朝はプレスルームを回って服を借り、昼はスタジオで雑誌の撮影、夜は翌日のタレントの衣装をそろえる。この記事で扱うスタイリストは、雑誌や広告、カタログ、タレントの衣装を選んでコーディネートするファッションのスタイリストで、美容室で髪を切るヘアスタイリストではありません。スタイリストのお金は、スタイリング料と衣装の実費がセットで動き、取引先によって込みで払われたり別に精算されたり、源泉徴収されたりされなかったりと、入り方がばらばらです。
確定申告アプリ(会計ソフト)選びは、撮影ごとのスタイリング料と、衣装の買い取り代やリース代、源泉徴収された税額を、撮影の合間に記録して申告まで終えられるかで決まります。この記事では、衣装の立替の扱いと記録の仕方、源泉徴収される仕事とされない仕事の見分け方、私服と兼ねる服の線引きといったスタイリストならではの論点から、おすすめの4本を比較します。
この記事のポイント
- 事務所や師匠のスタイリストに雇われて給与を受け取り、年末調整を受けているなら、確定申告もアプリも原則不要。フリーでスタイリング料を受け取ると、自分で申告する
- クライアントが負担する衣装の買い取り代やリース代を立て替えた分は売上に入らない。請求書でスタイリング料と分け、案件ごとに記録して立替だと示せるようにしておく(どの案件の費用か示せない衣装代が経費にならなかった裁決もある)
- ポスターなどの写真撮影のスタイリング料は通常は源泉徴収されず、映画・演劇・テレビの美粧の報酬として払われる場合は10.21%が源泉徴収される(雑誌・CM・ショーなどは支払明細で確認)
- 私服としても着る服は原則として経費にならず、撮影のためだけに自分の負担で用意した衣装は経費にできる(クライアントに精算してもらう立替分は除く)
- 迷ったら、スタイリング料の入金と衣装代の支払いを、リース回りの合間に処理したいならタックスナップ、事務所を立ち上げてアシスタントを雇うならfreee、複数の口座をまとめて管理するならマネーフォワード、パソコンでじっくりならやよいの青色申告
スタイリストの仕事に確定申告アプリは必要?
スタイリスト事務所や師匠のスタイリストに雇われて給与を受け取り、年末調整を受けているなら、確定申告もアプリも原則として必要ありません。一方、フリーとして出版社や広告制作会社、芸能事務所から仕事を受けている、アシスタント代を報酬として受け取っている、勤めながら休日にスタイリングの仕事を受けている、という場合は確定申告が必要になることがあります。
| 働き方 | 確定申告の目安 |
|---|---|
| 事務所や師匠のスタイリストに雇われ、給与を受け取って年末調整あり | 原則不要(年末調整で完結) |
| アパレルの会社などに勤めながら、休日にスタイリングの仕事を受けている | 給与以外の所得が20万円を超えたら必要 |
| フリーのスタイリストとして、出版社・広告制作会社・芸能事務所などから仕事を受けている | 所得が基礎控除などの合計(令和8年分の基礎控除は合計所得489万円以下で104万円)を超えたら必要。源泉徴収された税金は申告で精算する |
| アシスタントとして、師匠や事務所から給与ではなく報酬で受け取っている | 自分で申告する。アルバイト先で年末調整を受けているなら、報酬の所得が20万円を超えたら必要 |
ここでいう所得は、受け取ったスタイリング料の総額ではなく衣装代やリース代、交通費などの経費を引いた金額です。所得税の申告がいらない場合も、住民税の申告は別に必要になることがあります。撮影の現場でヘアやメイクまで担当する人は、美容師法の論点もあるので、こちらの記事もあわせて確認してください。

アシスタントの収入は給与か報酬かで申告が変わる
師匠や事務所から受け取るアシスタント代が給与か報酬かで、確定申告のしかたが変わります。年末に源泉徴収票が届くなら給与で、ほかに収入がなければ年末調整で精算が終わります。請求書を出して振り込まれる形なら事業の報酬で、自分で申告します。
どちらに当たるかは、契約の名前ではなく、指示を受けて働く度合いや、道具や材料をどちらが負担するかといった働き方の実態で判断されます(国税庁 消費税法基本通達1-1-1)。アシスタント期は報酬が少なく、アルバイトと掛け持ちする人も少なくありません。報酬として受け取ったら、撮影の買い出しや移動で自分が負担した支出も記録しておくと、申告で経費にできます。
古着を買い取って売るなら古物商許可が要る
撮影で使い終わった衣装を売るだけなら古物商許可はいりませんが、古着を買い取って売る仕事もするなら許可が必要です。警察庁の解釈では、お店から一度でも一般消費者の手に渡った服は、タグが付いた未使用品でも「古物」に当たります。そのうえで、古物を売ることだけを行う営業は許可の対象から外されています(警察庁 古物営業法等の解釈運用基準について)。
許可の申請先は営業所を管轄する警察署で、東京都の場合は手数料が19,000円です(警視庁 古物商許可申請)。許可を受けたあとは、フリマアプリで古着を買い取る場合も、原則として相手の住所や氏名などを確認する必要があります(1回の買取額が1万円未満なら免除)。古物商許可を取る手順や費用は、こちらの記事で解説しています。

青色申告65万円控除はアプリで取れる?
取れます。フリーのスタイリストとして続けるなら、開業届と青色申告承認申請書を出しておけば、最大65万円の控除が受けられます。65万円控除には複式簿記の帳簿が必要ですが、確定申告アプリなら取引を入力するだけで自動で出来上がります。e-Taxで提出すれば控除額は55万円ではなく65万円になります。令和9年分からは、紙で提出すると控除は10万円になり、e-Taxでの提出が65万円の条件になります(財務省 令和8年度税制改正の大綱)。
税理士に頼むのとどちらがいい?
フリーのスタイリストとして一人で撮影を回している程度なら、費用の面では確定申告アプリで十分です。取引先がいくつあっても、案件ごとのスタイリング料と衣装代を記録していけば申告書は作れます。相場を比べてみます。
| 依頼方法 | 費用の目安(年間) |
|---|---|
| 税理士に記帳から丸ごと依頼 | 10〜20万円 |
| 税理士に申告書作成だけスポット依頼 | 5〜10万円 |
| 確定申告アプリ | 1〜3万円台 |
アプリなら年1〜3万円台で利用料は経費にできる
確定申告アプリの利用料は年間1〜3万円台で、フリーのスタイリストとして申告する人は全額をその年の経費にできます。衣装を運ぶキャリーケースやスチーマーと同じく、仕事を回すための費用です。
税理士に頼んだほうがいいのはこんな場合
アシスタントに給与や外注費を払うようになった、立替を含めた入金が1,000万円に近づいてきた、法人化を考えているという場合は、税理士に相談する価値があります。給与の源泉徴収や消費税の計算など、手続きが一気に増えるためです。
アシスタントへの支払いを外注費と給与のどちらで処理するかは、スタイリストに即した国税庁の明文がなく、働き方の実態で判断されます。給与で払うと源泉徴収の義務が生じるので、人を頼む前に税理士か税務署に確認しておくと安心です。
\ AppStoreの確定申告アプリで1位 /
スタイリストが確定申告アプリを選ぶ4つの基準
スタイリストのアプリ選びは、①スタイリング料と衣装の実費を、案件ごとに分けて記録できるか、②取引先ごとに、源泉徴収された税額を記録できるか、③リース回りや撮影の合間に、スマホだけで申告まで終わるか、④私服と兼ねる服や手持ちの衣装の扱いを質問できる窓口があるか、の4つで決まります。どれも「スタイリング料と衣装代が一緒に動き、取引先ごとに払われ方が違う」というこの仕事の構造から来る基準です。

スタイリング料と衣装の実費を、案件ごとに分けて記録できるか
撮影の仕事では、スタイリング料と、衣装の買い取り代やリース代、赤帽やタクシー代といった実費が一緒に動きます。取引先によって、全部込みで払われる、実費だけ別に精算される、と払われ方も違います。どの撮影の分のスタイリング料か、どの撮影のために払った衣装代かを、案件ごとに分けて記録できるかが最初の基準です。案件と結びつかない衣装代は、後から経費として説明できなくなります。
取引先ごとに、源泉徴収された税額を記録できるか
テレビや映画の仕事では源泉徴収されて振り込まれることがあり、ポスターなどの写真撮影では満額で振り込まれるのが基本です。どの取引先から、いくら源泉徴収されたかを分けて記録できるかを確認しましょう。引かれた税金を申告で正しく差し引けば、払いすぎた分が戻ってくることがあります。
リース回りや撮影の合間に、スマホだけで申告まで終わるか
撮影の前日はプレスルームを回って服を借り、撮影の翌日には返却に回る。衣装を詰めたキャリーケースを引いて移動する日が続き、帳簿のためにパソコンを開く時間はほとんどありません。記帳から申告書の作成、e-Taxでの提出までスマホだけで終わるかを確認しましょう。
私服と兼ねる服や手持ちの衣装の扱いを質問できる窓口があるか
「撮影のあとに自分で着ている服は経費になる?」「繰り返し使う手持ちの衣装は一度に経費にできる?」。スタイリストの申告には、判断に迷う点が少なくありません。チャットやLINEで質問できる窓口があると、申告の直前で手が止まることを防げます。
アプリ選びでよくある失敗
よくある失敗は次の3つです。どれも「スタイリング料と衣装の実費、源泉徴収された税額を分けて記録できるか」を基準に選べば避けられます。
- 立て替えた衣装代が入った振込額をまるごと売上にして、売上が実際より大きくなる
- 家族のカードで払った衣装代が、どの撮影の分か説明できず経費に入れられない
- 源泉徴収された後の振込額を売上にして、引かれた税金を申告で差し引き忘れる
スタイリストにおすすめの確定申告アプリ4選
スタイリング料の入金と衣装代の支払いを、リース回りの合間に処理したいならタックスナップ、事務所を立ち上げてアシスタントを雇うならfreee、複数の口座やカードをまとめて管理するならマネーフォワード、パソコンでじっくり進めるならやよいの青色申告が有力です。まずは最安プラン同士の比較表で全体像をつかんでください。
| アプリ名 | スマホ完結度 | レシート撮影上限(最安プラン) | カード・口座連携の自動仕訳 | 月額(最安・年払い・税抜) |
|---|---|---|---|---|
| タックスナップ | ◎ 提出まで完結 | 無制限 | ◎ 連携明細をAIが自動仕訳・スワイプで確認するだけ | 980円・無料トライアルあり |
| freee | ○ | 月5枚 | ○ 自動で経理 | 980円・無料お試しあり |
| マネーフォワード | ○ | 月15件(超過は上位プランへ) | ◎ 連携できる金融サービスが豊富 | 900円・無料トライアルあり |
| やよいの青色申告 | △ パソコン前提 | 対応(上限の公表なし) | ○ スマート取引取込 | 初年度無料あり |
スタイリング料の入金と衣装代の支払いを、リース回りの合間に処理したいならタックスナップ
タックスナップはスマホ完結に特化した確定申告アプリで、雑誌や広告、タレントの撮影を回るフリーのスタイリストや、アシスタントをしながらスタイリングの仕事を受け始めた人に向いています。取引先ごとのスタイリング料と源泉徴収された税額、衣装代やリース代の支払いを1つにまとめて、リース回りの合間にも申告まで進められます。
おすすめポイント
- 連携した口座の入金から、出版社や広告制作会社、芸能事務所からのスタイリング料をスワイプで事業の売上に仕分けでき、源泉徴収された税額も取引先ごとに記録して申告書にまとめられる=衣装代込みで振り込まれたスタイリング料も、入金を1件ずつ確かめながら売上に仕分けられる
- 連携したカードの明細は、特許を取得した「スワイプ仕分け」(右=経費・左=プライベート)で1件ずつ切り分け=自分の負担で買った衣装代やリース回りのタクシー代も、次の撮影までの移動中に片づく(出典)
- 衣装や小物のレシートはカメラで撮るだけ(読み取り枚数無制限・カンタンプラン以上)。「これは経費になる?」と迷ったら「みんなはどうしてる」機能で同じ職種の判断を確認できる
- スワイプと丸投げ仕分け(1,000件最短3秒・安心プラン以上)で、複式簿記の知識ゼロでも青色申告65万円控除に必要な帳簿と書類を作れる(白色申告の収支内訳書にも対応)
- マイナンバーカードがあれば、申告書の作成からe-Taxでの提出(電子申告)まですべてスマホだけで完結=衣装を詰めたキャリーケースで手がふさがる日でも、撮影の待ち時間に申告を進められる
- 職種に合わせた職種特化モードで、税理士監修のAIが9割以上の精度で勘定科目を自動判定(出典)
- 消費税の申告にも最安のカンタンプランから対応=広告制作会社や出版社に求められてインボイス登録をし、2割特例を使う場合も同じアプリで完結できる
- 最安のカンタンプランは年払いで月980円(税抜・年額11,760円)。2026年確定申告期間の全29日間、App Storeランキング確定申告アプリ内1位(Sensor Tower)で、無料トライアルから始められる
- 24時間のAIチャットに加え、LINEで専門スタッフに相談できる(カンタンプラン以上)=「撮影のあとに自分で着る服は経費になる?」という迷いも、衣装の返却を終えた後に聞ける
- 登録者40万人超の税理士YouTuber・ヒロ税理士が監修した税務調査リスクチェックと、追徴課税時に利用料を全額返金する保証(安心プラン)
こんな人に向いている
- 出版社・広告制作会社・芸能事務所と、取引先がいくつもある
- スタイリング料と衣装の実費が、込みで払われたり別に精算されたりする
- 衣装の買い取り代やリース代のカード払いが毎週のようにある
- パソコンを開く時間がなく、スマホだけで申告を終えたい
事務所を立ち上げてアシスタントを雇うならfreee
freeeは○×の質問に答える形式で申告書を作れる、初心者向けの設計が特徴の会計ソフトです。アシスタントを雇う、スタイリスト事務所を立ち上げて仲間に仕事を回す、取引先に請求書を出す件数が増えたなど、事業として広げたい人、将来は法人化も考えている人に向いています。
おすすめポイント
- ○×の質問に答えるだけで確定申告書を作成できる
- 請求書の発行や給与計算までシリーズでそろう
- 法人化したあとも法人向けfreee会計にデータを引き継げる
こんな人に向いている
- アシスタントを雇う、事務所を立ち上げる予定がある
- 請求書を出す取引が多い
複数の口座やカードをまとめて管理したいならマネーフォワード
マネーフォワード クラウド確定申告は、連携できる金融機関の多さが強みです。スタイリング料の受け取り口座、衣装の買い取りに使うカード、リース店への支払いに使う別のカードと、お金の出入り口が多い人に向いています。
おすすめポイント
- 連携できる銀行・カード・電子マネーなど金融関連サービスが豊富
- 家計簿アプリ「マネーフォワード ME」と組み合わせて家計と事業をまとめて把握できる
- レポート機能で月ごとの収支を見える化できる
こんな人に向いている
- スタイリング料の受け取り口座やカードが複数ある
- 生活費とスタイリングの仕事の収支をまとめて管理したい
パソコンでじっくり進めたいならやよいの青色申告
やよいの青色申告 オンラインは、会計ソフトの老舗・弥生のクラウド版です。撮影のない日にパソコンの前に座る時間があり、帳簿や決算書を大きな画面で確認しながら進めたい人に向いています。
おすすめポイント
- セルフプランは初年度無料で始められる
- 画面の大きいパソコンで決算書までじっくり作り込める
- 老舗ならではのサポート体制(プランにより電話・チャット)
こんな人に向いている
- 帳簿や決算書はパソコンでまとめて進めたい
- まず無料で1年試したい
\ AppStoreの確定申告アプリで1位 /
スタイリストの確定申告で注意したいポイント
スタイリストの申告でつまずきやすいのは、衣装の立替・源泉徴収・私服と兼ねる服・リース回りの交通費・手持ちの衣装・個人事業税と消費税・副業と扶養の7つです。順に整理します。
クライアントの衣装代の立替は売上に入らず案件ごとの記録で示す
クライアントが負担する衣装の買い取り代やリース代を立て替えた分は、売上に入りません。請求書でスタイリング料と分け、立替と確認できる形で記録しておきましょう。国税不服審判所の平成28年9月8日の裁決では、スタイリストが請求書の控えに「衣装買い取り代」「衣装リース代」などと書いた立替分が、取引先への照会などで確認できた範囲で、所得税の収入と消費税の課税売上から除かれました(国税不服審判所 平成28年9月8日裁決)。
一方、同じ裁決では、家族のクレジットカードで払った衣装代のうち、どの取引先の収入を得るための費用かを示せなかったものは、経費に入れられませんでした。立替も経費も、どの撮影の分かを記録で示せるかどうかが分かれ目です。衣装代の払い方ごとの扱いは次のとおりです。
| 衣装代の払い方 | 売上・経費での扱い | 残しておくもの |
|---|---|---|
| クライアントの代わりに払い、スタイリング料と分けて実費のまま精算してもらう | 立替なので売上にも経費にも入れない | 店のレシートの写し(原本はクライアントに渡す)と、スタイリング料と立替を分けて書いた請求書の控え |
| 衣装代込みのスタイリング料を受け取り、衣装は自分の負担で買う・借りる | 受け取った総額が売上で、衣装代は経費 | 衣装代のレシートと、どの撮影の分かのメモ |
| 自分の名前で買った衣装に上乗せして、クライアントに売る | 売った金額が売上で、買った金額は仕入として経費 | 請求書の控えと仕入のレシート |

立替を分けておくことには、消費税の面でも意味があります。クライアントは、店のインボイスとあなたが作る立替金精算書をあわせて保存すれば、あなたがインボイス登録をしていなくても、店がインボイス発行事業者なら、衣装代の分の仕入税額控除ができます(国税庁 インボイスQ&A 問94)。スタイリング料の部分は、この扱いの対象外です。
振込で精算されると、立替分がスタイリング料と混ざって売上に見えやすくなります。取引先から届く支払調書の金額に立替分が含まれていないかも、確認しておきましょう。
写真撮影のスタイリング料は源泉徴収されずテレビや映画の美粧ならされる
ポスターやCDジャケットの写真撮影でスタイリストに払われるスタイリング料は、源泉徴収の対象ではないと国税庁が回答しています。ただし、スタイリング料を写真の報酬に含めてカメラマンに払う場合は、カメラマンへの支払いに源泉徴収が必要です。一方、映画や演劇、テレビ放送に関わる「美粧」の報酬としてスタイリング料を払う場合は、源泉徴収が必要とされています(国税庁 質疑応答事例「スタイリスト料及びヘアメイク料」)。
源泉徴収される場合の税率は10.21%(1回に100万円を超える部分は20.42%)です。雑誌やカタログ、ECサイトの撮影、テレビCMやミュージックビデオ、ファッションショーのスタイリング料については、国税庁が個別に示したものがありません。給与を払っていない個人(タレント個人など)から受け取る報酬は源泉徴収の対象外で、衣装を一からデザインする仕事は服飾デザインの報酬として源泉徴収の対象です(国税庁 源泉徴収のあらまし 令和8年版 第5章)。
源泉徴収された報酬は、引かれる前の金額を売上にし、引かれた税金は確定申告で差し引きます。スタイリング料と一緒に請求する衣装代が源泉徴収の対象になるかは国税庁が示しておらず、総額から引かれていることもあるので、支払明細で確かめましょう。源泉徴収された報酬の帳簿のつけ方は、こちらの記事で解説しています。

私服と兼ねる服は原則として経費にならない
撮影のためだけに自分の負担で用意し、私生活では着ない衣装や小物は、経費にできます。一方、自分も普段着る服は、仕事に必要な部分をはっきり分けられる場合に限り、その部分だけが経費になります(国税庁 No.2210 必要経費の知識)。リサーチのつもりで買った服でも、自分で着ているなら原則として経費にはなりません。経費になるかどうかの目安は次のとおりです。
- 経費にできる:自分の負担で用意した撮影用の衣装や小物、撮影で使う安全ピンやテープ、リース回りのタクシー代や配送料
- 分けられる分だけ経費:私用と兼ねるスマホや車、仕事で使う部分をはっきり分けられる服
- 経費にならない:普段着ている私服、自分で着るつもりで買った服、撮影の合間の自分の食事

撮影のあとに私服として着るようになった服は、私生活で使う服と同じく経費として説明しにくくなります。経費にした衣装を売ったお金は、私服をフリマで売る場合と違い、事業の収入になる場合があります。撮影に使った日と案件名、着用した写真を残しておくと、仕事のための服だと説明しやすくなります。売った衣装は、売った日と金額も記録し、迷うものは税務署に確認しましょう。
リース回りのタクシー代や配送料は案件ごとに記録する
プレスルームやリース店を回るタクシー代、衣装を運ぶ赤帽や宅配便の配送料、駐車場代は、仕事のための費用として経費にできます。キャリーケースやハンガーラックで荷物が多い日は、タクシーを使わざるを得ないこともあります。乗った日と行き先、どの撮影の分かを記録しておきましょう。
ただし、クライアントに交通費として精算してもらう分は、立替と同じく自分の経費には入れません。同じ区間のタクシー代でも、案件によって自分の経費になるか立替になるかが変わるので、精算されたかどうかを1件ずつ記録します。自分の食事代は、撮影の合間に食べるものでも原則として経費にはなりません。
手持ちの衣装や小物は金額で経費にする年が変わる
撮影で繰り返し使う手持ちの衣装や小物、スチーマー、キャリーケースなどは、10万円未満なら買った年の経費、10万円以上20万円未満なら3年に分けて経費にできます。青色申告なら、2026年4月以後に買った40万円未満のものは、合計300万円まで一度に経費にできます(国税庁 No.2100 減価償却のあらまし)。
10万円以上の衣装を減価償却する場合は、耐用年数表の「衣しよう」(興行や演劇の用具)に当たれば耐用年数2年とする考え方がありますが、撮影用の手持ち衣装がこれに当たるかを示した国税庁の資料はありません(e-Gov法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令)。高額な衣装を買うときは、どの扱いになるかを事前に税務署に確認しておくと安心です。
個人事業税は都道府県の判断で消費税は売上の中身で区分が変わる
個人事業税がかかる法定業種の一覧に「スタイリスト」の名称はなく、課税されるかどうかは都道府県が仕事の中身で判断します。デザイン業(第三種・税率5%)などと判断されれば、事業の所得(青色申告特別控除を差し引く前の金額)から年290万円の事業主控除を差し引いた残りに5%がかかります(東京都主税局 個人事業税)。衣装を貸し出して料金を受け取る場合は、物品貸付業に当たる可能性もあります。都道府県から事業の内容を尋ねる書類が届いたら、仕事の中身を具体的に書いて返送しましょう。
消費税の申告が必要になるのは、原則として2年前の課税売上が1,000万円を超えた年か、インボイス登録をした場合です。立替分が売上に混ざっていると、課税売上が実際より大きく見えてしまいます。免税事業者がインボイス登録をして課税事業者になった場合は、令和8年分までは2割特例が使えます。令和9年分・10年分は、2年前の課税売上が1,000万円以下でインボイス登録をしている個人事業者なら3割特例が使えます。
簡易課税を選ぶと、スタイリング料のようなサービスは第五種事業(みなし仕入率50%)です。ただし、自分の名前で買った衣装を形を変えずにクライアント(事業者)へ売る分は、第一種事業(みなし仕入率90%)に当たる可能性があります(国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分)。区分は取引ごとに判定し、事業ごとに区分していない売上には一番低いみなし仕入率が適用されるので、請求書でスタイリング料と衣装の販売分を分けて書いておきましょう(国税庁 No.6505 簡易課税制度)。立替分は、そもそも売上に入りません。
アシスタント期のバイトや副業は「20万円」と扶養のラインを確認する
アルバイト先や勤め先で年末調整を受けながらスタイリングの仕事を受けているなら、給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は必要です。アシスタント期はアルバイトと掛け持ちする人も多いので、源泉徴収票は捨てずに保管しておきましょう。勤め先の就業規則で副業が認められているかも、事前に確かめておくと安心です。
家族の扶養に入っている人は、税金の扶養は令和8年分は合計所得62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)が基準です(国税庁 No.1180 扶養控除、No.1191 配偶者控除、財務省 令和8年度税制改正の大綱)。社会保険の扶養は年収130万円未満(19歳以上23歳未満は150万円未満)が目安で(日本年金機構 従業員が家族を被扶養者にするとき)、事業の収入をどう数えるかは加入している健康保険によって違います。

撮影とリース回りの合間に確定申告を終わらせる方法
コツは、申告期にまとめてやろうとせず、撮影が終わるたびに案件名とスタイリング料、衣装の実費を記録し、レシートはその日のうちに撮っておくことです。請求書はスタイリング料と立替の衣装代を分けて書く。振り込まれたら、どの撮影の分か、源泉徴収されているかを明細で確かめる。衣装の買い取りやリースのカード払いは連携で自動で取り込む。これだけで、申告期には確認して提出するだけになります。
無料トライアルで口座とカードを連携してみて、スタイリング料の入金や衣装の支払いが自動で取り込まれるかを試してから決めるのが失敗しない選び方です。なお、自動連携やAIの仕訳結果をそのまま提出せず、最後にひととおり見直すのはどのアプリでも共通の基本です。
タックスナップは、取引先ごとのスタイリング料と源泉徴収、衣装代やリース代の支払いを1つにまとめ、申告までスマホで終えられる設計です。撮影の待ち時間やリース回りの移動中のスキマ時間だけで、申告の準備が回ります。

\ AppStoreの確定申告アプリで1位 /
「個人事業主・スマホ完結」に特化した確定申告アプリ
タックスナップは、日々の経費処理から確定申告書の作成・提出まで、個人事業主・フリーランスに必要な会計機能がすべてスマホで完結できるアプリです。
今までの会計ソフトは「パソコン操作」や「機能の多さ」を前提としたサービスが多かった一方で、タックスナップは「個人事業主・スマホ完結」に特化し、会計知識が全くない方でも、スキマ時間だけで確定申告が終わるように設計しています。
「初めての確定申告でも迷わずに提出できた」 「他の会計ソフトから乗り換えて、圧倒的にラクになった」 といった嬉しいレビューもいただいています。

App Store確定申告アプリランキング1位を獲得
ここ数年で、タックスナップの利用者は急拡大中。
2026年の確定申告期間(2026年2月16日〜3月16日)では、大手会計ソフトのアプリも含む確定申告アプリの中で、全期間にわたってApp Storeランキング1位を獲得しました。
(参照:Sensor TowerのApp Storeランキングデータ)

他会計ソフトの約4倍の経費処理スピード
意外に時間を取られてしまうのが、日々の経費処理です。 「気づいたら何十件も経費が溜まっていた」という時でも、タックスナップならあっという間に登録が完了します。
外部機関による比較調査では、タックスナップを使うと10分間で平均518件の経費を処理できることがわかっています。 他会計ソフトと比べて約4倍、手書きの約18倍、Excelの約40倍のスピードです。

出典:株式会社タックスナップ 「【比較調査】確定申告アプリ「タックスナップ」、同時間での経費処理件数が他会計ソフトと比較して約4倍を記録。」 (実査運営機関:株式会社アスマーク)
速さの秘訣は丸投げ仕分け
タックスナップの経費処理の速さの最大の理由は、「丸投げ仕分け」機能です。
銀行やカードの取引データが自動で反映されるだけでなく、それぞれの取引が経費かプライベートか、どの勘定科目が適しているのかをアプリが高精度で自動判定してくれます。
「丸投げ仕分け」機能を使えば1,000件の仕分けも最短3秒で完了するので、経費処理が驚くほど楽になります。

税理士監修の機能で、はじめての確定申告でも安心
「本当にこの内容で提出して大丈夫?」という不安を解消するために、税理士監修の「税務調査リスクチェック機能」があります。
あなたのデータをもとに、同じ職種の人の傾向と比べながら、税務調査が入りやすいかをアプリが診断します。
修正するべき内容も表示されるので、事前に修正し、安心して提出できます。

タックスナップは、確定申告をできるだけ簡単に、かつ安心して提出できるようにサポートするアプリです。 無料トライアルも行っているので、まずはその快適さを体験してみてください。
\ AppStoreの確定申告アプリで1位 /
まとめ
スタイリストの確定申告は、「雇われて年末調整を受けているなら不要、フリーでスタイリング料を受け取ったら自分で申告」「クライアントの衣装代の立替は売上に入らない。スタイリング料と分け、案件ごとに記録して示せるようにしておく」「ポスターなどの写真撮影のスタイリング料は通常は源泉徴収されず、映画・演劇・テレビの美粧として引かれた税金は申告で精算する」の3点を押さえれば怖くありません。撮影の前に衣装を1点ずつラックに掛けていくように、スタイリング料と衣装代も1件ずつ記録していけば、申告はきちんと形になります。

よくある質問
Q. 事務所に所属するスタイリストも確定申告は必要ですか?
事務所に雇われて給与を受け取り、年末調整を受けているなら、原則不要です。業務委託の報酬として受け取っているなら、自分で確定申告をします。
Q. フリーのスタイリストは、いくらから申告が必要ですか?
令和8年分は、所得が基礎控除(合計所得489万円以下なら104万円)などの合計を超えたら必要です。所得は、スタイリング料から衣装代や交通費などの経費を引いた金額です。源泉徴収されている人は、所得が少なくても申告すれば税金が戻ることがあります。
Q. 立て替えた衣装代も売上に入れないといけませんか?
クライアントの代わりに払い、スタイリング料と分けて実費のまま精算してもらった分は、立替なので売上に入りません。立替と確認できるよう、請求書の控えと店のレシートを案件ごとに残しておきましょう。
Q. 衣装代込みでスタイリング料を受け取りました。どう記録しますか?
受け取った総額を売上にし、自分で払った衣装代は経費にします。どの撮影のための衣装代かがわかるよう、レシートに案件名をメモしておきましょう。
Q. 家族のカードで払った衣装代は経費になりますか?
どの撮影のための費用かを示せないと、経費に入れられないことがあります。国税不服審判所の裁決でも、家族のカードで払い、どの取引先の仕事の分かを示せなかった衣装代は経費になりませんでした。仕事の支払いは自分名義のカードにまとめるのがおすすめです。
Q. インボイス登録をしていなくても、クライアントは衣装代を控除できますか?
店のインボイスと立替金精算書をあわせて渡せば、クライアントは衣装代の分の仕入税額控除ができます。スタイリング料の部分は、この扱いの対象外です。
Q. 雑誌の撮影のスタイリング料から税金が引かれていません。
ポスターやCDジャケットの写真撮影でスタイリストに払われるスタイリング料は、源泉徴収の対象ではないと国税庁が回答しています。雑誌の撮影を名指しした回答はなく、取引先によって扱いが分かれることもあるので、気になるときは取引先に確認しましょう。引かれていなければ、受け取った金額を売上にします。
Q. テレビや映画の仕事では税金が引かれています。
映画・演劇・テレビ放送に関わる美粧の報酬として払われる場合は、10.21%が源泉徴収されます。引かれる前の金額を売上にし、引かれた税金は確定申告で差し引きます。
Q. 源泉徴収された税金は戻ってきますか?
経費や控除を差し引いて計算した税額より多く引かれていれば、確定申告で戻ってきます。取引先ごとに引かれた額を記録し、支払明細を保存しておきましょう。
Q. CMやミュージックビデオの仕事は源泉徴収されますか?
国税庁が個別に示したものがなく、取引先によって扱いが分かれることがあります。支払明細の源泉所得税の欄を確認し、引かれていればその額を申告で精算します。
Q. 撮影に使った服を、あとで自分で着てもいいですか?
自分で着るようになった服は、私服と同じく経費として説明しにくくなります。撮影専用として扱う衣装と、自分で着る服は分けて管理しましょう。
Q. 撮影で使い終わった衣装をフリマアプリで売ると、税金はかかりますか?
経費にした衣装を売ったお金は、私服を売る場合と違い、事業の収入になる場合があります。売った日と金額、どの撮影で使った服かを記録しておき、迷うときは税務署に確認しましょう。
Q. 古着を仕入れて売るには許可が要りますか?
古着を買い取って売るなら、古物商許可が必要です。撮影で使い終わった衣装を売るだけなら許可はいりません。申請先は営業所を管轄する警察署です。
Q. リース回りのタクシー代は経費になりますか?
衣装を運ぶためのタクシー代は、経費にできます。クライアントに交通費として精算してもらう分は、自分の経費には入れません。
Q. 手持ちの衣装はいつ経費になりますか?
10万円未満なら買った年の経費にできます。青色申告なら、2026年4月以後に買った40万円未満のものも、合計300万円まで一度に経費にできます。
Q. アシスタントに払ったお金は経費になりますか?
アシスタントへの支払いは、外注費か給与として経費にできます。どちらに当たるかは働き方の実態で判断されるので、人を頼む前に税務署か税理士に確認しましょう。給与で払う場合は源泉徴収の義務が生じます。
Q. 個人事業税はかかりますか?
法定業種に「スタイリスト」の名称はなく、課税されるかどうかは都道府県の判断です。事業の所得(青色申告特別控除を差し引く前)が年290万円を超えたら、都道府県の税事務所に確認しましょう。
Q. インボイス登録は必要ですか?
登録は任意ですが、広告制作会社や出版社から求められることがあります。登録すると消費税の申告が必要になります。免税事業者から登録した場合は令和8年分まで2割特例、令和9年分・10年分は2年前の課税売上が1,000万円以下なら3割特例が使えます。
Q. 独立1年目で赤字です。申告したほうがいいですか?
源泉徴収された税金が戻ることがあるので、申告したほうがいい場合が多いです。青色申告なら、事業の赤字を翌年以後3年間に繰り越せます。
Q. 開業届は出すべきですか?
フリーのスタイリストとして継続して仕事をするなら、開業届を出すのが原則です。青色申告承認申請書とセットで出せば、最大65万円の特別控除が使えるようになります。

Q. 今使っている会計ソフトからデータを移行できますか?
できます。たとえばタックスナップはfreee・マネーフォワード・弥生・PayPayからのデータ移行に対応しています。年初から新しいアプリで始めるか、申告前に前年分をまとめて移すのがスムーズです。



