確定申告を行う際に重要となる記帳方法には、「発生主義」と「現金主義」の2種類があります。特に、白色申告と青色申告でどちらの記帳方法を採用すべきかは、申告者の収入状況や事業形態によって異なります。本記事では、発生主義と現金主義の基本的な違いをわかりやすく解説し、白色申告や青色申告における記帳の実務について詳しく説明します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、確定申告をスムーズに行うためのポイントを確認していきましょう。
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【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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白色申告とは?
白色申告の基本
白色申告は、個人事業主やフリーランスが青色申告承認申請書を税務署に提出していない場合に利用できる申告方法です。白色申告は、確定申告制度が始まった当初から存在しており、特に初めて事業を始める人や副業程度の小規模な収入を得ている人にとって、簡便さが大きな特徴です。
白色申告では、簡易な記帳が求められますが、基本的には所得金額や経費を把握するための帳簿が必要です。青色申告のような詳細な帳簿の要件はありませんが、それでも所得金額を正確に申告するための記録は必須です。
誰が白色申告を利用できるのか
白色申告は、個人事業主や副業を行う給与所得者、フリーランスなど、所得を得ているすべての人が利用できます。特に、税務署への事前申請が必要ないため、急に収入が発生した場合や、青色申告を選択する準備が整わない場合でも対応可能です。
ただし、白色申告では青色申告で利用できる特典や控除がないため、所得額が一定以上になる場合は青色申告を検討することが推奨されます。例えば、収入が安定しており、経費が多い場合には青色申告特別控除を活用することで大幅な節税が可能となります。

白色申告のメリットとは
白色申告の最大のメリットは、手続きが簡単である点にあります。事前に税務署へ申請する必要がなく、確定申告の期間内に必要な書類を提出すれば完了します。また、帳簿付けの負担が軽いため、会計に不慣れな人でも比較的スムーズに進められるのが特徴です。
さらに、白色申告は税務署への負担も軽減されるため、小規模な事業や副業を行っている人にとって非常に柔軟な選択肢となります。このような特徴から、事業規模が小さい個人事業主や副業収入が少ない給与所得者に向いています。

白色申告のデメリットとは
白色申告のデメリットとして、青色申告特別控除を受けられない点が挙げられます。青色申告では最大65万円の控除が受けられるのに対し、白色申告ではこのような大きな控除制度がありません。そのため、結果的に納税額が増える可能性があります。
また、記帳の簡易さゆえに、税務調査の対象となる可能性が高まることがあります。税務署は、白色申告者の申告内容をより注意深く確認する傾向があります。さらに、白色申告では事業の収支を詳細に分析することが難しく、長期的な経営計画の策定に支障をきたす場合もあります。
白色申告をする際に必要な書類
主な提出書類
白色申告では、確定申告書Bをはじめ、収支内訳書や必要経費を証明する領収書、請求書などが必要です。確定申告書Bは、すべての個人事業主が提出する基本的な書類であり、収入や必要経費、控除額を記載します。収支内訳書は、事業所得の詳細を記載するもので、必要経費と利益を明確に示します。
保管すべき書類
提出書類以外にも、帳簿や領収書、契約書などの書類を保管しておくことが法律で義務付けられています。これらの書類は、後に税務調査が行われた際の証拠として重要です。特に、収入と支出を証明できる書類は、5年間以上の保管が求められるため、適切に管理する必要があります。

発生主義とは
発生主義は、取引が実際に行われた時点で収益や費用を記録する会計基準の一つです。例えば、売上が発生した場合、その代金がまだ支払われていなくても、売上計上を行います。同様に、経費も実際の支払い時点ではなく、発生した時点で計上します。この方式は、企業や事業の実態を正確に把握するのに適しています。
現金主義との違いとは
現金主義は、収益や費用を実際に現金が入出金されたタイミングで記録する方法です。発生主義が取引の事実に基づいて記録するのに対し、現金主義は実際の現金の動きを重視します。そのため、発生主義では未収金や未払金が記録される一方で、現金主義ではこれらは考慮されません。
実現主義との違いとは
実現主義は、取引が確定し、収益が確実に得られる状態になった時点で計上する方法です。発生主義と似ていますが、収益の計上時点が異なります。例えば、商品を販売した時点ではなく、顧客がその代金を支払う確約を得た時点で収益を記録するのが実現主義です。
白色申告は発生主義での記帳が必要
発生主義での記帳方法
白色申告では、原則として発生主義での記帳が求められます。この記帳方法では、売上や経費が発生した時点で帳簿に記録されます。例えば、12月に商品を納品し、その代金が翌年1月に支払われる場合でも、売上は12月に計上します。同様に、経費も実際の支払い時点ではなく、費用が発生した時点で記録されます。
発生主義は、事業の実態を正確に反映するための重要な手段ですが、未収金や未払金の管理が必要となるため、記帳の負担が増える可能性があります。
現金主義での帳簿が認められる場合
青色申告をする
現金主義での帳簿は、特定の条件を満たす青色申告者に限り認められます。青色申告の際に「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を税務署に提出することで、現金主義を採用することが可能です。
小規模事業者である
年間売上が1,000万円以下の事業者は、現金主義を選択することができます。この特例は、記帳の負担を軽減し、小規模事業者が正確な申告を行えるようにするための措置です。
その他
他にも、特例条件として特定の業種や取引内容に応じて現金主義が認められる場合があります。
現金主義の帳簿のメリット
金銭の動きの理解が簡単
現金主義の大きなメリットは、資金の流れを直感的に把握しやすい点です。現金の入出金が帳簿に直接反映されるため、手元資金の状況を瞬時に把握できます。この特徴は特に、資金繰りが重要な小規模事業者にとって大きな利点です。たとえば、事業を始めたばかりの個人事業主にとって、現金主義はキャッシュフロー管理をシンプルにするための強力なツールとなります。
帳簿の内容の管理が簡単
現金主義は記帳内容がシンプルであるため、事業主自身が手作業で帳簿を付ける場合にも適しています。また、取引内容が簡潔に記録されるため、帳簿の見直しや修正が容易です。このため、会計ソフトを利用せずに手書きで管理する場合でも現金主義の帳簿は扱いやすいと言えます。
現金主義の帳簿のデメリット
掛取引や未払、未入金の確認ができない
現金主義では、現金の動きだけを記録するため、掛け取引や未払いの費用、未入金の売上を帳簿に反映することができません。このため、実際の事業取引の全体像を把握することが難しくなります。例えば、翌月に回収予定の売掛金が多い場合でも、現金主義ではその金額が帳簿に記載されないため、将来の収入が見えにくくなるという欠点があります。
経営状況を正確に把握しにくい
現金主義では、長期的な経営状況の分析が難しいという課題があります。特に、減価償却費や資産の購入など、現金以外の要素が絡む取引については記録が不十分になることがあります。このため、事業拡大や資金調達を計画する際には、現金主義の帳簿だけでは不十分な情報となる場合があります。
現金主義での特例の注意点とは
最大65万円の青色申告特別控除は受けられない
現金主義を採用する場合、青色申告特別控除のうち最大額である65万円控除が適用されません。この控除は、発生主義に基づいた複式簿記を採用することが条件となるため、現金主義を選択した場合には利用できない点に注意が必要です。
10万円の青色申告特別控除は受けられる
現金主義を採用した場合でも、簡易帳簿での青色申告特別控除である10万円控除は適用されることがあります。ただし、控除額が少ないため、節税効果が限定的である点を認識しておく必要があります。
減価償却費の計算をしなければならない
現金主義であっても、減価償却費の計算は避けて通れません。事業に使用する資産については、その費用を数年間にわたって分割して計上する必要があるため、これを正確に計算し帳簿に記録する必要があります。
青色申告決算書は現金主義用を利用する
現金主義で青色申告を行う場合、専用の「現金主義用青色申告決算書」を利用する必要があります。この書類は、現金主義の特性に基づいて設計されており、通常の青色申告決算書とは異なる形式で作成されます。
よくある間違いと注意点
白色申告や現金主義に関連する間違いとして、以下の点が挙げられます。
まず、発生主義と現金主義の違いを正しく理解していないために、記帳方法を誤るケースが多いです。たとえば、売掛金や未払金の記録を省略してしまい、後に税務署から指摘を受けることがあります。
また、白色申告の簡易性に過信し、必要な書類を適切に保管していない場合もよく見られます。これにより、税務調査時に提出を求められた際にトラブルが生じる可能性があります。こうした誤解や間違いを避けるためにも、申告制度のルールを正確に把握することが重要です。
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まとめ
発生主義と現金主義は、記帳の基本方針としてそれぞれ異なる特性を持っています。白色申告では原則として発生主義が求められますが、特定の条件下では現金主義を採用することも可能です。どちらの方法を選択するかは、事業規模や収益の状況、さらには税制上のメリット・デメリットを総合的に考慮する必要があります。適切な記帳方法を選び、正確な帳簿管理を行うことで、スムーズな確定申告と節税を実現しましょう。
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よくある質問
白色申告の控除額はどのくらい?
白色申告には青色申告特別控除のような大きな控除はありません。ただし、基礎控除や扶養控除など、すべての納税者に適用される控除を活用することで、一定程度の節税は可能です。
白色申告の期限はいつ?
白色申告の期限は通常、翌年の3月15日までです。この期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税が発生する可能性があるため、期限内に申告を完了させることが重要です。
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