑問を持つ方がいるかもしれません。実際に屋号や肩書きをどう表記するかは、信用やイメージに大きく関わります。今回は、個人事業主が「部署名」を記載する必要性や、名刺・契約書などでの正しい活用方法、注意すべきポイントを分かりやすく整理しました。
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【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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1. 個人事業主に部署名は本当に必要なのか
会社員とは違い「部署名」は原則不要 ただし業務体制を示す場合に活用する例も
法人の場合、組織が存在し部署ごとに担当が分かれているので、部署名を肩書きとして名刺に表記するのが一般的です。しかし個人事業主は、会社員のような組織形態を取らないことが多いです。したがって部署名というものはそもそも存在しないケースがほとんどです。
一方で、個人事業主によってはスタッフを複数抱え、部門のような形を作っている場合もあり、自らのビジネスを明確に区切って管理している人もいます。その場合、経営者が「◯◯事業部」「サロン運営部」「デザイン部門」などを自由に設定し、スタッフ向けの肩書きや名刺に表記することは可能です。法律上の制限は特にありません。とはいえ、公的書類や税務上では「部署名」は意味をもたないので、単なる対外的なイメージづくりとして活用する形が多いといえます。

2. 部署名を表記するメリットとデメリット
対外的な印象向上とスタッフの役割明確化 しかし公的効果は薄いので要注意
個人事業主が名刺やウェブサイトで部署名を用いる場合、いくつかのメリットが考えられます。
- 対外的な信用度アップ
まるで組織を持っているような印象を与え、フリーランスよりも規模を大きく感じさせたいときに有効です。特にBtoB商談で「何も肩書きがない」と心許なく思われるリスクを和らげる効果があるでしょう。 - 業務区分の明確化
事業内容が多岐にわたる場合、部門名を設置し事業内容別に担当を分けているかのように見せると分かりやすいです。スタッフがいる場合は、誰がどの業務を行うか示すのにも役立ちます。
一方、デメリットとしては以下が挙げられます。
- 法的根拠や強制力がない
部署名はあくまで内部的な呼称に過ぎず、公的書類には全く影響しません。領収書や契約書などで部署名を書いても、実質的に何の効力もない点を踏まえる必要があります。 - 取引先との混乱
部署を名乗っているのに実体がない場合、後で相手が混乱する可能性があります。問い合わせ窓口が複雑化してしまう恐れもあるので、対応体制を整えておかなければ逆効果となりかねません。
3. 名刺や請求書に部署名を載せるときのポイント
法律違反にならないか確認しつつ、用途や印象に合わせた表記を検討
個人事業主が部署名を名刺や請求書などに記載すること自体は特に違法ではありません。しかし、以下のような点を踏まえておきましょう。
- 誤解を招かない呼称
「代表取締役」など法人にしか使えない肩書きはNGです。部署名も「〇〇部」などを名乗る場合、その部門が実在するのかイメージからかけ離れないよう注意してください。 - 屋号や個人名とのバランス
名刺のスペースが限られているため、屋号、個人名、肩書き、部署名を並べると煩雑になります。見やすさを重視し、大切な情報を優先的に載せましょう。 - 請求書等での効果
請求書などに部署名を記載しても法的拘束力はありませんが、受け取る側としては「この担当者はこういう仕事をしているんだな」と認識しやすくなります。ただし、税務署や銀行など公的機関に提出する際は屋号や個人名が中心であり、部署名の有無は基本影響がない点を覚えておく必要があります。

4. 領収書・契約書に部署名を含めるときの注意
屋号や個人名を確実に入れる 部署名だけの記載は無意味になりがち
領収書や契約書に部署名を含める場合は、必ず屋号または個人名などの正式な事業者名を併記することが基本です。部署名だけを書いても法人として登録されていないため、誰の取引かが明確になりません。屋号がある場合、「屋号〇〇(部署△△)」のように書いておくとトラブルを回避しやすいです。
また、会計処理上は領収書や契約書の名義を見て、誰が事業主体か判定します。個人事業主として経費計上したいのに、部署名しか書かれていないと「事業と無関係」とみなされるリスクが高まるかもしれません。必ず正式名義を中心に記載し、部署名は補足程度に利用するのが無難です。

5. 部署名と役職との違い~個人事業主が混同しないために
「代表」や「Owner」とは別概念 部署名は組織内の区分 役職は責任範囲を示す
個人事業主は、「代表」「Owner」「CEO」といった肩書きを名乗ること自体には問題ありませんが、それは役職に近い概念です。一方、部署名は組織単位を示す呼称なので両者は別物と考えましょう。
- 役職: その事業主やスタッフの責任範囲・ポジションを表す(例: 代表、店長、マネージャーなど)
- 部署名: 組織や部門の名称を指す(例: 営業部、経理部、デザイン部など)
個人事業主が複数の事業を同時に行っている場合、部門名を設定し担当者を割り振ることで外部に対して理解しやすい形を作れます。しかし、ほとんどの場合は人員が少なく、事業の規模も大きくないので、屋号か個人名+役職程度で十分かもしれません。あまり複雑にすると、外部とのやりとりで混乱が生じる恐れが高まります。
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まとめ
個人事業主が「部署名」を名乗るのは法律上自由ですが、会社のように正式な組織体制があるわけではないので、実務上はほとんど必要がないことも多いです。ただし、事業が大きくなり複数の部門を管理している場合、外部に向けてわかりやすく部門名を示す意義も考えられます。
名刺や請求書などに部署名を表記する場合は、必ず屋号や個人名とセットで書き、取引先に正しい情報を伝える工夫をしましょう。また、部署名が法的に効力をもつわけではないため、法人と間違われる可能性や余計な混乱を招かないためにも、目的や実態に合った使い方が大切です。
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よくある質問
Q1: 個人事業主が部署名をつけても問題ないですか?
問題ありません。法律上の制限はなく、自由に呼称を決められます。ただし法的効果はなく、公的文書には無意味な場合が多いです。また、あまりに組織体らしい名前にすると、相手が法人と誤解する可能性があるので注意が必要です。
Q2: 名刺に「営業部」「総務部」といった部署名を載せたいのですが、実質一人で全部やっている場合でも大丈夫?
一応可能です。しかし、実態がない部署名を多用するとお客様が混乱するかもしれません。事業を拡大しスタッフを増やす予定があるなど明確な理由があるなら検討してもよいですが、名刺の情報はシンプルにまとめたほうが信頼されやすいケースが多いです。
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