経理業務の中でも重要な作業といえる「帳簿の締め切り(決算時の締め作業)」。損益勘定の振替や、資本への最終残高の引き継ぎなど、手順を間違えると決算書が合わなくなる可能性があります。そこで本記事では、帳簿の締め方の基本的な流れや注意点を整理しました。初心者でも理解しやすいよう仕訳の例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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【所属】
税理士法人Five Starパートナーズ 代表税理士
【経歴】
大阪府豊中市出身。関西学院大学経済学部卒業後、中原会計事務所に入所。2001年に税理士試験全科目合格。その後、新日本アーンスト・アンド・ヤング税理士法人で国際税務業務に従事。2005年にヒロ☆総合会計事務所を設立し、2022年に税理士法人Five Starパートナーズへ組織変更。また、YouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!!」を運営し、税務や経営に関する情報を発信している。
保有資格: 税理士
※詳細やご自身の状況に応じた適切な対応については、税理士等の専門家にご相談ください。
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1. 帳簿の締め切りとは何か
決算期に各勘定の残高を確定させる作業
帳簿の締め切りとは、企業や個人事業主が決算期末に、売上や費用などの損益勘定をリセットし、最終的な残高を翌期に繰り越すための工程です。具体的には、以下のようなステップを踏んで行われます。
- 損益振替
当期の収益・費用を「損益(まとめ勘定)」に集計し、最終的な利益(または損失)を算出する。 - 資本振替
算出された利益(または損失)を資本(自己資本)に振り替えることで、期末残高を次期に反映する。 - 勘定締め切り
全ての勘定科目を締め切り、翌期に繰越される資産・負債・純資産の初期値を決定する。
帳簿の締め方を正しく理解しておくと、税金計算を行う際のトラブルが減り、経営状況を正確に把握できるようになります。
2. なぜ帳簿の締め方が重要なのか
決算書作成や税務申告でミスを防ぎ 経営分析にも役立つ
帳簿の締め切りは、事業の1年を締めくくる重要な作業です。正しい締め方を行うことで次のようなメリットがあります。
- 正確な決算書が作成できる
収益や費用をきちんと締めることで、期末における利益・損失が正確に確定します。決算書(損益計算書や貸借対照表)の数字がしっかり合うようになり、税務申告にもスムーズに対応できます。 - 経営判断がしやすい
正しい残高を把握していれば、資金繰りや投資判断にも安心して取り組めます。特に資産・負債の繰り越し額が明確になるため、経営分析がスムーズになります。 - 税務リスクを回避できる
締めを誤ると、申告書の金額と帳簿の数字がズレてしまうことがあります。税務調査の際に整合性が取れないと指摘され、修正申告や追加徴収が発生する可能性があるため注意が必要です。
3. 帳簿を締める基本の流れ
1.損益振替 → 2.資本振替 → 3.勘定締め → 4.繰越試算表
具体的な手順は以下の4ステップに分けると分かりやすいです。
- 損益振替(step1)
収益(売上など)と費用(仕入や経費など)を「損益勘定」に集約し、期末時点の純利益(損失)を算出する仕訳を行います。たとえば、売上勘定を借方に、損益勘定を貸方に振り替える仕訳です。 - 資本振替(step2)
上記の損益勘定で出た利益や損失を「資本勘定(繰越利益剰余金や元入金など)」に振り替えます。これによって当期の成果が資本に反映される形です。 - 各勘定の締切(step3)
- 収益・費用の締め方
既に損益勘定に振り替えを行ったので、収益や費用勘定の残高はゼロとなり、翌期には持ち越されません。 - 資産・負債・純資産の締め方
現金・売掛金などは期末残高を翌期に繰り越すため、繰越試算表に転記して期首残高となります。
- 収益・費用の締め方
- 繰越試算表の作成(step4)
最終的に翌期へ持ち越される資産・負債・資本勘定の残高を一覧にまとめ、次期の初期値とするのが繰越試算表です。これで決算における締め切りは完了です。
4. 仕訳の具体例~損益振替と資本振替
残高0にするための仕訳を理解して 正しく勘定をリセット
大まかなイメージとして、以下のような仕訳が発生します。
- 損益振替(収益の締め)
- 売上(貸方残高) → 損益勘定(借方)
- 例: 売上100万円なら、借借借売上 100万 / 貸貸貸損益 100万
※実際の仕訳は逆になるパターンもあります。あくまで概念的に収益勘定を0にするための処理です。
- 損益振替(費用の締め)
- 損益勘定(貸方) → 仕入や経費(借方残高)
- 例: 仕入60万円なら、借借借損益 60万 / 貸貸貸仕入 60万
- 資本振替(純利益を資本に反映)
- 当期純利益が40万円(損益勘定の貸方残高)なら、借借借損益 40万 / 貸貸貸資本金 40万
- この結果、損益勘定はゼロに。収益・費用の勘定も全てゼロになる。
なお、科目名や仕訳方式は企業や個人事業の会計ルールによって多少異なるケースがあるため、自分の方式に沿って締めましょう。
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まとめ
帳簿の締め方は、決算期に収益や費用をゼロにして当期純利益を資本へ振り替え、翌期へ繰り越すために欠かせない手続きです。損益振替と資本振替、そして資産・負債・資本勘定の確定を行い、最後に繰越試算表を作成することで決算処理が完結します。
仕訳が複雑に感じるかもしれませんが、基本的な流れを覚えれば毎年の締め切り作業もスムーズになるでしょう。手作業でミスが出やすい部分でもあるため、正確に理解しながら丁寧に進めることが大切です。自分に合った会計ソフトを導入して自動化を活用するのも、効率アップにつながるおすすめの方法です。
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よくある質問
Q1: 帳簿の締め切りはいつ行えばよいですか?
年度末(決算日)の後に行うのが一般的です。個人事業主の場合は12月31日が決算となるため、1月初旬に締め作業を行うことが多いです。ただし、中間決算を行う会社などでは随時締めを行うケースもあります。
Q2: 会計ソフトを使えば締め切り作業は自動化される?
多くのソフトでは「決算処理」「期末処理」などの機能が搭載されており、ボタン1つで仕訳を作成できるものがあります。しかし、最終的には勘定科目や金額の設定を正しく行わないと誤差が生じる可能性があるため、ソフトに依存しすぎず自分でチェックするのが無難です。
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