医療費の自己負担を三割に抑えたり、老後に年金を受け取れたりするのは社会保険制度があるからです。しかし「会社の手続きに任せきりで仕組みがよくわからない」「パートでも加入できるのか知りたい」という声は少なくありません。この記事では、社会保険のしくみを広義と狭義に分けて整理し、それぞれの保険の役割や加入条件、保険料の大まかな計算方法まで丁寧に解説します。制度を理解しておくと、転職や独立、ライフイベントの際に慌てず対応できますので、ぜひ参考にしてください。
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社会保険とは
社会保険とは、病気・けが・老後・失業など個人では対応しきれないリスクを、国が設けた公的保険制度で相互に支え合う仕組みを指します。働き方や年齢に応じて加入する保険が定められており、原則として対象者の加入は義務です。
社会保険の仕組み
広義の社会保険
法律や行政文書で「社会保険」と言う場合、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の五制度を総称するのが一般的です。医療と年金に加え、失業や労災といった就労リスクまでカバーすることで、国民生活全体を支えるセーフティーネットを形成しています。
狭義の社会保険
一方、企業の人事や給与計算の文脈では、社会保険という言葉が健康保険（40歳以上は介護保険を含む）と厚生年金保険の二制度のみを指す場合が少なくありません。これは、これら二つの保険料が給与から天引きされ、会社と従業員がほぼ折半で納付するという共通点があるためです。雇用保険や労災保険は同じ給与計算でも保険料率や負担割合が異なるため、実務上区別されることが多くなっています。
社会保険の種類５つ
厚生年金保険
20歳から60歳未満の会社員や公務員が加入し、老齢年金だけでなく障害・遺族年金も給付します。保険料率は月給と賞与に対して一律の割合でかかり、原則半分を会社が負担します。加入期間が長いほど将来受け取る年金額が増えるため、転職の際は適切に資格取得・喪失の手続きが行われているか確認することが重要です。
健康保険
会社員とその扶養家族が医療サービスを三割負担（条件により二割・一割負担）で利用できる制度で、出産手当金や傷病手当金など働けない期間の収入補填もあります。組合健保、協会けんぽ、共済組合のいずれに加入するかで保険料率や付加給付が異なりますが、仕組みは全国共通です。
介護保険
40歳になると健康保険料に上乗せして徴収が始まり、65歳以上で要介護・要支援認定を受けた場合、介護サービスを一～三割負担で利用できます。会社員は健康保険とセットで納めるため、保険料率は所属する保険者が決めた割合に準じます。
雇用保険
週20時間以上かつ31日以上雇用見込みのある労働者が対象で、失業手当や育児休業給付、教育訓練給付など「働けない期間の所得補償」や再就職支援を行います。保険料は原則として事業主と従業員が分担し、料率は業種ごとに異なります。
労災保険
業務中や通勤途中の事故・病気を補償する保険で、保険料は全額事業主が負担します。治療費は原則無料になり、休業補償や遺族補償年金が支給されます。パートやアルバイトでも労働者であれば自動的に適用されるため、加入手続きは事業主側の責任となります。
社会保険の加入条件、対象とは
健康保険と厚生年金保険は、正社員だけでなく週の所定労働時間が正社員のおおむね四分の三以上で、かつ月額賃金が概ね88,000円以上など一定の要件を満たすパート・アルバイトも加入対象です。雇用保険は週20時間以上かつ31日以上の雇用見込み、労災保険は雇用形態にかかわらず労働者全員が対象になります。介護保険は40歳以上の健康保険加入者が自動加入です。
社会保険料の計算方法とは
厚生年金保険料の計算方法
4月から6月に支払った給与の平均額を「標準報酬月額」として区分し、定められた保険料率（2025年度は18.30%）を掛けて算出します。会社と従業員が半額ずつ負担し、賞与についても標準賞与額に同率を掛けて納付します。
健康保険料の計算方法
標準報酬月額に健康保険料率を掛けて算出します。料率は協会けんぽで都道府県ごとに、組合健保で各組合ごとに定められており、平均で一二～一四％台です。40歳以上は介護保険料率が上乗せされます。こちらも会社と従業員で折半です。
労災保険料の計算方法
前年度の労働者総賃金に「労災保険率」を掛け、会社が全額を負担します。保険率は業種別に0.2%から8.8%まで幅があり、危険度の高い建設業などは料率が高めに設定されています。
社会保険の加入方法とは
新たに従業員を雇った事業主は、入社日の翌日から10日以内に「資格取得届」を所轄の年金事務所やハローワークへ提出し、同時に健康保険・厚生年金・雇用保険の加入手続きを行います。労災保険は原則として従業員を一人でも雇った時点で自動的に適用されます。従業員本人は会社が作成した書類に必要事項を記入し、扶養控除等申告書や基礎年金番号などを提出すれば手続き完了です。
よくある間違いと注意点
扶養に入っている家族が年収を超えて働いた場合、扶養から外れた時点で保険料の納付が発生しますが、届け出が遅れると遡って保険料が請求されることがあります。また、短時間労働者の加入条件を満たしたにもかかわらず企業が手続きしないと、のちに未加入期間の保険料をまとめて納める必要が生じるため、事業主側の管理も重要です。
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まとめ
社会保険は狭義では健康保険と厚生年金、広義ではこれに雇用保険・労災保険・介護保険を加えた五制度を指します。加入要件は勤務時間や賃金額で細かく決まっており、保険料は標準報酬月額や業種別の料率で算出されます。制度を理解し、適切に手続きを行うことで、医療・年金・失業といったライフイベントに備えられます。タックスナップを活用すれば、社会保険料の仕訳や確定申告もスマートに完結でき、本業に集中できる環境が整います。
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よくある質問
社会保険と国民健康保険の違いとは？
社会保険の健康保険は会社員とその扶養家族が対象で、保険料を会社と折半します。一方、国民健康保険は自営業者やフリーランスが個人単位で加入し、保険料を全額自己負担する点が大きな違いです。
社会保険に加入していなかった場合に罰則などはある？
事業主が加入手続きを怠った場合、さかのぼって保険料と延滞金が課されるほか、行政指導や罰則の対象になることがあります。従業員本人が加入逃れを故意に行った場合も給付が受けられない恐れがあるため、早めの手続きが重要です。
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